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番外編
ムルダー王太子 6
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光の中から現れた異世界の少女は、聖女として神殿に保護されることになった。
大神官に一任される。
というのも、
「異世界から聖女が現れるなど、まさに奇跡。ここは、聖女に詳しい大神官に任せるのが一番だろう。聖女を神殿預かりとする」
と、皆の前で、国王である父上が言ったからだ。
が、本当は、聖女の存在を信じていない父上。
「聖女かどうか様子を見るため、神殿に預けた。当面、王家は関わらない。おまえたちも関わるな」
と、ぼくと王妃である母上の前でだけ明言した。
このままでは会えない…。
でも、ぼくをすがるように見た、あの黒い瞳が頭から離れない…。
あの子には、ぼくしかいないんだ。
意を決して、ぼくは、国王である父上に頼んだ。
「聖女であるのなら国の宝です。神殿だけに任せるのではなく、王家も関わるべきではありませんか?」
王妃である母上が、驚いたように言った。
「ムルダー、何を言うの? 国王様の決定ですよ?!」
が、あの黒い瞳を思い浮かべると、ここで、ひけない。
父上は、怜悧な琥珀の瞳を、ぼくに向けた。
心のうちが読めない瞳は、ぼくとは違う色だ。そして、ロバートと同じ色…。
父上は、観察するように、ぼくを見た後、強い口調で言った。
「ムルダー。つまり、おまえが、聖女の保護をしたいということか?」
「はい! ぼくが、聖女の保護者となります!」
「ムルダー。クリスティーヌは得難い娘だ。完璧な王太子妃になるだろう。それをわかった上で言っているのか?」
は? クリスティーヌ…?
なんで、ここで、クリスティーヌの話がでるのか、全然わからない…。
「もちろんですが…」
とりあえず、そう答えた。
「わかっているのなら良い。なら、やってみよ。おまえが聖女を見極めるのだ」
「見極める…?」
「ああ、聖女が、国の宝として使える者かどうか。もし使えるのなら、手懐けよ」
「手懐ける…?」
とまどうぼくを、父上の目が、鋭く射抜いた。
「おまえが手懐けられるのではなく、おまえが、聖女を手懐けるのだ。もちろん、あくまで、王家は関わっていない。おまえ個人が善意で様子を見に行っていることを忘れるな。それと、ひとつ、忠告をしておこう」
父上の冷たい声に、体に力が入る。
「もし、おまえがクリスティーヌとの婚約をやめたいと言う時がきたのなら…」
「そんなこと、言うわけありません!」
思わず、声をはりあげて、父上の話を遮った。
「まあ、聞け。もし、おまえがクリスティーヌと婚約をやめ、聖女と婚約したいと言う時がきたのなら、おまえが王太子として生き残る道はひとつ。聖女が、クリスティーヌより優っている場合だけだ。わかったな」
そう言うなり、父上は、ぼくの前から立ち去った。
父上は、何を言ってるんだ?
ぼくが、クリスティーヌとの婚約をやめたいなんて、言うわけがない。
父上は、なんで、あんなことを言ったんだろう…?
まあ、でも、父上の許可はでた。
これで、堂々と、あの少女に会いに行ける!
ぼくは、すぐさま、神殿に向かった。
神官に案内され、神殿の中にある客室に通される。
窓のほうをみて、椅子に座っている小柄な少女が、聖女だ。
漆黒の長い髪を背中にたらしている。
真っ白な衣を着せられているので、黒髪の美しさが際立つ。
「聖女様。王太子殿下が来られました」
神官の声に、はじかれたように、聖女がふりむいた。
少し垂れた大きな目が、ぼくを見つけたとたん、驚いたように見開く。
「あっ! 昨日の、ものすごいイケメン…。王太子なの…?」
と、つぶやいた聖女。
いけめん…、なんだそれは?
とまどっていると、聖女は、素早く椅子から立ちあがり、かけよってきた。
そして、いきなり、ぼくの手をとり、両手でにぎりしめた。
え、何を…?!
そう思った時、心臓がドクンと大きな音をうった。
大神官に一任される。
というのも、
「異世界から聖女が現れるなど、まさに奇跡。ここは、聖女に詳しい大神官に任せるのが一番だろう。聖女を神殿預かりとする」
と、皆の前で、国王である父上が言ったからだ。
が、本当は、聖女の存在を信じていない父上。
「聖女かどうか様子を見るため、神殿に預けた。当面、王家は関わらない。おまえたちも関わるな」
と、ぼくと王妃である母上の前でだけ明言した。
このままでは会えない…。
でも、ぼくをすがるように見た、あの黒い瞳が頭から離れない…。
あの子には、ぼくしかいないんだ。
意を決して、ぼくは、国王である父上に頼んだ。
「聖女であるのなら国の宝です。神殿だけに任せるのではなく、王家も関わるべきではありませんか?」
王妃である母上が、驚いたように言った。
「ムルダー、何を言うの? 国王様の決定ですよ?!」
が、あの黒い瞳を思い浮かべると、ここで、ひけない。
父上は、怜悧な琥珀の瞳を、ぼくに向けた。
心のうちが読めない瞳は、ぼくとは違う色だ。そして、ロバートと同じ色…。
父上は、観察するように、ぼくを見た後、強い口調で言った。
「ムルダー。つまり、おまえが、聖女の保護をしたいということか?」
「はい! ぼくが、聖女の保護者となります!」
「ムルダー。クリスティーヌは得難い娘だ。完璧な王太子妃になるだろう。それをわかった上で言っているのか?」
は? クリスティーヌ…?
なんで、ここで、クリスティーヌの話がでるのか、全然わからない…。
「もちろんですが…」
とりあえず、そう答えた。
「わかっているのなら良い。なら、やってみよ。おまえが聖女を見極めるのだ」
「見極める…?」
「ああ、聖女が、国の宝として使える者かどうか。もし使えるのなら、手懐けよ」
「手懐ける…?」
とまどうぼくを、父上の目が、鋭く射抜いた。
「おまえが手懐けられるのではなく、おまえが、聖女を手懐けるのだ。もちろん、あくまで、王家は関わっていない。おまえ個人が善意で様子を見に行っていることを忘れるな。それと、ひとつ、忠告をしておこう」
父上の冷たい声に、体に力が入る。
「もし、おまえがクリスティーヌとの婚約をやめたいと言う時がきたのなら…」
「そんなこと、言うわけありません!」
思わず、声をはりあげて、父上の話を遮った。
「まあ、聞け。もし、おまえがクリスティーヌと婚約をやめ、聖女と婚約したいと言う時がきたのなら、おまえが王太子として生き残る道はひとつ。聖女が、クリスティーヌより優っている場合だけだ。わかったな」
そう言うなり、父上は、ぼくの前から立ち去った。
父上は、何を言ってるんだ?
ぼくが、クリスティーヌとの婚約をやめたいなんて、言うわけがない。
父上は、なんで、あんなことを言ったんだろう…?
まあ、でも、父上の許可はでた。
これで、堂々と、あの少女に会いに行ける!
ぼくは、すぐさま、神殿に向かった。
神官に案内され、神殿の中にある客室に通される。
窓のほうをみて、椅子に座っている小柄な少女が、聖女だ。
漆黒の長い髪を背中にたらしている。
真っ白な衣を着せられているので、黒髪の美しさが際立つ。
「聖女様。王太子殿下が来られました」
神官の声に、はじかれたように、聖女がふりむいた。
少し垂れた大きな目が、ぼくを見つけたとたん、驚いたように見開く。
「あっ! 昨日の、ものすごいイケメン…。王太子なの…?」
と、つぶやいた聖女。
いけめん…、なんだそれは?
とまどっていると、聖女は、素早く椅子から立ちあがり、かけよってきた。
そして、いきなり、ぼくの手をとり、両手でにぎりしめた。
え、何を…?!
そう思った時、心臓がドクンと大きな音をうった。
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