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本当の姿は
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いつも通り、両親と私、パトリックでお茶をする。
両親と話すパトリックは、まさに、絵に描いたような素敵な少年という感じだ。
そして、お茶が終わった時、
「ねえ、ライラ。庭を見せて」
と、言われた。これもいつものことだ。
両親はにこにこして、私たちを送り出す。
もちろん、裏庭の奥にひっそりとある私専用の花畑ではなく、庭師が管理している屋敷の表にある普通の庭の方へ連れて行く。
庭に入って、まわりに誰もいなくなったとたん、パトリックはさわやかな笑顔をやめた。
「あいかわらず、ここは田舎だよね?」
と、冷たい声で言う。
だから、来なくて良いって言ってるじゃない?
と、そのまま言うわけにもいかず、
「忙しいなら、わざわざ来てもらわなくていいよ」
と言ってみる。
「ライラのくせに、俺に命令するの? ちょっと会わない間に偉そうになったね」
と、上から冷たい目で見下ろしてきた。
はいはい、これもいつもの感じ。
「嫌なら婚約をやめてよ。公爵家のほうからなら取りやめにできるよね?」
と、私が言ったとたん、パトリックのまとう空気が一気に冷え切った。
「ライラは俺との婚約をやめたいんだ?! ひどいね。もし、そんなことをライラが口にしたら、ライラの父上は、すごく悲しむだろうね。俺の父とは学友で仲もいいから。それよりも、ライラの家は、俺の家に、多額のお金を払わないといけなくなるよ。ライラのご両親も困るよね? 働いてる人も、領民も困るよね? 全部、ライラのせいで。それでもいいの?」
と、冷たい目で微笑む。
はああー、そうなんだよね。それがなかったら、すぐに両親に言ってるのに。
婚約、やめたいって。二人とも私のことを心配してやめてくれるだろう。
でも、公爵家にいっぱいお金を払わないといけなくなるなら、絶対に困る。
私のせいで、皆が困るなんて嫌だ!
私は首を横に振る。
「そうだよ、ライラ。ライラはね、ぼくと結婚するしかないの。こんな優秀で公爵家の俺が婿入りするんだよ。感謝してよ」
そう言って、パトリックは、満足そうに微笑んだ。
パトリックと出会ったのは、私が5歳のころ。パトリックは7歳だった。
公爵家の方々が休暇でこのあたりに来たのだけれど、息子の具合が悪くなり、学友だったお父様のところに助けを求めてきた。それが、パトリックだった。
急遽、お医者様に見せ、うちに一週間ほど滞在した。
その時、パトリックは黒い煙をいたるところにつけていた。
私は様子を見るふりをして、黒い煙をすいとった。
1週間で全部取れると、すっかりパトリックは元気になった。
パトリックに、私の能力は気づかれていないけれど、パトリックの強い希望で、後日、公爵家から婚約の申し込みがあった。
その時の私のパトリックの印象は、大人しくて、優しいお兄ちゃんだった。
だから、婚約の申し込みがあるけどどうする? と両親に聞かれたとき、意味もよくわからず、気軽に「いいよー!」と答えた私。
あー、バカ、バカ、バカ!
あの時、しっかり断っとけば、こんな面倒なことにはならなかったのに!
でも、あの頃のパトリックは、今思い出しても、大人しくて優しい子どもだった。
今とは、まるっきり違うけど!
変わりはじめたのは、パトリックが12歳のころ、ちょうど貴族の学園に通い始めた時だ。
ここへ来るたびに、つけてくる黒い煙が多くなっていった。
それに伴って、優しかった口調も、少しずつ意地悪になっていった。
それでも、最初のころは、黒い煙をバレないように、すいとると、はっとしたように、
「ライラ、ごめん! きついこと言って。ぼく、疲れてるのかな? ライラにあたったりして。学園の勉強が、ちょっと大変でね…。ほんと、ごめん。ライラ」
と、すぐに謝って、前の優しいパトリックに戻ってたのに。
それが、だんだん、黒い煙が取りづらくなってきて、優しいパトリックは消えていった。
しかも、両親には今まで通りの態度なのに、両親が見てないところで、何故か、私にきつい言葉をなげかけるようになった。
そして、私は気づいた。
パトリックの黒い煙は、私では、もう完全にはすい取れないことに。
というのも、その黒い煙は他人からつけられたものではなくて、パトリック自身から出てきてるものだから。
胸のあたりに穴があいて、そこから泉のように、黒い煙が少しずつ流れ出している。
しかも、会うたび、その量は増えていった。
こうなると、すい取っても、すい取っても、どんどん出てくる。
エンドレスだから。
両親と話すパトリックは、まさに、絵に描いたような素敵な少年という感じだ。
そして、お茶が終わった時、
「ねえ、ライラ。庭を見せて」
と、言われた。これもいつものことだ。
両親はにこにこして、私たちを送り出す。
もちろん、裏庭の奥にひっそりとある私専用の花畑ではなく、庭師が管理している屋敷の表にある普通の庭の方へ連れて行く。
庭に入って、まわりに誰もいなくなったとたん、パトリックはさわやかな笑顔をやめた。
「あいかわらず、ここは田舎だよね?」
と、冷たい声で言う。
だから、来なくて良いって言ってるじゃない?
と、そのまま言うわけにもいかず、
「忙しいなら、わざわざ来てもらわなくていいよ」
と言ってみる。
「ライラのくせに、俺に命令するの? ちょっと会わない間に偉そうになったね」
と、上から冷たい目で見下ろしてきた。
はいはい、これもいつもの感じ。
「嫌なら婚約をやめてよ。公爵家のほうからなら取りやめにできるよね?」
と、私が言ったとたん、パトリックのまとう空気が一気に冷え切った。
「ライラは俺との婚約をやめたいんだ?! ひどいね。もし、そんなことをライラが口にしたら、ライラの父上は、すごく悲しむだろうね。俺の父とは学友で仲もいいから。それよりも、ライラの家は、俺の家に、多額のお金を払わないといけなくなるよ。ライラのご両親も困るよね? 働いてる人も、領民も困るよね? 全部、ライラのせいで。それでもいいの?」
と、冷たい目で微笑む。
はああー、そうなんだよね。それがなかったら、すぐに両親に言ってるのに。
婚約、やめたいって。二人とも私のことを心配してやめてくれるだろう。
でも、公爵家にいっぱいお金を払わないといけなくなるなら、絶対に困る。
私のせいで、皆が困るなんて嫌だ!
私は首を横に振る。
「そうだよ、ライラ。ライラはね、ぼくと結婚するしかないの。こんな優秀で公爵家の俺が婿入りするんだよ。感謝してよ」
そう言って、パトリックは、満足そうに微笑んだ。
パトリックと出会ったのは、私が5歳のころ。パトリックは7歳だった。
公爵家の方々が休暇でこのあたりに来たのだけれど、息子の具合が悪くなり、学友だったお父様のところに助けを求めてきた。それが、パトリックだった。
急遽、お医者様に見せ、うちに一週間ほど滞在した。
その時、パトリックは黒い煙をいたるところにつけていた。
私は様子を見るふりをして、黒い煙をすいとった。
1週間で全部取れると、すっかりパトリックは元気になった。
パトリックに、私の能力は気づかれていないけれど、パトリックの強い希望で、後日、公爵家から婚約の申し込みがあった。
その時の私のパトリックの印象は、大人しくて、優しいお兄ちゃんだった。
だから、婚約の申し込みがあるけどどうする? と両親に聞かれたとき、意味もよくわからず、気軽に「いいよー!」と答えた私。
あー、バカ、バカ、バカ!
あの時、しっかり断っとけば、こんな面倒なことにはならなかったのに!
でも、あの頃のパトリックは、今思い出しても、大人しくて優しい子どもだった。
今とは、まるっきり違うけど!
変わりはじめたのは、パトリックが12歳のころ、ちょうど貴族の学園に通い始めた時だ。
ここへ来るたびに、つけてくる黒い煙が多くなっていった。
それに伴って、優しかった口調も、少しずつ意地悪になっていった。
それでも、最初のころは、黒い煙をバレないように、すいとると、はっとしたように、
「ライラ、ごめん! きついこと言って。ぼく、疲れてるのかな? ライラにあたったりして。学園の勉強が、ちょっと大変でね…。ほんと、ごめん。ライラ」
と、すぐに謝って、前の優しいパトリックに戻ってたのに。
それが、だんだん、黒い煙が取りづらくなってきて、優しいパトリックは消えていった。
しかも、両親には今まで通りの態度なのに、両親が見てないところで、何故か、私にきつい言葉をなげかけるようになった。
そして、私は気づいた。
パトリックの黒い煙は、私では、もう完全にはすい取れないことに。
というのも、その黒い煙は他人からつけられたものではなくて、パトリック自身から出てきてるものだから。
胸のあたりに穴があいて、そこから泉のように、黒い煙が少しずつ流れ出している。
しかも、会うたび、その量は増えていった。
こうなると、すい取っても、すい取っても、どんどん出てくる。
エンドレスだから。
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