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番外編
挿話 あの後のこと 3 (ダグラス視点)
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今、目の前で笑っている、異世界からきた女ルリ。
私には、どうしても、ひっかかることがあった。
それは、国王からムルダーが王太子になれないと聞いたルリが、ムルダーとの結婚を拒否し、自由になりたいと言った時のことだ。
国王は、それならば、平民としての戸籍を作るから、市井で自由に生きるようにとルリに言った。
すると、ルリは贅沢をしたいから平民にはなりたくないと、猛烈に嫌がった。
聞けば、ルリにとっての自由な生き方は、大きな屋敷に住み、きれいなドレスを着て贅沢に暮らすことらしい。
なんだ、それは……?
まあ、その浅はかな考えで王太子妃を狙ったのはわかった。
が、その夢が潰えたのなら、何故、もといた世界に帰りたいと言わないのだろうかと、ひっかかった。
戻れないと思い、我慢しているようにも見えない。
そもそも、ルリは、自分の欲だけで動き、我慢などできない人間だということはすぐにわかった。
それに、例え、もといた世界への戻り方がわからなかったとしても、戻りたいと思ったのなら、どうにかしろ、と無茶を言いそうに見える。
よほど、もといた世界が、ルリにとって過酷で、家族とも上手くいっていないのかと思ったが、どう見ても、甘やかされてきた人間にしか見えない。
自分の望みしか考えず、そのためには、他人がどうなろうが関係ない。
他人が自分のために奉仕することが当たり前だと思っている。自分は特別だから、と。
そういうところは、ムルダーと同じだ。
そんな似た者同士の二人が、自分勝手な主張ばかりする様子を見て、納得がいかない怒りがずっとわいていた。
神のような、大いなる存在がいるとしたら、時空を超え、何故、このような迷惑な者たちをひきあわせたのか、と……。
あの後、ロバート様のことで多忙になり、ルリのことはここに留め置いたままにしていた。
が、そのひっかかることを確認してから、ルリへのあつかいを判断すべきと思い、今日、ここへ来た。
術がかかっているため、少し酔っ払ったように上機嫌で笑っているルリ。
私はもう一度、はっきりとした口調で問いかけた。
「ルリ嬢は、もといた世界に帰りたいですか? それとも帰りたくないのですか?」
「帰りたくなーい!」
そう答えたあと、またもや、へらへらと笑いだすルリ。
本当に術にかかりやすい人間だな。自白剤を打った時と似ている。
私は更に質問をしていく。
「でも、向こうにはご家族がいますよね?」
「うん、いるー」
「どんなご家族ですか?」
「お母様と、お父様と、お姉ちゃんだよ。ルリは愛されてるから、みんな、ルリの言うことを、なーんでも聞くんだあ」
「へえ。お姉様がいるのですね。どんな方ですか?」
自分の弟ライアンを思い浮かべて、ふと、そんなことを聞いてみた。
「お姉ちゃん? 勉強ばーっかりして、つまんない人だよー。それとー、ルリのいいなり、かなあ」
「言いなり?」
「うん、そうだよ。おねえちゃんだけど、家来みたいなんだー。お母様に愛されてないから、いっつも必死なの。そんなにがんばっても、ルリみたいには愛されないのに。なーんか、かわいそうだよねえ……フフ」
どうやら、ゆがんだ家族らしい。
ルリは、話を続けた。
「それに、お姉ちゃん見てると、イライラするんだよねー。私より、できる、みたいな感じ、だしちゃって。そんな時は、わからせるの」
「わからせるとは、具体的に何をするんですか?」
「とっちゃうの! お姉ちゃんが好きそうなものを奪うの。そうしたら、ルリのほうが、お姉ちゃんより上だってわかるよね?」
そう言って、けらけら笑うルリ。
私は魔力持ちなので、人のまとう気がはっきりと見える。
今、ルリの放つ気は毒々しく濁っている。
会ったこともないが、ルリみたいな女を妹に持つ姉に心底、同情した。
それに、家族に恵まれていないところが、今もまだ行方のわからないクリスティーヌ嬢とも重なり、柄ではないが、その姉に加護があるようにと願ってしまった。
私には、どうしても、ひっかかることがあった。
それは、国王からムルダーが王太子になれないと聞いたルリが、ムルダーとの結婚を拒否し、自由になりたいと言った時のことだ。
国王は、それならば、平民としての戸籍を作るから、市井で自由に生きるようにとルリに言った。
すると、ルリは贅沢をしたいから平民にはなりたくないと、猛烈に嫌がった。
聞けば、ルリにとっての自由な生き方は、大きな屋敷に住み、きれいなドレスを着て贅沢に暮らすことらしい。
なんだ、それは……?
まあ、その浅はかな考えで王太子妃を狙ったのはわかった。
が、その夢が潰えたのなら、何故、もといた世界に帰りたいと言わないのだろうかと、ひっかかった。
戻れないと思い、我慢しているようにも見えない。
そもそも、ルリは、自分の欲だけで動き、我慢などできない人間だということはすぐにわかった。
それに、例え、もといた世界への戻り方がわからなかったとしても、戻りたいと思ったのなら、どうにかしろ、と無茶を言いそうに見える。
よほど、もといた世界が、ルリにとって過酷で、家族とも上手くいっていないのかと思ったが、どう見ても、甘やかされてきた人間にしか見えない。
自分の望みしか考えず、そのためには、他人がどうなろうが関係ない。
他人が自分のために奉仕することが当たり前だと思っている。自分は特別だから、と。
そういうところは、ムルダーと同じだ。
そんな似た者同士の二人が、自分勝手な主張ばかりする様子を見て、納得がいかない怒りがずっとわいていた。
神のような、大いなる存在がいるとしたら、時空を超え、何故、このような迷惑な者たちをひきあわせたのか、と……。
あの後、ロバート様のことで多忙になり、ルリのことはここに留め置いたままにしていた。
が、そのひっかかることを確認してから、ルリへのあつかいを判断すべきと思い、今日、ここへ来た。
術がかかっているため、少し酔っ払ったように上機嫌で笑っているルリ。
私はもう一度、はっきりとした口調で問いかけた。
「ルリ嬢は、もといた世界に帰りたいですか? それとも帰りたくないのですか?」
「帰りたくなーい!」
そう答えたあと、またもや、へらへらと笑いだすルリ。
本当に術にかかりやすい人間だな。自白剤を打った時と似ている。
私は更に質問をしていく。
「でも、向こうにはご家族がいますよね?」
「うん、いるー」
「どんなご家族ですか?」
「お母様と、お父様と、お姉ちゃんだよ。ルリは愛されてるから、みんな、ルリの言うことを、なーんでも聞くんだあ」
「へえ。お姉様がいるのですね。どんな方ですか?」
自分の弟ライアンを思い浮かべて、ふと、そんなことを聞いてみた。
「お姉ちゃん? 勉強ばーっかりして、つまんない人だよー。それとー、ルリのいいなり、かなあ」
「言いなり?」
「うん、そうだよ。おねえちゃんだけど、家来みたいなんだー。お母様に愛されてないから、いっつも必死なの。そんなにがんばっても、ルリみたいには愛されないのに。なーんか、かわいそうだよねえ……フフ」
どうやら、ゆがんだ家族らしい。
ルリは、話を続けた。
「それに、お姉ちゃん見てると、イライラするんだよねー。私より、できる、みたいな感じ、だしちゃって。そんな時は、わからせるの」
「わからせるとは、具体的に何をするんですか?」
「とっちゃうの! お姉ちゃんが好きそうなものを奪うの。そうしたら、ルリのほうが、お姉ちゃんより上だってわかるよね?」
そう言って、けらけら笑うルリ。
私は魔力持ちなので、人のまとう気がはっきりと見える。
今、ルリの放つ気は毒々しく濁っている。
会ったこともないが、ルリみたいな女を妹に持つ姉に心底、同情した。
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