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番外編
ある子息の初恋 9
メアリーをかばうように前に立ったぼくを見て、笑いだしたロワルダ伯爵だったが、すぐに笑いをひっこめた。
「笑ってしまってすまない……。ジョイス君がメアリー嬢の騎士みたいで微笑ましくてね。なんだか、急にたくましくなったな、ジョイス君」
ロワルダ伯爵は僕に優しい笑みを見せると、背後にいるメアリーに向かって話しかけた。
「メアリー嬢、気を悪くしたら申し訳ない。やはり、親友の息子となると心配でね。つい、嫁を見定める舅の気持ちになってしまったよ。ジョイス君を勝手に心配する、おせっかいな親戚の叔父くらいに思って、許してほしい」
ロワルダ伯爵の言葉に、メアリーが僕の背後からすっと前にでると、僕の隣に並んだ。
「ロワルダ伯爵様、気を悪くなんてしておりません。むしろ、私は心強いですわ。ジョイスのことをそんなに心配してくださる方がいてくださって」
「ありがとう、メアリー嬢。それにしても、本当にしっかりしたご令嬢だ。小難しいところがあるビクトル……いや、ゴラン子爵がメアリー嬢の優秀さに感心して褒めていたが、わかる気がするよ」
「まあ……ありがとうございます」
恥ずかしそうに微笑むメアリー。
そんなメアリーを見て、思わず顔がゆるむ。
ロワルダ伯爵がふっと微笑んだ。
「ふたりがこれからもずっと仲睦まじくいられることを心から願ってるよ。……それと、ジョイス君の父から、君たちは、これから色々な夜会にでると聞いている。今日が最初なんだってね。ふたりの門出が見られたみたいで光栄だよ。今日の夜会は私の気心の知れた招待客ばかりで、良い人たちだ。なにも気負うことはないからね。練習だと思って、気楽に楽しんでいってほしい。じゃあ、また、あとで」
そう言うと、ロワルダ伯爵は到着したばかりの招待客のほうへと歩いていった。
◇ ◇ ◇
思った以上に招待客は多く、にぎやかな雰囲気で夜会は始まった。
先に来ていた父とローラさんと合流したあと、ふたりと一緒に挨拶にまわることになった。
最初は、メアリーが嫌な思いをしないようにと挨拶をするたび警戒していたけれど、みんな、好意的な態度で接してくれる人たちばかりで、メアリーに対して特に気になるような態度をとる人もいなかった。
そして、何事もなく、挨拶まわりがおわると、父とローラさんとは別行動をすることになった。
とりあえず、今日のところは大丈夫そうだ。
安心したら、やっとまわりを見る余裕ができた。
広間の一角に飲み物や食べ物が用意されているのが見える。
そういえば、ローラさんがロワルダ伯爵の夜会は立食で、軽食が用意されていると言っていた。
緊張していたのか、自分ののどがからからなことに気がついた。
「メアリー、あっちに食べ物や飲み物があるよ。僕は飲み物が欲しいんだけど、メアリーはどう?」
「今はいらないわ。ここで待ってるから、ジョイス、行ってきて」
「わかった。じゃあ、少しだけ待ってて」
僕はそう言うと、メアリーから離れた。
飲み物を給仕係の人から受け取り、すぐにメアリーのところに戻ろうとしたら、メアリーが広間の入口のほうに顔をむけているのが見えた。
なんだか、じっと見ているような気がして、その視線の先を追った。
すると、遅れてきた招待客が執事の人に案内されて入ってきたところだった。
背の高い若い男性で、遠目で見ても金色の髪が輝いている。
記憶の中にある人物が、まざまざと思い起こされる。
まさか、彼なのか……!?
が、よく見ると、全く知らない人だった。
ほっとしたと同時に、メアリーの視線が気になって、あわてて、メアリーにかけよった。
「メアリー!」
僕が声をかけると、メアリーが僕のほうを見て、にっこり微笑んだ。
「あら、ジョイス。はやかったわね?」
「メアリー、あっちのほうを見てたけど、何か気になることでもあった……?」
「いえ、特に、なにもないわ……。挨拶がおわったら気が抜けてしまって、ぼんやりしてただけよ」
そう言って微笑んだメアリーは、いつものメアリーだった。
良かった。
僕の思い過ごしか……。
それにしても、情けないな。
あの髪色を見て彼を思い出し、ぼんやりしていただけのメアリーの視線を特別な視線に感じてしまうなんて。
メアリーの過去にとらわれているのは僕のほうだ。
そんな不甲斐ない自分を流し去るように、僕はもらってきた飲み物を一気に流し込んだ。
※ 不定期な更新で読みづらいかと思いますが、読んでくださっている方々、本当にありがとうございます!
お気に入り登録、いいね、エールも、とても嬉しく、励まされております!
本当にありがとうございます!!
「笑ってしまってすまない……。ジョイス君がメアリー嬢の騎士みたいで微笑ましくてね。なんだか、急にたくましくなったな、ジョイス君」
ロワルダ伯爵は僕に優しい笑みを見せると、背後にいるメアリーに向かって話しかけた。
「メアリー嬢、気を悪くしたら申し訳ない。やはり、親友の息子となると心配でね。つい、嫁を見定める舅の気持ちになってしまったよ。ジョイス君を勝手に心配する、おせっかいな親戚の叔父くらいに思って、許してほしい」
ロワルダ伯爵の言葉に、メアリーが僕の背後からすっと前にでると、僕の隣に並んだ。
「ロワルダ伯爵様、気を悪くなんてしておりません。むしろ、私は心強いですわ。ジョイスのことをそんなに心配してくださる方がいてくださって」
「ありがとう、メアリー嬢。それにしても、本当にしっかりしたご令嬢だ。小難しいところがあるビクトル……いや、ゴラン子爵がメアリー嬢の優秀さに感心して褒めていたが、わかる気がするよ」
「まあ……ありがとうございます」
恥ずかしそうに微笑むメアリー。
そんなメアリーを見て、思わず顔がゆるむ。
ロワルダ伯爵がふっと微笑んだ。
「ふたりがこれからもずっと仲睦まじくいられることを心から願ってるよ。……それと、ジョイス君の父から、君たちは、これから色々な夜会にでると聞いている。今日が最初なんだってね。ふたりの門出が見られたみたいで光栄だよ。今日の夜会は私の気心の知れた招待客ばかりで、良い人たちだ。なにも気負うことはないからね。練習だと思って、気楽に楽しんでいってほしい。じゃあ、また、あとで」
そう言うと、ロワルダ伯爵は到着したばかりの招待客のほうへと歩いていった。
◇ ◇ ◇
思った以上に招待客は多く、にぎやかな雰囲気で夜会は始まった。
先に来ていた父とローラさんと合流したあと、ふたりと一緒に挨拶にまわることになった。
最初は、メアリーが嫌な思いをしないようにと挨拶をするたび警戒していたけれど、みんな、好意的な態度で接してくれる人たちばかりで、メアリーに対して特に気になるような態度をとる人もいなかった。
そして、何事もなく、挨拶まわりがおわると、父とローラさんとは別行動をすることになった。
とりあえず、今日のところは大丈夫そうだ。
安心したら、やっとまわりを見る余裕ができた。
広間の一角に飲み物や食べ物が用意されているのが見える。
そういえば、ローラさんがロワルダ伯爵の夜会は立食で、軽食が用意されていると言っていた。
緊張していたのか、自分ののどがからからなことに気がついた。
「メアリー、あっちに食べ物や飲み物があるよ。僕は飲み物が欲しいんだけど、メアリーはどう?」
「今はいらないわ。ここで待ってるから、ジョイス、行ってきて」
「わかった。じゃあ、少しだけ待ってて」
僕はそう言うと、メアリーから離れた。
飲み物を給仕係の人から受け取り、すぐにメアリーのところに戻ろうとしたら、メアリーが広間の入口のほうに顔をむけているのが見えた。
なんだか、じっと見ているような気がして、その視線の先を追った。
すると、遅れてきた招待客が執事の人に案内されて入ってきたところだった。
背の高い若い男性で、遠目で見ても金色の髪が輝いている。
記憶の中にある人物が、まざまざと思い起こされる。
まさか、彼なのか……!?
が、よく見ると、全く知らない人だった。
ほっとしたと同時に、メアリーの視線が気になって、あわてて、メアリーにかけよった。
「メアリー!」
僕が声をかけると、メアリーが僕のほうを見て、にっこり微笑んだ。
「あら、ジョイス。はやかったわね?」
「メアリー、あっちのほうを見てたけど、何か気になることでもあった……?」
「いえ、特に、なにもないわ……。挨拶がおわったら気が抜けてしまって、ぼんやりしてただけよ」
そう言って微笑んだメアリーは、いつものメアリーだった。
良かった。
僕の思い過ごしか……。
それにしても、情けないな。
あの髪色を見て彼を思い出し、ぼんやりしていただけのメアリーの視線を特別な視線に感じてしまうなんて。
メアリーの過去にとらわれているのは僕のほうだ。
そんな不甲斐ない自分を流し去るように、僕はもらってきた飲み物を一気に流し込んだ。
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