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これからのことを考える
たおれたあとは、どんなに悩んでいても、おなかがすく。
ベイリ国でたおれた時、目が覚めるなり、「おなかがすいた」と言った私。
レベッカ先生は、魔力を一気につくりだしたからおなかがすくのかもしれないわね、と興味深そうに言っていたっけ。
しかも、今回は二日間もねむっていたせいか、今まで以上に、おなかがすいている。
アーノルドとメアリー姉さまの姿を思い出すと胸が苦しくなって、食べてる場合ではないと思うのに、おなかはぐーぐーと鳴る。
心は悲しんでいるのに、それを打ち負かす食欲……。
15歳の女の子としては、なんだか、むなしくなってしまう。
複雑な気持ちで落ち込む私の前に、ルイーズが食事を運んできてくれた。
屋敷で働いていてくれているみんなは、この厄介な私の体質を熟知している。
もちろん、料理長のドノバンさんもだ。
ということで、私の目の前には普段の3倍くらいの量の食事がずらりと並んだ。
しかも、私の大好きなお料理だらけ。
まずはおなかを満たさないと何も考えられない。
ドノバンさんの用意してくれたごちそうを、私は夢中で食べ始めた。
◇ ◇ ◇
おなかが満たされると、不思議と荒れていた心も少しだけおちついた。
ちゃんとこれからのことを考えなきゃ……。
大好きなアーノルドとメアリー姉様が私のせいで苦しんでいるのなら、このまま知らなかったふりをして逃げるわけにはいかない。
ずっと屋敷にひきこもっていた私に、いつも優しく寄り添ってくれていたふたりなんだから。
メアリー姉様に初めて会ったのは5年前。
私が10歳、メアリー姉さまが13歳の時だった。
遠い親戚で、お父様と仕事でかかわりのあったジリアン伯爵様が娘のメアリー姉様を連れて、屋敷をたずねてきた。
ジリアン伯爵様がお父様とお仕事の話をしている間、メアリー姉様とお茶をすることになったのよね。
そのころの私は、今よりもっと、見知らぬ女の子には警戒していた。
初めてたおれた時もそうだったけれど、その後もたおれる時は、同年代の女の子の言葉や態度に傷つくことが多かったから。
警戒しすぎて上手く言葉がでてこない私に、メアリー姉様はやさしく、根気強く、にこにこしながら話をしてくれた。
優しくて、明るくて、しっかりしていて、こんな素敵な人が私のお姉さまだったらいいのにって思った。
お茶が終わるころには、警戒心はすっかり消えさり、あこがれる気持ちでいっぱいになっていた。
私は思いきって、「メアリー姉様」と呼ばせて欲しいとお願いしてみた。
すると、「妹ができたみたいで嬉しい」と言ってくれて、とても嬉しかったな。
それから、メアリー姉さまは時々、遊びにきてくれるようになった。
私のお誕生日を祝う食事会には、アーノルドとメアリー姉様を招待した。
ともだちのいない私がよびたいのは、アーノルドとメアリー姉様だけだったから。
大好きなふたりに祝ってもらって、はしゃいでいた自分を思いだすと、また、胸がずきりと痛む。
物心ついた時から私の婚約者だったアーノルド。
というのも、アーノルドのお父様であるキングス公爵様はお父様と親友で婚約はすぐに決まったみたい。
つまり、アーノルドの意思とは関係なく結ばれた婚約。
私にとったら、幸運なことだったけれど。
金色のさらさらとした髪はおひさまの光を集めたようで、青い瞳は晴れ渡った空みたいなアーノルド。
そばにいると、陽だまりにいるように心がほわっとあたたかくなった。
お母様を思って寂しかった時も、たおれてしまって不安におちいった時も、いつだって、アーノルドがとんできてくれた。
いつのまにか、アーノルドがそばにいてくれることを当たり前のように思ってしまうほど、私はアーノルドに甘えてしまっていたんだよね。
アーノルドが誠実でものすごく優しいことを、私はよく知っている。
人の言葉で傷ついて、すぐにたおれてしまうような、よわよわで頼りない婚約者である私を放っておけなかったんだと思う。
そこまで考えたら、
「あー、わたしって、本当にダメだ……!」
と、思わず、声にでた。
人の言葉に傷つき、たおれることを恐れて、居心地のいい屋敷にひきこもり、優しい人たちに囲まれて、自分だけぬくぬくと生きてきたことが猛烈に恥ずかしくなってしまった。
ふたりの学園での姿を見て、二日間も気を失うほどショックを受けて気づいたのは、私はアーノルドのことが本当に好きだったってこと。
離れることは身を切るほどに辛いし、まだ、想像もできないけれど、アーノルドの気持ちを犠牲にして、私にしばりつけるなんて絶対に嫌だから。
アーノルドも、もちろんメアリー姉様にも幸せになってほしい。
大好きなふたりのために、自分にできることはなんなのか……。
私は一晩、たっぷり泣いて、そして、覚悟を決めた。
ベイリ国でたおれた時、目が覚めるなり、「おなかがすいた」と言った私。
レベッカ先生は、魔力を一気につくりだしたからおなかがすくのかもしれないわね、と興味深そうに言っていたっけ。
しかも、今回は二日間もねむっていたせいか、今まで以上に、おなかがすいている。
アーノルドとメアリー姉さまの姿を思い出すと胸が苦しくなって、食べてる場合ではないと思うのに、おなかはぐーぐーと鳴る。
心は悲しんでいるのに、それを打ち負かす食欲……。
15歳の女の子としては、なんだか、むなしくなってしまう。
複雑な気持ちで落ち込む私の前に、ルイーズが食事を運んできてくれた。
屋敷で働いていてくれているみんなは、この厄介な私の体質を熟知している。
もちろん、料理長のドノバンさんもだ。
ということで、私の目の前には普段の3倍くらいの量の食事がずらりと並んだ。
しかも、私の大好きなお料理だらけ。
まずはおなかを満たさないと何も考えられない。
ドノバンさんの用意してくれたごちそうを、私は夢中で食べ始めた。
◇ ◇ ◇
おなかが満たされると、不思議と荒れていた心も少しだけおちついた。
ちゃんとこれからのことを考えなきゃ……。
大好きなアーノルドとメアリー姉様が私のせいで苦しんでいるのなら、このまま知らなかったふりをして逃げるわけにはいかない。
ずっと屋敷にひきこもっていた私に、いつも優しく寄り添ってくれていたふたりなんだから。
メアリー姉様に初めて会ったのは5年前。
私が10歳、メアリー姉さまが13歳の時だった。
遠い親戚で、お父様と仕事でかかわりのあったジリアン伯爵様が娘のメアリー姉様を連れて、屋敷をたずねてきた。
ジリアン伯爵様がお父様とお仕事の話をしている間、メアリー姉様とお茶をすることになったのよね。
そのころの私は、今よりもっと、見知らぬ女の子には警戒していた。
初めてたおれた時もそうだったけれど、その後もたおれる時は、同年代の女の子の言葉や態度に傷つくことが多かったから。
警戒しすぎて上手く言葉がでてこない私に、メアリー姉様はやさしく、根気強く、にこにこしながら話をしてくれた。
優しくて、明るくて、しっかりしていて、こんな素敵な人が私のお姉さまだったらいいのにって思った。
お茶が終わるころには、警戒心はすっかり消えさり、あこがれる気持ちでいっぱいになっていた。
私は思いきって、「メアリー姉様」と呼ばせて欲しいとお願いしてみた。
すると、「妹ができたみたいで嬉しい」と言ってくれて、とても嬉しかったな。
それから、メアリー姉さまは時々、遊びにきてくれるようになった。
私のお誕生日を祝う食事会には、アーノルドとメアリー姉様を招待した。
ともだちのいない私がよびたいのは、アーノルドとメアリー姉様だけだったから。
大好きなふたりに祝ってもらって、はしゃいでいた自分を思いだすと、また、胸がずきりと痛む。
物心ついた時から私の婚約者だったアーノルド。
というのも、アーノルドのお父様であるキングス公爵様はお父様と親友で婚約はすぐに決まったみたい。
つまり、アーノルドの意思とは関係なく結ばれた婚約。
私にとったら、幸運なことだったけれど。
金色のさらさらとした髪はおひさまの光を集めたようで、青い瞳は晴れ渡った空みたいなアーノルド。
そばにいると、陽だまりにいるように心がほわっとあたたかくなった。
お母様を思って寂しかった時も、たおれてしまって不安におちいった時も、いつだって、アーノルドがとんできてくれた。
いつのまにか、アーノルドがそばにいてくれることを当たり前のように思ってしまうほど、私はアーノルドに甘えてしまっていたんだよね。
アーノルドが誠実でものすごく優しいことを、私はよく知っている。
人の言葉で傷ついて、すぐにたおれてしまうような、よわよわで頼りない婚約者である私を放っておけなかったんだと思う。
そこまで考えたら、
「あー、わたしって、本当にダメだ……!」
と、思わず、声にでた。
人の言葉に傷つき、たおれることを恐れて、居心地のいい屋敷にひきこもり、優しい人たちに囲まれて、自分だけぬくぬくと生きてきたことが猛烈に恥ずかしくなってしまった。
ふたりの学園での姿を見て、二日間も気を失うほどショックを受けて気づいたのは、私はアーノルドのことが本当に好きだったってこと。
離れることは身を切るほどに辛いし、まだ、想像もできないけれど、アーノルドの気持ちを犠牲にして、私にしばりつけるなんて絶対に嫌だから。
アーノルドも、もちろんメアリー姉様にも幸せになってほしい。
大好きなふたりのために、自分にできることはなんなのか……。
私は一晩、たっぷり泣いて、そして、覚悟を決めた。
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