オハギとオモチ ~夏編~

水無月あん

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魔女オハギ

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指も見えない、長いそで。
靴もかくれる、長いすそ。

真っ黒なワンピースを着て、鏡を見ている女の子。名前はオハギ。小さくても魔女だ。

「さすが、大魔女のおばあちゃんがくれた服だわ! これこそ、立派な魔女よね!」

鏡を見ながら、魔女のオハギがつぶやくと、

「ちっとも、似合ってないけどね」
すかさず口をはさむ、白猫のオモチ。オハギの助手だ。

「なによ! ふだん、めんどうくさいしか言わないくせに。そんなこと言ってると、魔女の助手らしく、まっくろにそめるわよ!」

あわてて、オモチが逃げ出して、オハギは鏡に目を戻す。
そのとたん、はあーっと、ため息がでた。

(確かに、オモチの言うとおりかも…)

だって、鏡にうつる、まるい目とふっくりしたほっぺたは、すごーく子どもっぽい。
せっかくの魔女ワンピースが、ちっとも似合わないもの。

オハギは、そばにあった、真っ黒いとんがり帽子を深くかぶった。
まるい目が少し隠れて、半分になった。

背中へたらした、真っ黒い髪の毛を、ぐいっと前へひっぱった。
ふっくりしたほっぺたが少し隠れて、半分になった。

「うん、これで、すこしはましね。…あれ、なに、このにおい?」

オハギは窓に近寄って、鼻をふふんと動かした。
窓を開いて、もう一度、ふふん。

「うわあ、大変! もう夏がこっちへむかってるわ!」

オハギは夏が大嫌い。真っ黒い魔女のワンピースが、暑くてたまらないからだ。

だから、去年は、家に魔法をかけた。夏が、家に入ってこないように。
大魔女のおばあちゃんから譲りうけた、呪文の書をしっかり読んだのに、魔法は大失敗。

古い呪文だったから、ところどころ発音がよくわからなくて、ダメだったのかも。
夏が入ってこないどころか、夏が集まりすぎて、あやうく、魔女の干物になりかけた。

今年は、早めに暑さ対策をしよう!

オハギは、魔法道具のつまった戸棚にとんでいき、ひきだしをひっぱりだした。

なにかいいものがないかな…?

ひっかきまわして探していると、うん?!

「これだわ!」
オハギが手にとったのは、古ぼけた白いハンカチ。

「なに、その、ぼろっちい布?」
いつの間にか、そばに戻ってきていたオモチが嫌そうに聞いてきた。

「フフフ…。これで涙を集めるの。これがあれば、真夏でもひえびえよ!」

「はあ?」

「じゃあ、早速、準備開始! 行くわよ、オモチ!」

「…ぼくはいい。めんどくさいから留守番してる。いってらっしゃーい」
オモチは寝ころんだまま、しっぽだけをぴろぴろとふった。

「こら、なまけもの! それでも魔女の助手なの?! 今年の夏、暑さで、ひからびたオモチになってもしらないからね!」
オハギはオモチにそう言うと、長いワンピースをたくしあげ、ハンカチをにぎりしめると、外へ飛び出していった。
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