(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。

水無月あん

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番外編

円徳寺 ラナ 22

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「ちょうど、ラナのところに行こうとしてたんだ」

「ごめん、リュウ。出かけるところなの……」

「じゃあ、そこまで送るよ。ラナに話したいこともあるし。ここバス停だから、少し先にとめて待ってる」

リュウは一気にそれだけ言うと、車を動かして、少し先のところに止めた。

はあ……、なんてタイミング。

とりあえず、話だけ聞いて、適当なところで降ろしてもらおう。
まだ、時間はあるし。

リュウに促されて、車に乗った。

「ええと、話って何……?」

「それより、ラナ、どこへ行くの? あ、その荷物。もしかして、ルリ?」

「うん。ルリの着替え」

「じゃあ、病院に送ればいいね」

「あ……、その前に行きたいところがあるから。話が終わったら、適当に降ろして……」

「どこまで行くの?」

「……空港」

「え、なんで?」

「友達が……留学するから見送りに……」

「へえ。ラナの友達って、どんな子だろう? ぼくも挨拶しとこうかな。ほら、婚約者だし」

そう言って、助手席に座っている私をちらっと見て、微笑んだ。

リュウは、あれから、なにかにつけて、「婚約者」と言うようになった。

確かに、リュウは婚約者だ。
リュウと結婚して会社を継ぐことは、ラナとしての役目。
そのことを、改めて、つきつけられる。

やっぱり、森野君に頼ってはいけない。
巻き込んじゃダメだ……。

それに、リュウがこのタイミングで現れたということは、見送ることはあきらめろってことだよね。

「リュウ。やっぱり、見送りはやめとく。友達からも、来なくていいって言われてたし……。ルリに渡すものを買っていくから、少し先の大きな本屋さんのところで降ろして」

「そうなんだ? じゃあ、一緒に買い物しよう」

嬉しそうに言う、リュウ。

「え、なんで……?」

驚きすぎて、つい、本音がでた。

すると、リュウはふざけたように言った。

「ぼくと買い物するの嫌? 婚約者なのに、ひどいなあ」

その言葉に、心がすーっと冷えた。
婚約者なのに、ひどいのはどっちなの……。

ルリと三人で出かけたときは、ルリとばっかり仲良くしてたのに……。
ルリとリュウがデートをして、私はつきそいみたいだったのに……。

嫉妬する気持ちは微塵もないけれど、リュウの自分勝手さに腹が立って、もやもやする。

「実は、今日、ラナに会いに来たのは、ルリへのお見舞いをしてなかったから。何がいいか聞いて、ラナに渡してもらおうと思って。本がいいなら、ぼくからのお見舞いも、一緒に選んで欲しい。その後、食事でもしようよ。よく考えたら、ラナと二人で出かけたことなかったし。嬉しいよ」

嬉しい……?

ルリとリュウが、二人で楽しそうに舞台を見てきた時のことが、今更ながらに浮かんできた。
適当に相槌を打とうとしても、のどがつまって、言葉がでてこない。

前を向いて運転しながら話をしているリュウだけれど、そんな私の雰囲気を察したよう。
声のトーンが変わった。

「ごめん、ラナ……。勝手なのはわかってる……。今まで、婚約者のラナをないがしろにしていたように思えたかもしれない。……でも、ぼくは、ずっとラナのことは大事に思ってた」

「大事に……?」

「ああ。最初にラナを見た時、こんなきれいな子がぼくの婚約者だと知って、すごく嬉しかった。覚えてる、ラナ? ぼくが月の飾りのついた髪飾りをプレゼントしたこと」

「……ええ」

「ラナのことを思って、ドキドキしながら買ったんだ。……だから、ショックだった。ルリがその髪飾りをしているのを見た時」

「あ、あれは……、ごめんなさい。ルリにねだられて、断れなくて」

「うん、そうだったんだろうね。今なら、わかるよ。でも、あの時は、ラナに拒絶されたようで、傷ついた。それから、怖くなったんだ。ラナにまた拒絶されたらって。だから、つい、ルリとばかり話していた。でも、誓って言うけど、ルリのことは妹としか見ていない。ぼくはラナと結婚したい。その思いは、ずっと、変わらないんだ。ラナ。これからは、婚約者として、きちんと、ラナに向き合う。だから、ラナも受け入れて欲しい。ぼくたち二人が円徳寺の会社を継ぐことは決定だ。今更、ラナの両親とぼくの両親の期待を裏切ることなんて出来ないよね?」

やけに熱のこもった口調で語りまくるリュウ。

リュウが私をどう思っているのか、その真意はわからない。

でも、あの髪飾りのことを言われたら、何も言えない。

確かに、あの時のリュウは、純粋に私のために選んでくれたと思う。
だから、私もすごく嬉しかった。

そんな贈り物をルリに奪われたことは申し訳なかったと思う。

それに、リュウの言うとおり、私とリュウが結婚して、会社を継ぐことは決定。
その期待は裏切れない。

今まで、ラナとして育てられてきた私が、今更、そこから逃げることは許されない……。

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