(本編完結・番外編更新中) 妖精のたのみごと

水無月あん

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もうひとつ

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思ってもみなかった、ひとみがひとつの言葉に、思わず、「え?」と、聞き返した私。

「はる。おまえに頼みがある。というより、私からも頼む、だな」

「ええと、どういうこと……?」

「わしやま様に会って、ケヤキのじいさんへのおくりものを運ぶことを、私が待っていることを伝えてほしい」

「あの……それだったら、自分で行ってくればいいんじゃない? そうしたら、ケヤキの妖精さんの私へのたのみごとも一緒に終わるよね。だいたい、ひとみがひとつさんは飛べるんだから、私がわけもわからず会いに行くより、断然、早いよ」

「できるならば、そうしている。しかし、それはできない。この山に住む妖精たちはだれもが、わしやま様が呼ばないかぎり、わしやま様のもとへ行くことはできない。道がつながらないからな。言わば、わしやま様のもとで住まわせてもらう決まりだ。その決まりがなければ、遠慮知らずの妖精たちや文句ばかりいいたい妖精たちが、あれやこれやとひっきりなしに、わしやま様に願いにいくだろうからな」

「そうなんだ……。あ、じゃあ、風は? わしやま様から風にのって、ひとみがひとつさんのところまで用件が伝わってくるって言ってたよね? だったら、反対に、わしやま様への伝言を風に届けてもらえばいいんじゃない?」

「ここの風は、全て、わしやま様のところから吹いてくる。わしやま様に向かって吹く風はない」

「うーん……。それなら、連絡がくるまで待ってるしかないね」

「今まで待ったが、もう、待てん」

「なんで?」

「ケヤキのじいさんへのおくりものを届けた後、私はいつも旅にでる。次のおくりものを届ける時まで。つまり、おそくなればなるほど、私の旅をする時が短くなるんだ」

「じゃあ、おくりものを届けずに旅にでるか、今回は旅をあきらめるとか……」

「なぜ、あきらめないといけない?」

「え、だって、無理だったら、あきらめるしか……」

「そもそも、なぜ、まだおこってないことを無理と仮定する? それに私はあきらめるのは好まない」

その時、(なぜ、あきらめねばならぬ。いやじゃ!)と、叫んでいた、ケヤキの妖精を思い出した。
同じこと、言ってる……。

思い出したついでに、ケヤキの妖精が言っていたことを確認したくなった。

「もしかして、ひとみがひとつさんは、頼まれたおくりものを届けることも、旅にでることも、好きだからやってるの……?」

「あたりまえだ。そうしたいから、そうしている。さっきだって、門番の木々のところで、闇にのまれていたはるに助言したのも、そうしたいと思ったからそうしただけだ。何事も同じ。好むことをする」

やっぱり……。こっちもケヤキの妖精と同じだ。

好きなことをするって、当たり前のように言いきれるのが、なんだかうらやましい。

結局、ひとみがひとつのたのみはケヤキの妖精と同じことだから、断る意味もなく、引き受けてしまった私。
でも、気分的には、もうひとつのたのみごとがのっかった感じだ。

そして、ひとみがひとつとはそこで別れ、山の奥へと歩き出した。


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