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隠されていたこと (アーノルド視点)
※ 今回はアーノルド視点になります。
隠し部屋の中に聞こえてくる、メアリー嬢の声。
もしかして、メアリー嬢に似た声の別人がしゃべっているのか?
そう思うほど、聞こえてくる言葉のすべてが信じられなかった。
言葉にしなくても、僕の気持ちが痛いほどわかる……?
僕と思いあっている……?
全くの嘘だ。
何故、メアリー嬢は真実を言わない?
何故、嘘ばかりついているんだ?
僕がメアリー嬢にひかれたことなんて、一度たりともない。
そんなことを思わせる態度をとったつもりもない。
思い返しても、メアリー嬢と話すのはいつだってアンジェのことだけだった。
アンジェを守る同志のように思い、信じてはいたが、メアリー嬢本人にはなんの興味もなかった。
それなのに、メアリー嬢がまさか、こんなことを言いだすなんて信じられない。
いや、僕がメアリー嬢という人間をまるでわかっていなかったということか……。
顔を見ず、声だけが聞こえてくるこの状況だと、メアリー嬢の声が演技がかっていることがはっきりとわかる。
もちろん、メアリー嬢自身が信用ならない存在であることも。
卑怯な令嬢……メアリー嬢をそう言いきった母の言葉が頭をまわる。
僕が馬鹿だった……!
僕は一体何を見て、メアリー嬢を信用できると思ったのか……。
母の言っていたとおり、僕の目はくもっていた。
いや、違う。もっとひどいか。
くもるどころか、何も見えていなかったのも同然だ……。
アンジェを守ると言いながら、こんな嘘をつくような人間の提案にのり、結果的にアンジェを傷つけてしまったのだから。
愚かな自分への怒りでどうにかなりそうだ。
「聞こえたでしょ? 今度はあなたの番よ。出てきて、はっきりさせなさい」
と、本棚の向こうから僕へよびかけてきた母。
僕は本棚を押して、応接室へとでていった。
「え……、アーノルド様!? 体調が悪くて今日はいらっしゃらないって、ドルトン公爵様がおっしゃってたのに……、なぜ……!? あ、いつからそこに……!?」
メアリー嬢がぎょっとしたように僕を見る。
が、答える気もおこらない。
「メアリーさん。アーノルドは、ずっとあの隠し部屋で、今、あなたが話していたことを聞いていたのよ」
黙ったままの僕にかわって、母がメアリー嬢に告げた。
「は……? 隠し部屋……!? そんな、嘘でしょ? あ、もしかして……、最初から私をだましていたんですかっ!?」
と、メアリー嬢が母に向かって叫んだ。
その顔は、僕が普段見ていた穏やかなメアリー嬢とは全くの別人で、醜悪なものだった。
これが彼女の真の姿なのか……?
こんな人間を僕は信じて、アンジェのそばにいることを見逃していたのか……?
怒りと悔しさで、目の前が真っ暗になる。
「……それで、アーノルド、あなたの言い分は?」
母の声で、我に返った。
正直、メアリー嬢を視界にいれることすらしたくないが、自分の見ぬけなかったことを確認しておかねばならない。
「メアリー嬢……。何故、噂が本当だと嘘をついた……? 君は言ってくれただろう? アンジェを守るために、アンジェに敵意が向かないために、噂をそのままにしておこうと……。それなのに、アンジェを心配する気持ちも全部嘘だったのか!?」
「違います、アーノルド様! 私はアンジェリンさんが心配で、アンジェリンさんに敵意がむかないよう、噂をそのままにしておきましょうと言ったんです! 全部、アンジェリンさんのためなんです! 信じて、アーノルド様!」
必死な形相で言いつのるメアリー嬢の全てが嘘っぽい。
「アンジェのため……!? それなら、学園でながれた噂が本当だと、なぜ、嘘をついた!?」
「それは嘘じゃないから! だって、これから本当になることだから! アーノルド様だって、私のことを憎からず思ってくだっさっているはずです! だって、他の女子生徒たちとは距離をおくのに、私にだけは優しく接してくれてるもの!」
は……?
これから本当になるから、嘘じゃないだと……!?
なに訳の分からないことを言ってるんだ!?
「メアリー嬢に特別な感情などない! ……ただ、僕は信用していた。それは、君がアンジェの友達だったからだ」
「違います! アーノルド様は自分の本当の気持ちに気づいていないだけなんです! ちゃんと私を見てください! 体の弱いアンジェリンさんのことばかり心配していたけれど、それは妹を思うようなものなんです! それに、アンジェリンさんとはもう婚約は解消されたのだから、これから、私と……」
それ以上、聞いていられず、僕はにぎりしめたこぶしを壁にたたきつけた。
メアリー嬢がおびえたような顔であとずさる。
「アンジェが妹……!? 僕はアンジェを愛してる! アンジェは僕のすべてなんだ! 君に……君に、僕の気持ちのなにがわかる!? 勝手なことを言わないでくれっ!」
僕は、ありったけの声で叫んだ。
が、今更、アンジェへの気持ちを叫んでも遅い……。
アンジェを傷つけてしまった僕は、アンジェのそばにいる資格はない。
アンジェ……、ごめん……。
僕のせいで傷つけて本当にごめん……。
静まりかえった応接室の中、ドルトン公爵様が口を開いた。
「メアリー嬢……。たとえ、君がアーノルド君に近づくためにアンジェを利用したとしても、アンジェは君といて本当に楽しそうだったよ。長い間、アンジェと仲良くしてくれたことには礼を言う。……だが、金輪際、アンジェには近づかないでくれ」
静かだけれど怒りに満ちたその声が、自分の心にもずっしりと響いた。
僕はもうアンジェのそばにはいられないんだ、と……。
※ 読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方々、本当にありがとうございます!
沢山のお気に入り登録、いいね、エールもとても嬉しく、励まされております!
隠し部屋の中に聞こえてくる、メアリー嬢の声。
もしかして、メアリー嬢に似た声の別人がしゃべっているのか?
そう思うほど、聞こえてくる言葉のすべてが信じられなかった。
言葉にしなくても、僕の気持ちが痛いほどわかる……?
僕と思いあっている……?
全くの嘘だ。
何故、メアリー嬢は真実を言わない?
何故、嘘ばかりついているんだ?
僕がメアリー嬢にひかれたことなんて、一度たりともない。
そんなことを思わせる態度をとったつもりもない。
思い返しても、メアリー嬢と話すのはいつだってアンジェのことだけだった。
アンジェを守る同志のように思い、信じてはいたが、メアリー嬢本人にはなんの興味もなかった。
それなのに、メアリー嬢がまさか、こんなことを言いだすなんて信じられない。
いや、僕がメアリー嬢という人間をまるでわかっていなかったということか……。
顔を見ず、声だけが聞こえてくるこの状況だと、メアリー嬢の声が演技がかっていることがはっきりとわかる。
もちろん、メアリー嬢自身が信用ならない存在であることも。
卑怯な令嬢……メアリー嬢をそう言いきった母の言葉が頭をまわる。
僕が馬鹿だった……!
僕は一体何を見て、メアリー嬢を信用できると思ったのか……。
母の言っていたとおり、僕の目はくもっていた。
いや、違う。もっとひどいか。
くもるどころか、何も見えていなかったのも同然だ……。
アンジェを守ると言いながら、こんな嘘をつくような人間の提案にのり、結果的にアンジェを傷つけてしまったのだから。
愚かな自分への怒りでどうにかなりそうだ。
「聞こえたでしょ? 今度はあなたの番よ。出てきて、はっきりさせなさい」
と、本棚の向こうから僕へよびかけてきた母。
僕は本棚を押して、応接室へとでていった。
「え……、アーノルド様!? 体調が悪くて今日はいらっしゃらないって、ドルトン公爵様がおっしゃってたのに……、なぜ……!? あ、いつからそこに……!?」
メアリー嬢がぎょっとしたように僕を見る。
が、答える気もおこらない。
「メアリーさん。アーノルドは、ずっとあの隠し部屋で、今、あなたが話していたことを聞いていたのよ」
黙ったままの僕にかわって、母がメアリー嬢に告げた。
「は……? 隠し部屋……!? そんな、嘘でしょ? あ、もしかして……、最初から私をだましていたんですかっ!?」
と、メアリー嬢が母に向かって叫んだ。
その顔は、僕が普段見ていた穏やかなメアリー嬢とは全くの別人で、醜悪なものだった。
これが彼女の真の姿なのか……?
こんな人間を僕は信じて、アンジェのそばにいることを見逃していたのか……?
怒りと悔しさで、目の前が真っ暗になる。
「……それで、アーノルド、あなたの言い分は?」
母の声で、我に返った。
正直、メアリー嬢を視界にいれることすらしたくないが、自分の見ぬけなかったことを確認しておかねばならない。
「メアリー嬢……。何故、噂が本当だと嘘をついた……? 君は言ってくれただろう? アンジェを守るために、アンジェに敵意が向かないために、噂をそのままにしておこうと……。それなのに、アンジェを心配する気持ちも全部嘘だったのか!?」
「違います、アーノルド様! 私はアンジェリンさんが心配で、アンジェリンさんに敵意がむかないよう、噂をそのままにしておきましょうと言ったんです! 全部、アンジェリンさんのためなんです! 信じて、アーノルド様!」
必死な形相で言いつのるメアリー嬢の全てが嘘っぽい。
「アンジェのため……!? それなら、学園でながれた噂が本当だと、なぜ、嘘をついた!?」
「それは嘘じゃないから! だって、これから本当になることだから! アーノルド様だって、私のことを憎からず思ってくだっさっているはずです! だって、他の女子生徒たちとは距離をおくのに、私にだけは優しく接してくれてるもの!」
は……?
これから本当になるから、嘘じゃないだと……!?
なに訳の分からないことを言ってるんだ!?
「メアリー嬢に特別な感情などない! ……ただ、僕は信用していた。それは、君がアンジェの友達だったからだ」
「違います! アーノルド様は自分の本当の気持ちに気づいていないだけなんです! ちゃんと私を見てください! 体の弱いアンジェリンさんのことばかり心配していたけれど、それは妹を思うようなものなんです! それに、アンジェリンさんとはもう婚約は解消されたのだから、これから、私と……」
それ以上、聞いていられず、僕はにぎりしめたこぶしを壁にたたきつけた。
メアリー嬢がおびえたような顔であとずさる。
「アンジェが妹……!? 僕はアンジェを愛してる! アンジェは僕のすべてなんだ! 君に……君に、僕の気持ちのなにがわかる!? 勝手なことを言わないでくれっ!」
僕は、ありったけの声で叫んだ。
が、今更、アンジェへの気持ちを叫んでも遅い……。
アンジェを傷つけてしまった僕は、アンジェのそばにいる資格はない。
アンジェ……、ごめん……。
僕のせいで傷つけて本当にごめん……。
静まりかえった応接室の中、ドルトン公爵様が口を開いた。
「メアリー嬢……。たとえ、君がアーノルド君に近づくためにアンジェを利用したとしても、アンジェは君といて本当に楽しそうだったよ。長い間、アンジェと仲良くしてくれたことには礼を言う。……だが、金輪際、アンジェには近づかないでくれ」
静かだけれど怒りに満ちたその声が、自分の心にもずっしりと響いた。
僕はもうアンジェのそばにはいられないんだ、と……。
※ 読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方々、本当にありがとうございます!
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