1 / 11
魔女オハギ
しおりを挟む
指も見えない、長いそで。
靴もかくれる、長いすそ。
真っ黒なワンピースを着て、鏡を見ている女の子。名前はオハギ。小さくても魔女だ。
「さすが、大魔女のおばあちゃんがくれた服だわ! これこそ、立派な魔女よね!」
鏡を見ながら、魔女のオハギがつぶやくと、
「ちっとも、似合ってないけどね」
すかさず口をはさむ、白猫のオモチ。オハギの助手だ。
「なによ! ふだん、めんどうくさいしか言わないくせに。そんなこと言ってると、魔女の助手らしく、まっくろにそめるわよ!」
あわてて、オモチが逃げ出して、オハギは鏡に目を戻す。
そのとたん、はあーっと、ため息がでた。
(確かに、オモチの言うとおりかも…)
だって、鏡にうつる、まるい目とふっくりしたほっぺたは、すごーく子どもっぽい。
せっかくの魔女ワンピースが、ちっとも似合わないもの。
オハギは、そばにあった、真っ黒いとんがり帽子を深くかぶった。
まるい目が少し隠れて、半分になった。
背中へたらした、真っ黒い髪の毛を、ぐいっと前へひっぱった。
ふっくりしたほっぺたが少し隠れて、半分になった。
「うん、これで、すこしはましね。…あれ、なに、このにおい?」
オハギは窓に近寄って、鼻をふふんと動かした。
窓を開いて、もう一度、ふふん。
「うわあ、大変! もう夏がこっちへむかってるわ!」
オハギは夏が大嫌い。真っ黒い魔女のワンピースが、暑くてたまらないからだ。
だから、去年は、家に魔法をかけた。夏が、家に入ってこないように。
大魔女のおばあちゃんから譲りうけた、呪文の書をしっかり読んだのに、魔法は大失敗。
古い呪文だったから、ところどころ発音がよくわからなくて、ダメだったのかも。
夏が入ってこないどころか、夏が集まりすぎて、あやうく、魔女の干物になりかけた。
今年は、早めに暑さ対策をしよう!
オハギは、魔法道具のつまった戸棚にとんでいき、ひきだしをひっぱりだした。
なにかいいものがないかな…?
ひっかきまわして探していると、うん?!
「これだわ!」
オハギが手にとったのは、古ぼけた白いハンカチ。
「なに、その、ぼろっちい布?」
いつの間にか、そばに戻ってきていたオモチが嫌そうに聞いてきた。
「フフフ…。これで涙を集めるの。これがあれば、真夏でもひえびえよ!」
「はあ?」
「じゃあ、早速、準備開始! 行くわよ、オモチ!」
「…ぼくはいい。めんどくさいから留守番してる。いってらっしゃーい」
オモチは寝ころんだまま、しっぽだけをぴろぴろとふった。
「こら、なまけもの! それでも魔女の助手なの?! 今年の夏、暑さで、ひからびたオモチになってもしらないからね!」
オハギはオモチにそう言うと、長いワンピースをたくしあげ、ハンカチをにぎりしめると、外へ飛び出していった。
靴もかくれる、長いすそ。
真っ黒なワンピースを着て、鏡を見ている女の子。名前はオハギ。小さくても魔女だ。
「さすが、大魔女のおばあちゃんがくれた服だわ! これこそ、立派な魔女よね!」
鏡を見ながら、魔女のオハギがつぶやくと、
「ちっとも、似合ってないけどね」
すかさず口をはさむ、白猫のオモチ。オハギの助手だ。
「なによ! ふだん、めんどうくさいしか言わないくせに。そんなこと言ってると、魔女の助手らしく、まっくろにそめるわよ!」
あわてて、オモチが逃げ出して、オハギは鏡に目を戻す。
そのとたん、はあーっと、ため息がでた。
(確かに、オモチの言うとおりかも…)
だって、鏡にうつる、まるい目とふっくりしたほっぺたは、すごーく子どもっぽい。
せっかくの魔女ワンピースが、ちっとも似合わないもの。
オハギは、そばにあった、真っ黒いとんがり帽子を深くかぶった。
まるい目が少し隠れて、半分になった。
背中へたらした、真っ黒い髪の毛を、ぐいっと前へひっぱった。
ふっくりしたほっぺたが少し隠れて、半分になった。
「うん、これで、すこしはましね。…あれ、なに、このにおい?」
オハギは窓に近寄って、鼻をふふんと動かした。
窓を開いて、もう一度、ふふん。
「うわあ、大変! もう夏がこっちへむかってるわ!」
オハギは夏が大嫌い。真っ黒い魔女のワンピースが、暑くてたまらないからだ。
だから、去年は、家に魔法をかけた。夏が、家に入ってこないように。
大魔女のおばあちゃんから譲りうけた、呪文の書をしっかり読んだのに、魔法は大失敗。
古い呪文だったから、ところどころ発音がよくわからなくて、ダメだったのかも。
夏が入ってこないどころか、夏が集まりすぎて、あやうく、魔女の干物になりかけた。
今年は、早めに暑さ対策をしよう!
オハギは、魔法道具のつまった戸棚にとんでいき、ひきだしをひっぱりだした。
なにかいいものがないかな…?
ひっかきまわして探していると、うん?!
「これだわ!」
オハギが手にとったのは、古ぼけた白いハンカチ。
「なに、その、ぼろっちい布?」
いつの間にか、そばに戻ってきていたオモチが嫌そうに聞いてきた。
「フフフ…。これで涙を集めるの。これがあれば、真夏でもひえびえよ!」
「はあ?」
「じゃあ、早速、準備開始! 行くわよ、オモチ!」
「…ぼくはいい。めんどくさいから留守番してる。いってらっしゃーい」
オモチは寝ころんだまま、しっぽだけをぴろぴろとふった。
「こら、なまけもの! それでも魔女の助手なの?! 今年の夏、暑さで、ひからびたオモチになってもしらないからね!」
オハギはオモチにそう言うと、長いワンピースをたくしあげ、ハンカチをにぎりしめると、外へ飛び出していった。
0
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる