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ふたりだけの秘密 (メアリー視点)
高等部に入ったころ、ついに努力が実り、私はアーノルド様のいる生徒会に入ることができた。
思ったとおり、アーノルド様と会える機会が増えたため、自然に見えるよう、さりげなく話しかけてみる。
といっても、アーノルド様に警戒されないよう、話題は全てアンジェリンのこと。
アンジェリンをほめると、アーノルド様は嬉しそうに微笑む。
でも、そんなことは他の生徒たちは知らない。
微笑みながら私と話をするアーノルド様を見て、私とアーノルド様の仲を噂する女子生徒たちがでてきた。
女子生徒たちにアーノルド様との関係を面とむかって聞かれたときは、口では否定しながらも、ごまかすように恥ずかしがってみせると、おもしろいほど噂はひろがっていく。
私とアーノルド様は相思相愛なのに、アーノルド様には政略の婚約者がいて悲恋だと噂されるようになるのに時間はかからなかった。
全部、私の狙いどおり。
アーノルド様に早く近づきたい気持ちを抑えて、アンジェリンと仲良くしてきた甲斐があった。
慎重に準備してきたことが、やっと、やっと、目に見えて動き出したんだもの。
私たちの噂を聞きつけたアーノルド様。
「メアリー嬢に迷惑をかけてすまない。耳にしたときは、その都度、否定してまわっているが、なかなか噂が消えなくて……」
と申し訳なさそうに私に謝ってきた時、私はチャンスだと思ったわ。
だから、私はアーノルド様にひとつ提案をした。
私の本心をさとられないよう、細心の注意を払いながら。
「私のことはお気になさらないでください。……それより、アーノルド様。その噂は好都合かもしれません」
「好都合?」
「ええ、もちろん、アンジェリンさんのためにです。アーノルド様は、とても女子生徒たちに人気がありますよね? かなりしつこく言い寄ってくる女子生徒たちもいて、困っていらっしゃるのではありませんか?」
アーノルド様の端正な顔に影がさした。
数人の女子生徒たちにつきまとわれて、嫌がっているアーノルド様を何度も見かけたことがある。
身の程しらずで図々しい女子生徒たちのことは私も鬱陶しいと思っていたけれど、まさか、こんな風に役立ってくれるとはね。
「ああ、そうだ……」
苦々しく答えたアーノルド様。
「あれほどしつこい女子生徒たちなら、アーノルド様の婚約者であるアンジェリンさんに敵意をもっていることでしょう。もちろん、アンジェリンさんはめったに外にでないから会うことはないと思いますが、万が一ということもあります。でも、あの噂をそのままにしておけば、あの女子生徒たちの敵意は私に向く。ここにはいないアンジェリンさんから敵意をそらせます」
まあ、あの令嬢たちがどれだけアンジェリンを疎ましく思っても、ドルトン公爵家に対して何かしたら終わりだし、まず、アンジェリンに近づくことすらできない。
つまり、まったく無意味な提案なのだけれど、アーノルド様がのってくるかどうかは私の賭け。
普段は優秀で冷静なアーノルド様だけれど、アンジェリンのこととなると心配しすぎて、冷静さを欠く。
見ていて腹立たしくなるほど過保護になるから。
そんな様子をみるたび、体の弱さでアーノルド様の気をひいているアンジェリンをずるいと思ってきた。
でも、今回はそこを利用する。
アンジェリンに害をなすかもしれないといえば、アーノルド様はこの提案にのってくるはず。
私は祈るような気持ちでアーノルド様の反応を待った。
「……だが、それだとメアリー嬢にとったら不都合でしかないだろう?」
のってきたわ!
私は、善良な令嬢に見られる得意の笑みを浮かべて、アーノルド様に言った。
「いえ、そんなことはありませんわ! 体の弱いアンジェリンさんには、少しでも安全にいてほしいから、そのために、私ができることがあるのならやりたいんです。アンジェリンさんのことは、本当の妹みたいに大事に思ってるから……。それに、噂を作って流すわけでもなく、ただ、そのままにしておくだけのことですから。もしあの女子生徒たちが何かしてきたら、学園に対処してもらいます。だから、私のことはお気になさらないでくださいね」
「アンジェのことをそこまで大事に思ってくれて感謝する。ありがとう」
まっすぐに私を見つめて、お礼を言ったアーノルド様。
これが、アンジェリンのことじゃなかったら、どれだけ嬉しいか……。
でも、こうして、私とアーノルド様だけの秘密ができた。
アンジェリンは知らないふたりだけの秘密だと思うと、心がうきたった。
思ったとおり、アーノルド様と会える機会が増えたため、自然に見えるよう、さりげなく話しかけてみる。
といっても、アーノルド様に警戒されないよう、話題は全てアンジェリンのこと。
アンジェリンをほめると、アーノルド様は嬉しそうに微笑む。
でも、そんなことは他の生徒たちは知らない。
微笑みながら私と話をするアーノルド様を見て、私とアーノルド様の仲を噂する女子生徒たちがでてきた。
女子生徒たちにアーノルド様との関係を面とむかって聞かれたときは、口では否定しながらも、ごまかすように恥ずかしがってみせると、おもしろいほど噂はひろがっていく。
私とアーノルド様は相思相愛なのに、アーノルド様には政略の婚約者がいて悲恋だと噂されるようになるのに時間はかからなかった。
全部、私の狙いどおり。
アーノルド様に早く近づきたい気持ちを抑えて、アンジェリンと仲良くしてきた甲斐があった。
慎重に準備してきたことが、やっと、やっと、目に見えて動き出したんだもの。
私たちの噂を聞きつけたアーノルド様。
「メアリー嬢に迷惑をかけてすまない。耳にしたときは、その都度、否定してまわっているが、なかなか噂が消えなくて……」
と申し訳なさそうに私に謝ってきた時、私はチャンスだと思ったわ。
だから、私はアーノルド様にひとつ提案をした。
私の本心をさとられないよう、細心の注意を払いながら。
「私のことはお気になさらないでください。……それより、アーノルド様。その噂は好都合かもしれません」
「好都合?」
「ええ、もちろん、アンジェリンさんのためにです。アーノルド様は、とても女子生徒たちに人気がありますよね? かなりしつこく言い寄ってくる女子生徒たちもいて、困っていらっしゃるのではありませんか?」
アーノルド様の端正な顔に影がさした。
数人の女子生徒たちにつきまとわれて、嫌がっているアーノルド様を何度も見かけたことがある。
身の程しらずで図々しい女子生徒たちのことは私も鬱陶しいと思っていたけれど、まさか、こんな風に役立ってくれるとはね。
「ああ、そうだ……」
苦々しく答えたアーノルド様。
「あれほどしつこい女子生徒たちなら、アーノルド様の婚約者であるアンジェリンさんに敵意をもっていることでしょう。もちろん、アンジェリンさんはめったに外にでないから会うことはないと思いますが、万が一ということもあります。でも、あの噂をそのままにしておけば、あの女子生徒たちの敵意は私に向く。ここにはいないアンジェリンさんから敵意をそらせます」
まあ、あの令嬢たちがどれだけアンジェリンを疎ましく思っても、ドルトン公爵家に対して何かしたら終わりだし、まず、アンジェリンに近づくことすらできない。
つまり、まったく無意味な提案なのだけれど、アーノルド様がのってくるかどうかは私の賭け。
普段は優秀で冷静なアーノルド様だけれど、アンジェリンのこととなると心配しすぎて、冷静さを欠く。
見ていて腹立たしくなるほど過保護になるから。
そんな様子をみるたび、体の弱さでアーノルド様の気をひいているアンジェリンをずるいと思ってきた。
でも、今回はそこを利用する。
アンジェリンに害をなすかもしれないといえば、アーノルド様はこの提案にのってくるはず。
私は祈るような気持ちでアーノルド様の反応を待った。
「……だが、それだとメアリー嬢にとったら不都合でしかないだろう?」
のってきたわ!
私は、善良な令嬢に見られる得意の笑みを浮かべて、アーノルド様に言った。
「いえ、そんなことはありませんわ! 体の弱いアンジェリンさんには、少しでも安全にいてほしいから、そのために、私ができることがあるのならやりたいんです。アンジェリンさんのことは、本当の妹みたいに大事に思ってるから……。それに、噂を作って流すわけでもなく、ただ、そのままにしておくだけのことですから。もしあの女子生徒たちが何かしてきたら、学園に対処してもらいます。だから、私のことはお気になさらないでくださいね」
「アンジェのことをそこまで大事に思ってくれて感謝する。ありがとう」
まっすぐに私を見つめて、お礼を言ったアーノルド様。
これが、アンジェリンのことじゃなかったら、どれだけ嬉しいか……。
でも、こうして、私とアーノルド様だけの秘密ができた。
アンジェリンは知らないふたりだけの秘密だと思うと、心がうきたった。
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