全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!

水無月あん

文字の大きさ
70 / 106

怒らない

しおりを挟む
私の手のひらから、うすい紫色の霧がではじめた。そして、どんどんと魔石の中にすいこまれていく。

私の場合、何かを守護する場合は、守るものに膜をかけていくようにイメージするけれど、今回は、魔石の中に守護の力を込める。だから、魔石の中へ中へと守護の力を注ぎこんでいくようイメージする。

もっとよ、もっと…。

集中して、念じていると肩をたたかれた。

「はーい、おつかれさまー! 無事完了! さっすが、ルシェ。今日も、すっごく、きれいな守護の力だったね!」
と、ノーラン様の声。

「え、終わった?! いくらなんでも、まだでしょ? だって、守護の力を魔石の半分こめるのにだって5分かかるのに。今、5分もたっていないわよね? あ…、それか、私、途中で意識がとんでたの?!」

「もう、ぼくがそばにいるのに、ルシェの意識をどっかにやったりなんかしないよ? ルシェの言う通り、5分もたってない。でも、ほら、魔石くんを見て! ルシェのきれいな色に魔石くん、染まってるでしょ?」

確かに…。

黒々していた魔石が、今は、うすい紫色に変わっていた。
うすい紫色は、私が放つ色。
つまり、私の守護の力が、結界の魔石いっぱいにはいりきって、色が変わったということ。

こうなると、何故か、魔石の棘もふにょふにょでやわらかくなるので、直接触っても痛くない。
なので、両手で持ち上げてみる。うん、重さはないわね…。

ということは、いつもどおり、無事、守護の力を込め終わったみたい。

でも、絶対におかしい。
なんで、こんなに早く終わったの?

「すごいです! ルシェル様! まだ、2分しかたっていません!」
手元の時計を見ながら、ミケランさんが驚いたように、大きな声をあげた。

「2分…? え、うそ?!」

「いえ、本当です、ルシェル様! いつもなら、魔石の半分まで守護の力がこもって、魔石が暴れなくなるのに5分。完全に力がこもって色が変わるまでには、最低でも10分はかかります。やはり、ノーラン様がルシェル様をお手伝いすると、こんなに短い時間で、魔力がこもるものなのですね! さすが、お二人です!」
興奮気味に話すミケランさん。

「ミケラン、ぼくたちがお似合いだって褒めてくれてありがと。ぼく、ルシェが一緒だと、どんどん力がでるみたい」

お似合い? 何を言っているの、偽エルフは? 

そう言えば、さっきから、偽エルフの姿が見えない。
なのに、声が近いのは何故? しかも、ものすごく近い。
もしや…?!

私はバッと後ろを振り向く。

すると、案の定、私の背中にはりついている偽エルフがいた。

文字通り、はりついているのに、私にその感覚はない。

つまり、魔力カーテンを使ったのね! この魔力カーテンをひくと、人の気配が完全に消える。
ただ、気配だけ消えるので、透明人間のように姿が消えるわけではない。だから、見えるところにいればわかる。

なので、子どもの頃、お茶会では、魔力カーテンを使って、私が見えない私の背後に隠れて、よく驚かされてたものだったわ…。
まだ、こんな子どもみたいなことをしているの? しかも、仕事中に? 

私と目があったとたん、「あ、見つかった。やっほー、ルシェ」と、ものすごい至近距離で手をふる偽エルフ。
あまりの奇行に、思考がとまる。

「…なんで、そんなところにいるのですか…?」

「ルシェが守護の力を込めはじめた時、ぼく、ひらめいたの! ぼくの魔術で、ルシェのお仕事を手伝う、いい方法をね。そのためには、ルシェの真後ろにいるのが一番いい。だから、移動したんだけど、ただ移動するのも、つまんないし? 子どもの頃を思い出して、魔力カーテンをひいてみたの。ルシェを驚かしたら、おもしろいなって思ったからね。ルシェ、後ろから声をかけると、いっつも飛び上がって驚いてたもんね。懐かしいでしょ?」
そう言って、魔力カーテンを外して、私の隣に移動する偽エルフ。

偽エルフが、私の背後から、どんな魔術を使って、私の仕事を猛スピードで終わらせたのか気にはなる。
でも、今は、それよりも、この偽エルフを叩きたい衝動におそわれている。

が、暴力は絶対ダメ…。どんな理由があろうとも絶対にダメ…。

深呼吸をして、心を整える。
私は聖女。聖女たるもの、怒らない、怒らない、怒らない…。

しっかり暗示にかけてから、偽エルフに疑問をぶつけるべく、再び、向き直った。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

処理中です...