(本編完結・番外編更新中) 妖精のたのみごと

水無月あん

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ちょっと待って

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「こら、人の子! わしやま様をじっと見るんじゃない。ばちあたりな!」

背後からケヤキの妖精の声がした。

「え? ケヤキの妖精さんも、わしやまって呼んでるの? 私とおんなじ呼び方……」

そう言いながら、ふりかえった瞬間、「ぎゃーっ!」と、思いっきり声がでた。

そこには、私と同じ背丈になったケヤキの妖精がいたからだ。

「ちょっと、なんで……!? どうして、そんなに、大きくなってるの……!?」

「そりゃあ、ここは、妖精の世。本来のわしの姿に戻ったまでじゃ」

「は……?」

言っている意味がわからない。

「つまり、ここは、わしら妖精が生まれ育った世じゃ」

そう言うと、ケヤキの妖精は誇らしげに緑色の羽を上下させた。

「おぬしも、これで、わしの羽のすごさがわかったじゃろう!?」

「ううん……。全然……」

ケヤキの妖精が驚いたように、目を見開いた。
大きくなった分、異様な迫力で、ちょっと怖い……。

思わずあとずさってしまう。

が、ケヤキの妖精は気にするでもなく、話をつづけた。

「このケヤキはな、人の世と妖精の世をつないでいる通り道のひとつじゃ。わしの羽で先導することで、おぬしをこっち側に連れてこれたんじゃ」

「はあ……。それより、あの山……、私の町にある山と似てるけど……なんだか動いている……」

混乱した頭で、私は山を指さした。

「こらあ、わしやま様を指さすんじゃないっ!」

ケヤキの妖精は頭の上のきのこをぼわっとふくらませて、どなった。

「わしやま様にむかって、指さすなど信じられん! 無礼なやつじゃ!」

ぶちぶちと文句を言った後、やっと、私の質問に答えはじめた。

「今、おぬしは、妖精の世から眺めておるから、わしやま様のお姿が違って見えて当然じゃ。ほら、このケヤキじゃて、おぬしの庭のあわれに切られた木と芯は同じじゃが、姿はまるで違うだろう」

「ええと……何言ってるのか、ぜんぜん、わからないんだけど……」

「はあああ。こんな簡単なことがわからぬのか? つまり、おぬしが見ておったのは、おぬしの世から見るわしやま様。今見ておるのは、妖精の世から見るわしやま様。同じわしやま様じゃが、見る面がちがう」

うーん、わかったような、わからないような……。

「では、おぬしで考えればよい。前から見た時、後ろから見た時、はたまた、横から見た時。どれもちがって見えるが、すべて、おぬしじゃ」

「あ、それならわかる」

やっと、そうつぶやいた時、ケヤキの妖精が言った。

「そんなことより、人の子よ。よく聞け。これより、妖精のたのみごとを伝える」

「……え、え、ちょっと待ってよ!」 

あわてて、私はさえぎった。

わけがわからない所に連れてこられ、わけがわからないことを言われているのに、これで、まともなたのみごとをしてくるはずがない。

絶対に聞いちゃいけない。

「本当にお礼なんていらないから!」

「遠慮は無用じゃ」

「遠慮じゃなくて!」 

ケヤキの妖精は、まったく取りあわない。

こうなったら、聞こえないようにすればいい。
私は、両手でがしっと耳をふさいだ。

すぐさま、私の意図を察したらしいケヤキの妖精。
不敵な笑みを浮かべた。

(ムダじゃ)

ケヤキの妖精の声がした。
私は、もっときつく耳をふさいだ。

(おい、人の子よ。ムダじゃと言うておろうに)

まだ聞こえる。

耳をおさえても聞こえるなんて、ほんと、大きな声……。

そう頭の中で思ったら、すぐさま、ケヤキの妖精の声が返ってきた。

(声がでかいのではない。耳をおさえても、ムダなだけじゃ。何回、言わせる!)

私は、耳をおさえたまま、わわわわーと声をだした。
なのに、また声が聞こえた。

(だから、なにをやってもムダなんじゃ。わからん、やつじゃのう)

そこで、混乱していた私も、やっと気がついた。
なにかがおかしいって……。

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