(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。

水無月あん

文字の大きさ
82 / 135
番外編

円徳寺 ラナ 35

しおりを挟む
ルリに、私の友人が遊びに来ることを伝えた。

もし、ルリが会いたくないのなら、顔を会わせないように考えないといけない。
というのも、ルリが記憶をなくしてから、リュウ以外のお客様が、この家に来たことはないから。

「友達は私とゆっくり話がしたいそうだから、私の部屋にきてもらうつもり。でも、ルリが嫌じゃなかったら、せっかくだし、お茶の時間は、三人で一緒にどうかなあって思ってるんだけど…。知らない人と会うのは、嫌…?」

「いえ…。ラナお姉さんの友達なら、私は大丈夫よ」
と、ルリが言った。

「それなら、友達にもあとで聞いてみる。もし友達もOKなら、一緒にお茶しましょう。…というか、そうして欲しいのよね。…詳しくは言えないけれど、その友達は、長い間、色々大変だったの。今も心がすごく疲れててね…。だから、少しでも気が紛れたらいいなって思ってるの。ルリがいてくれたら、心強い。…ほら、今のルリって、人をよく見てるし、さりげない気遣いとかすごいものね」

「え…? そんなこと、初めて言われたわ…」
と、驚いたように、ルリがぽつりとつぶやいた。

つい出てしまったような、そのつぶやき。
やっぱり、ルリのなかに、私の知らない人がいると思うと、しっくりくる。


ルリに了承をもらった私は、遠野さんにも電話をかけた。

まず、当日、妹が家にいることを伝えた。そして、そのあとを続ける。

「それでね。遠野さんさえ良かったら、3人でお茶をしようかなって思ってて…。あ、でも、気が進まないのなら、私の部屋で…」
と、言いかけたところを、遠野さんが遮った。

「私、円徳寺さんの妹さんに会ってみたい」
強い口調で言い切った遠野さん。

「そう…? それなら、良かった」
と答えた私。

そして、当日は最寄り駅まで私が迎えにいくことを伝えて、電話を切った。

が、電話を切った後も、遠野さんのやけに強い口調が耳に残った。



そして、日曜日になった。

遠野さんは、2時に来る予定。
それまでに、お茶の準備をしておかないと。

私がケーキを買いに行っている間に、ルリがテーブルのセッティングをしておいてくれると言うのでお願いした。

以前のルリは、そんなことをしたことがないから驚いたけれど、まあ、使う食器を並べておくだけだしね。

そう軽く考えていたら、帰ってきて、出来上がったテーブルを見た瞬間、驚きすぎて固まった。

食器のチョイス、並べ方、配色。
お花もいけなおされ、テーブルの上が、大変身をとげていたから。

まるで、貴族のお屋敷みたい…。

呆然とみつめる私に、ルリが不安そうに言った。

「あ…、お客様を招待してのお茶会って、こんな感じじゃなかったかしら…?」

私はあわてて言った。

「いえ、びっくりしちゃって…。本当にすごく素敵よ! ルリって、センスがいいのね!」
興奮する私に、ルリが嬉しそうに微笑んで言った。

「それなら良かった。…久しぶりだったから…」

「え、久しぶりって…?」
と、問い返した私。

「あ、いえ…、ほら、記憶がないから覚えてないけど、お茶の準備も久しぶりなんだろうなと思っただけ」
あわてて、ルリが言い募った。

「そうだね…」
と、答えたものの、以前のルリは、そのようなことはしたことがない。

一体、あなたは誰? と、心の中で問いかけた。



そして、午後。
私は遠野さんを迎えに駅までいった。
待ち合わせ時間にあらわれた遠野さんは、私を見つけて微笑んだ。

が、その顔を見たら、なんともいえない不安がよぎった。
というのも、遠野さんの目が異様にぎらついて見えたから…。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

愛される日は来ないので

豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。 ──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います

黒幸
恋愛
ネドヴェト侯爵家に生まれた四姉妹の末っ子アマーリエ(エミー)は元気でおしゃまな女の子。 美人で聡明な長女。 利発で活発な次女。 病弱で温和な三女。 兄妹同然に育った第二王子。 時に元気が良すぎて、怒られるアマーリエは誰からも愛されている。 誰もがそう思っていました。 サブタイトルが台詞ぽい時はアマーリエの一人称視点。 客観的なサブタイトル名の時は三人称視点やその他の視点になります。

処理中です...