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番外編
ある子息の初恋 24
幸せそうに微笑みあうアーノルド様とドルトン公爵家の令嬢を、メアリーが憎々し気に見ている。
「……アンジェリン……あの子ったら……今もまだ、体の弱さでアーノルド様を心配させて、同情をひいてるのね……。婚約も解消したのに、優しいアーノルド様をしばりつけるなんて、ひどいわ……!」
まるで呪いの言葉を吐くように、つぶやいたメアリー。
体の弱さで同情をひく……?
一体、なにを言っているんだ……?
確かに、ドルトン公爵家の令嬢の体調を気遣っているようではあったけれど、アーノルド様のあの表情や態度、どこをとっても同情なわけがない。
愛おしくてたまらないといった感じだ。
それに、しばりつけるどころか、アーノルド様のほうがドルトン公爵家の令嬢から離れたくないように見える。
何故、メアリーはアーノルド様がドルトン公爵家の令嬢に同情しているように見えるんだろう……?
メアリーの言葉が理解できなくて頭が混乱する。
すると、また、メアリーがぼそぼそとつぶやきだした。
「……なんの努力もせず……身分も容姿も極上で、その上、アーノルド様まで手に入れようとするなんて、本当にずるい子……。私のほうがずっとずっとずっとずっと努力してきたのに……。私のほうがずっとずっとずっとずっとふさわしいのに……。ずるいわ……。ずるい……ずるい……ずるい……!」
やめてくれ!
そんな言葉、聞きたくない!
なのに、愛する女性の声だからか、僕の耳が勝手にひろってしまうんだ。
僕はメアリーのなにを見て、全部、分かった気になっていたんだろう……。
僕の見ていた闇なんて、メアリーの本心からすると、ほんの一部……表面にうきあがった上澄みのようなものだけだったのかもしれない。
それに、メアリーはアーノルド様への思いと同様に、ドルトン公爵家の令嬢にも強い妬みがあるようだ……。
相反する思いであっても、メアリーがふたりに執着していることは間違いがない。
だから、ふたりが思いあっていることを絶対に認めないのか……。
とにかく、メアリーの思いがどうであれ、あのふたりの間に、メアリーが入るこむなんて不可能だ。
目を覚ましてくれ、メアリー!
そう言いたい気持ちを必死でおさえつける。
メアリーを刺激したくないからだ。
今だって、ドルトン公爵家の令嬢を、闇に染まった視線で見据えているメアリー。
何か少しでも刺激を与えてしまえば、ふたりのもとへとびだしていってしまいそうで怖い。
そんなことをしてしまったら、メアリーどころか、メアリーの実家も、僕も僕の家もどうなるかわからない。
早く、メアリーをこの場から遠ざけなければ。
が、刺激を与えずに、どうすればメアリーを移動させられる……?
その時、第二王子オズワルド様の朗らかな笑い声があたりに響いた。
「アーノルド、どうだ? 私からの贈り物は最高だろう? アンジェリン嬢とダンスを踊ってくれるよな?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます。オズワルド様」
即答したアーノルド様は、すぐにドルトン公爵家の令嬢に視線を移し、甘くとろけるような笑みを浮かべた。
そんなアーノルド様を見て、満足そうに微笑んだオズワルド様。
招待客のほうへ向き直ると、高らかに声をあげた。
「ここにいる、わが友アーノルド……いや、キングス公爵家の子息アーノルドは、ドルトン公爵家の令嬢、アンジェリン嬢と近々結婚することが決まった」
「オズワルド様、僕らのことはいいです! 今日はオズワルド様とリンダ様のお祝いの夜会ですから……」
困ったような顔で止めようとするアーノルド様をオズワルド様は手で制し、更に声を張った。
「ふたりは色々あって遠回りしたが、やっと一緒になることになった。不名誉な噂もあったが、アーノルドが、幼き頃より、アンジェリン嬢だけを一途に思ってきたことは私が証言しよう。不器用な友の幸せが、私はなにより嬉しい。……さあ、ふたりのファーストダンスだ。デビュタント同然のふたりが恥ずかしがらぬよう、みんなも一緒に踊り、祝ってやってくれ!」
まわりから、わあっと歓声と拍手がおこった。
盛り上がる招待客たちの中で、僕の額には冷汗がにじんだ。
メアリーへの刺激どころか……ふたりの結婚という、メアリーにとったら、これ以上ないほどの爆弾をオズワルド様が落としたからだ。
おそるおそる、メアリーを見る。
メアリーは目を見開いたまま固まっていた。
アーノルド様とドルトン公爵家の令嬢は恥ずかしそうに見つめあいながら、広間の中心で踊り始めた。
密集していた僕とメアリーのまわりから一気に人が減った。
オズワルド様の言葉に促されて、ふたりと一緒に踊りはじめた人が多いからだ。
今や、多くの人たちが楽しそうに踊っている。
チャンスだ……。
今なら、他の人たちに気づかれることなく、メアリーを移動させられるかもしれない。
曲が終わる前に、急がないと……。
僕は踊るふたりを見据えたまま固まっているメアリーの手をつかんで声をかけた。
「メアリー、帰ろう」
やっと、メアリーが僕を見た。
※ またまた更新が遅くなりました!
不定期な更新のなか、読んでくださっているかた、本当にありがとうございます!
いいね、エール、お気に入り登録もありがとうございます!
とても嬉しく、励みにさせていただいております!
「……アンジェリン……あの子ったら……今もまだ、体の弱さでアーノルド様を心配させて、同情をひいてるのね……。婚約も解消したのに、優しいアーノルド様をしばりつけるなんて、ひどいわ……!」
まるで呪いの言葉を吐くように、つぶやいたメアリー。
体の弱さで同情をひく……?
一体、なにを言っているんだ……?
確かに、ドルトン公爵家の令嬢の体調を気遣っているようではあったけれど、アーノルド様のあの表情や態度、どこをとっても同情なわけがない。
愛おしくてたまらないといった感じだ。
それに、しばりつけるどころか、アーノルド様のほうがドルトン公爵家の令嬢から離れたくないように見える。
何故、メアリーはアーノルド様がドルトン公爵家の令嬢に同情しているように見えるんだろう……?
メアリーの言葉が理解できなくて頭が混乱する。
すると、また、メアリーがぼそぼそとつぶやきだした。
「……なんの努力もせず……身分も容姿も極上で、その上、アーノルド様まで手に入れようとするなんて、本当にずるい子……。私のほうがずっとずっとずっとずっと努力してきたのに……。私のほうがずっとずっとずっとずっとふさわしいのに……。ずるいわ……。ずるい……ずるい……ずるい……!」
やめてくれ!
そんな言葉、聞きたくない!
なのに、愛する女性の声だからか、僕の耳が勝手にひろってしまうんだ。
僕はメアリーのなにを見て、全部、分かった気になっていたんだろう……。
僕の見ていた闇なんて、メアリーの本心からすると、ほんの一部……表面にうきあがった上澄みのようなものだけだったのかもしれない。
それに、メアリーはアーノルド様への思いと同様に、ドルトン公爵家の令嬢にも強い妬みがあるようだ……。
相反する思いであっても、メアリーがふたりに執着していることは間違いがない。
だから、ふたりが思いあっていることを絶対に認めないのか……。
とにかく、メアリーの思いがどうであれ、あのふたりの間に、メアリーが入るこむなんて不可能だ。
目を覚ましてくれ、メアリー!
そう言いたい気持ちを必死でおさえつける。
メアリーを刺激したくないからだ。
今だって、ドルトン公爵家の令嬢を、闇に染まった視線で見据えているメアリー。
何か少しでも刺激を与えてしまえば、ふたりのもとへとびだしていってしまいそうで怖い。
そんなことをしてしまったら、メアリーどころか、メアリーの実家も、僕も僕の家もどうなるかわからない。
早く、メアリーをこの場から遠ざけなければ。
が、刺激を与えずに、どうすればメアリーを移動させられる……?
その時、第二王子オズワルド様の朗らかな笑い声があたりに響いた。
「アーノルド、どうだ? 私からの贈り物は最高だろう? アンジェリン嬢とダンスを踊ってくれるよな?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます。オズワルド様」
即答したアーノルド様は、すぐにドルトン公爵家の令嬢に視線を移し、甘くとろけるような笑みを浮かべた。
そんなアーノルド様を見て、満足そうに微笑んだオズワルド様。
招待客のほうへ向き直ると、高らかに声をあげた。
「ここにいる、わが友アーノルド……いや、キングス公爵家の子息アーノルドは、ドルトン公爵家の令嬢、アンジェリン嬢と近々結婚することが決まった」
「オズワルド様、僕らのことはいいです! 今日はオズワルド様とリンダ様のお祝いの夜会ですから……」
困ったような顔で止めようとするアーノルド様をオズワルド様は手で制し、更に声を張った。
「ふたりは色々あって遠回りしたが、やっと一緒になることになった。不名誉な噂もあったが、アーノルドが、幼き頃より、アンジェリン嬢だけを一途に思ってきたことは私が証言しよう。不器用な友の幸せが、私はなにより嬉しい。……さあ、ふたりのファーストダンスだ。デビュタント同然のふたりが恥ずかしがらぬよう、みんなも一緒に踊り、祝ってやってくれ!」
まわりから、わあっと歓声と拍手がおこった。
盛り上がる招待客たちの中で、僕の額には冷汗がにじんだ。
メアリーへの刺激どころか……ふたりの結婚という、メアリーにとったら、これ以上ないほどの爆弾をオズワルド様が落としたからだ。
おそるおそる、メアリーを見る。
メアリーは目を見開いたまま固まっていた。
アーノルド様とドルトン公爵家の令嬢は恥ずかしそうに見つめあいながら、広間の中心で踊り始めた。
密集していた僕とメアリーのまわりから一気に人が減った。
オズワルド様の言葉に促されて、ふたりと一緒に踊りはじめた人が多いからだ。
今や、多くの人たちが楽しそうに踊っている。
チャンスだ……。
今なら、他の人たちに気づかれることなく、メアリーを移動させられるかもしれない。
曲が終わる前に、急がないと……。
僕は踊るふたりを見据えたまま固まっているメアリーの手をつかんで声をかけた。
「メアリー、帰ろう」
やっと、メアリーが僕を見た。
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