悪役令嬢? いえ、私、先回り令嬢です!

水無月あん

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幼馴染

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「シャルル王子、また町にきてるんですか?」
と、あきれたように言いつつも、椅子からさっと立ち上がったエリック。

「人聞き悪いなあ、エリック。それだと僕がいつも城からぬけだし、町にきてるみたいじゃないか」

「実際、そうでしょう?」

エリックの遠慮のない口調から、ふたりが親しいのが伝わってくる。

「今日はロザリンナについてきただけだよ」

「町に行きたいから、ロザリンナ嬢を口実にしていませんか?」

冷たい視線で、王子を見るエリック。

「まさか! 妹みたいなロザリンナが心配なだけだよ」

「あら、シャル。私は妹じゃないわ。私とシャルとエリックは同じ年で幼馴染だもの」

すねたように言い返すヒロイン。

3人が幼馴染?

マンガでは、ヒロインと王子は幼い頃からの婚約者で、王子はヒロイン一筋設定だったけれど、エリックも幼馴染なんだ……。

やっぱり、マンガとは違うみたい。
それに、婚約者と言わないあたり、ふたりは婚約していないのかな……?

正直、ふたりの関係はどうでもいいけれど、強制力が働いて、マリアンヌと私が断罪ルートに入るのだけは嫌。

ということで、私たちにとって危険な存在である王子とヒロインには近寄らないに限る!

ちらっと、マリアンヌを見ると、きらきら王子を前にしても、ときめいている感じはみじんもない。

美形エリックの顔面に、しょっちゅう、くらくらしている私とちがって、しっかりしてるわ。

さすが、マリアンヌ! 
えらいぞ、マリアンヌ!

心の中でマリアンヌを絶賛している私の横で、ヒロインがエリックにずいっと近寄った。

「ここで、エリックと会えるなんて嬉しいわ!」

ヒロインが大きなスミレ色の瞳をきらきらさせて、エリックをじっと見つめる。

あれ……? 
もしかして、ヒロインはエリックが好きなのかな?

それとも、ただの幼馴染にもこんな顔ができるのが、ヒロインの通常装備なのかな?

だと怖いよね。
だって、こんな顔されたら、大多数の男子がよろめくだろう。

なーんて椅子に座ったまま、二人を見上げるようにして観察していたが、ふと思った。

目の前に、王子がいるのに、のんびり座ってていいのかな……?
エリックは王子を見るなり、立っている。

やっぱり、不敬にならないよう、一応、立つべきかな……? 

マリアンヌに口パクで問いかけた。

(私たち、立ったほうがいい?)

(そうね。今更だけど、立たないよりはましかも)
と、マリアンヌ。

ということで、私たちふたり、同時に立ちあがった。

「あ、気を使わないで。今日はお忍びだから」
と、即座に言った、きらきら王子。

お忍び……?
いや、どう考えても忍んでいない。

まわりを見回すと、わらわらと集まってきて、遠巻きで見ている令嬢たちの目がハートになってるし。
そんな令嬢たちに気づいた王子は、会話をしながらも、甘い微笑みをばらまいている。

目立ちまくりだわ。

内心つっこみつつも、
「では、遠慮なく座らせていただきます」
と、ちゃんと断って、さっさと椅子にすわった私。

天使マリアンヌはまだ立っていたので、「マリアンヌもすわろう」と声をかけると、マリアンヌも座った。

すると、何故か、王子が私を見て、ふふっと笑った。

「なんか、おもしろそうなご令嬢だね……。エリック、ふたりを紹介してくれる?」

「僕の隣がドリス伯爵家のシャノン嬢で僕の婚約者です。そして、その隣がシャノン嬢の妹でマリアンヌ嬢です」

エリックが私たちを紹介した途端、ヒロインが私の顔をのぞきこんだ。

「ええ!? あなたがエリックの婚約者なの? ずっと会ってみたいと思ってたの。エリックは大事な幼馴染だから。私とも仲良くしてね、シャノンさん」

小首をかしげて、にっこり微笑んだヒロイン。
その愛らしさに、まわりの令嬢たちからは感嘆したようなため息がもれる。

が、私は、小首をかしげて笑って、あざとく見えないってすごいなとか、どうでもいいことを考えていると、小首をかしげたままのヒロインが、どうやら、私の返答を待っていることに気がついた。

おっと、いけない、いけない。

確か、「仲良くしてね」と、言われたんだっけ。
それに対して答えるとしたら、なんだ?

「私も仲良くしてください」

いや、それは無理。
マリアンヌと私の身の安全を考えると、王子とヒロインにはできるだけ関わりたくない。

「嫌です。仲良くできません」
と、正直に答えるのもまずい……。

この場合、私が答えるべき正解ってなに!?

迷いながらも、口から勝手にとび出た言葉は、「ありがとうございます……?」だった。
焦ったせいで、疑問形になってしまっている。

ヒロインの可憐なお顔から笑顔が消えた。

どうやら不正解だったみたい。
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