(本編完結・番外編更新中) 妖精のたのみごと

水無月あん

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2年前のこと 3 ~ 約束 ~

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※ 今回も引き続き2年前のことになります。


次の日、学校に行くと、私のところにクラスメイトが近づいてきた。

人と話すのが苦手な私とはまるで違う、活発でクラスでも目立つ女の子。
倉重メイさんだ。

倉重さんと冬樹君とは同じマンションに住んでいて、幼馴染らしい。
よく教室で、「冬樹君、冬樹君」と大きな声で話しかける倉重さんの声を聞くことがある。

それくらいしか、倉重さんのことは知らないけれど、なんの用なんだろう……。

「ねえ、森里さんって、妖精が見えるの?」
と、強い口調で聞いてきた倉重さん。

「え……?」

「冬樹君から聞いた。でも、それってうそだよね! 妖精なんて、いるわけないし」

だれにも言わないでって約束したのに、冬樹君、まさか話したの……!?

私の体が、どんどん冷たくなっていく。

倉重さんの声が大きいからか、まわりから、クスクス笑う声が聞こえてくる。

「妖精って、おとぎばなしとかにでてくるやつだよね!」
「いるなら、ここに呼んでー」
「でも、ほんとにいたら、こわくない?」

私の頭は真っ白になった。
だまったままの私に、倉重さんは更に大きな声で言った。

「森里さん、なにも言えないんだね。やっぱり、妖精を見たって、うそなんだ。冬樹君が不思議なものが好きだから、気をひこうとして、うそついたんだよね!」

「えー、森里さんって、もしかして、冬樹君のことが好きなのー?」
と、からかうような声。

違う。本当に見えるから……。
そう言いたいのに、声がでてこない。

その時だ。

「うそじゃない! はるちゃんは、うそなんてつかない!」
と、後ろから声が聞こえてきた。

冬樹君だ。

まわりがもっとざわつきはじめた。

「えー? はるちゃん?」
「ふたりって、なかいいの?」
「ひゃあー!」

私はうつむいて、こぶしをぐっとにぎりしめた。

「あのね、冬樹君は森里さんにだまされてんの! 妖精なんているわけないから!」
と、いらいらしたように言う倉重さん。

「いるよっ! だって、ぼく、ひろったから。妖精の石」

「ようせいのいしぃ? 冬樹まで、なに言ってんだー」
と、笑う男の子の声。

「冬樹君、へんなこと言って、森里さんをかばわなくていいから! 森里さんはうそつきなんだよ!」

倉重さんが怒ったように言った。

「妖精が見えるって、やっぱり、うそか」
「うそつくなんてやだよねー!」

とげとげした声。

「違う! はるちゃんは、うそなんてつかない! 妖精は絶対にいるから!」

冬樹君が必死に声をあげる。
私はがまんできなくなって、教室を飛び出した。

「待って……!」

足の遅い私は、すぐに冬樹君に追いつかれた。

「はるちゃん……」

必死な顔で、私に何か言おうとした冬樹君。私はさえぎるように言った。

「ひどいよ、冬樹君! 誰にも言わないでって約束したのに! 倉重さんに言うなんて……」

「僕、メイちゃんに言ってない!」

「でも、倉重さんが言ってた。冬樹君から聞いたって」

冬樹君は、ものすごい勢いで、ぶんぶんと首を横にふった。

「本当に言ってない! はるちゃんと約束したから!」

「じゃあ、倉重さんがなんで知ってるの……?」

「わからない……。でも……、メイちゃんがあんなひどいこと言って、ごめん……」

倉重さんのことを謝る冬樹君に、私の心がまっくろになった。

仲良くなったから、つらいんだ。
そんなともだちならいないほうがいい。

こぶしをぎゅーっとにぎって、私は震える声をしぼりだした。

「もういい。……冬樹君とともだちやめる」

「え……? はるちゃん?」

冬樹君の顔が悲しそうに固まった。
いつも笑ってる大きな目に、涙がたまりはじめた。

今にも泣きだしそう。
 
私は逃げるように走りだした。

走りながら、なんどもなんども頭をふった。 
でも、冬樹君の悲しそうな顔が、頭からはなれない。

あんな顔されたって、私が悪いんじゃない。
泣きたいのはこっちだ。
だって、約束やぶったのは、冬樹君だもん。
だから、私は悪くない。
ともだちなんて、もういらない……!

私は家にもどると、机の上にかざってあった冬樹君からもらった石を、ひきだしの奥につっこんだ。


それから、私は冬樹君に会わないよう図書館に行くのをやめた。
学校で、冬樹君が話しかけてこようとしたら、さけた。

そうしているうちに、「ねえねえ、森里さん、妖精どこー?」「はやく、妖精つれてきてー」とか、からかっていたクラスメイトたちも飽きてきたのか、私に何も言わなくなった。

ただ、倉重さんだけは、私のことを監視するように見ていた。

でも、そんな毎日もやっと終わった。
冬樹君が突然ひっこしていったから。



※ 次回から今に戻ります。 
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