(本編完結・番外編更新中)あの時、私は死にました。だからもう私のことは忘れてください。

水無月あん

文字の大きさ
93 / 135
番外編

挿話 あの後のこと 3 (ダグラス視点)

しおりを挟む
今、目の前で笑っている、異世界からきた女ルリ。
私には、どうしても、ひっかかることがあった。

それは、国王からムルダーが王太子になれないと聞いたルリが、ムルダーとの結婚を拒否し、自由になりたいと言った時のことだ。

国王は、それならば、平民としての戸籍を作るから、市井で自由に生きるようにとルリに言った。
すると、ルリは贅沢をしたいから平民にはなりたくないと、猛烈に嫌がった。

聞けば、ルリにとっての自由な生き方は、大きな屋敷に住み、きれいなドレスを着て贅沢に暮らすことらしい。
なんだ、それは……?

まあ、その浅はかな考えで王太子妃を狙ったのはわかった。
が、その夢が潰えたのなら、何故、もといた世界に帰りたいと言わないのだろうかと、ひっかかった。

戻れないと思い、我慢しているようにも見えない。
そもそも、ルリは、自分の欲だけで動き、我慢などできない人間だということはすぐにわかった。

それに、例え、もといた世界への戻り方がわからなかったとしても、戻りたいと思ったのなら、どうにかしろ、と無茶を言いそうに見える。

よほど、もといた世界が、ルリにとって過酷で、家族とも上手くいっていないのかと思ったが、どう見ても、甘やかされてきた人間にしか見えない。

自分の望みしか考えず、そのためには、他人がどうなろうが関係ない。
他人が自分のために奉仕することが当たり前だと思っている。自分は特別だから、と。

そういうところは、ムルダーと同じだ。

そんな似た者同士の二人が、自分勝手な主張ばかりする様子を見て、納得がいかない怒りがずっとわいていた。
神のような、大いなる存在がいるとしたら、時空を超え、何故、このような迷惑な者たちをひきあわせたのか、と……。

あの後、ロバート様のことで多忙になり、ルリのことはここに留め置いたままにしていた。
が、そのひっかかることを確認してから、ルリへのあつかいを判断すべきと思い、今日、ここへ来た。


術がかかっているため、少し酔っ払ったように上機嫌で笑っているルリ。
私はもう一度、はっきりとした口調で問いかけた。

「ルリ嬢は、もといた世界に帰りたいですか? それとも帰りたくないのですか?」

「帰りたくなーい!」
そう答えたあと、またもや、へらへらと笑いだすルリ。

本当に術にかかりやすい人間だな。自白剤を打った時と似ている。
私は更に質問をしていく。

「でも、向こうにはご家族がいますよね?」

「うん、いるー」

「どんなご家族ですか?」 

「お母様と、お父様と、お姉ちゃんだよ。ルリは愛されてるから、みんな、ルリの言うことを、なーんでも聞くんだあ」

「へえ。お姉様がいるのですね。どんな方ですか?」
自分の弟ライアンを思い浮かべて、ふと、そんなことを聞いてみた。

「お姉ちゃん? 勉強ばーっかりして、つまんない人だよー。それとー、ルリのいいなり、かなあ」

「言いなり?」

「うん、そうだよ。おねえちゃんだけど、家来みたいなんだー。お母様に愛されてないから、いっつも必死なの。そんなにがんばっても、ルリみたいには愛されないのに。なーんか、かわいそうだよねえ……フフ」

どうやら、ゆがんだ家族らしい。

ルリは、話を続けた。

「それに、お姉ちゃん見てると、イライラするんだよねー。私より、できる、みたいな感じ、だしちゃって。そんな時は、わからせるの」

「わからせるとは、具体的に何をするんですか?」

「とっちゃうの! お姉ちゃんが好きそうなものを奪うの。そうしたら、ルリのほうが、お姉ちゃんより上だってわかるよね?」
そう言って、けらけら笑うルリ。

私は魔力持ちなので、人のまとう気がはっきりと見える。
今、ルリの放つ気は毒々しく濁っている。

会ったこともないが、ルリみたいな女を妹に持つ姉に心底、同情した。
それに、家族に恵まれていないところが、今もまだ行方のわからないクリスティーヌ嬢とも重なり、柄ではないが、その姉に加護があるようにと願ってしまった。

しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

〖完結〗その愛、お断りします。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った…… 彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。 邪魔なのは、私だ。 そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。 「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。 冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない! *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...