(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん

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鐘の音が鳴り終わると、大きな扉が開いた。

颯爽と入ってこられるのは、辺境伯様で王妃様で騎士団長様。
後光が見えるほど、今日も神々しい! さすが女神様だ!

そして、今まさに、私の女神様で騎士団長様が着られている騎士服と同じものを自分が着ていると思うと、感動のあまりふるえてしまう! 
一気に、涙腺がゆるんだ。

すぐさま、ルドが私に近づき、ハンカチでこぼれた涙をぬぐってくれる。

「すごいわね、ルド。なんだか、ベテランの乳母みたい。あ、王太子様がいらっしゃったわよ!」
と、お母様。

騎士団長様しか目に入ってなかったので、改めて、騎士団長様のまわりを見てみる。
すると、騎士団長様の後ろから、きらびやかな衣装を着た方が歩いてこられた。

背は騎士団長様と同じくらいで、細身の方。
あの方が、王太子様か……。

おふたりは、少し高いところにある席に座られた。

私たち、新人騎士団とその家族は、広間の前方に集められているので、お姿が良く見える。

濃い青色のシンプルな騎士服に身をつつんだ騎士団長様と、赤と金をあしらった、華やかな衣装をきられた王太子様。並んでみると、お顔は似ていないし、雰囲気もまるで違う感じがする。

きりっとした表情の騎士団長様に対して、王太子様は、にこやかに微笑んでいる。
なんか、お優しそうな感じ。確かに剣とか持ちそうにないかな。

と、ここまで判断したところで、王太子様の観察は終了。
視線を騎士団長様に戻す。

あこがれの方を、じっくり目にやきつけたいからね。
あ、でも、これからは騎士団で存分に拝見できるか……ムフフ。

と、すっかり涙もひき、今度は顔がゆるみまくる私。

静まった招待客を前に、椅子から立ちあがった騎士団長様。

「今日は、わが辺境騎士団の新人騎士たちの披露目に、沢山集まってくれて礼を言う」

騎士団長様の美しい声が、大広間中に響きわたる。

さすが、騎士団長様。すごい声量!
私も、もっと大きな声がでるように鍛えなければ! と、気合いが入る。

その時、ふと、隣の王太子様の口が動いた。

私は視力がとてもいい。
その視力を生かし、口の動きを読むことを独自に訓練してきた。
というのも、他の騎士より体が小さい分、特技は多いほうがいいからね。

今の王太子様の口の動きを読む。

「声がでかい。ほんと、うるさいよね、脳筋は」

うん、きっと見間違いだよね……。
まさか、こんなお優しそうな王太子様が、お母様である騎士団長様に、そんな失礼なことをつぶやくはずはないし……。

口の動きを読むのは自信があったけれど、私もまだまだだ。
もっとがんばらないと!


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