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番外編
ある子息の初恋 16
まず最初に、国王様が今日の夜会に集まってくれたことへの感謝を述べられ、続いて、第二王子オズワルド様と王子妃リンダ様が改めて結婚の報告をされた。
招待客たちから大きな拍手がわきおこり、広間全体が喜びに包まれる。
そして、軽やかな音楽が流れ始めて、みんなが思い思いに動き始めた。
今回の主役、第二王子オズワルド様と王子妃リンダ様は、国王様と王妃様に囲まれるようにして椅子に座った。
その前には、挨拶をしようと貴族たちが列をなす。
「ゴラン子爵家としては私が挨拶にいく。いいか。おまえはメアリー嬢とここにいろ」
父が小声で僕に釘をさすと、ローラさんと共に広間の奥に向かって歩いていった。
「ジョイス。私たちもご挨拶に行ったほうがいいんじゃない?」
メアリーが王家の方々がいるあたりを見ながら、僕に聞いてきた。
「あんなに沢山並んでいるし、父が代表で挨拶すれば十分だよ」
「挨拶はすぐに終わるから、それほど待たなくてもいいみたいよ。やっぱり、頃合いをみて、私たちもご挨拶したほうがいいんじゃないかしら……」
僕にむかってそう言いながら、メアリーの視線はじっと奥を見つめたままだ。
確かに、メアリーが言うことはもっともだ。
だけど、心がざわつく。
メアリーがやけに熱心に、そして、思いつめたような表情で、あのあたりを見ている気がするから。
もしかして、メアリーはアーノルド様を探しているんだろうか……?
その可能性が否定できなくて、一気に不安がふくれあがる。
でも、大丈夫だ。
アーノルド様は夜会には参加されない。
メアリーがアーノルド様の姿を目にすることはない。
僕が不安に思うことはなにもない。
そう自分に言い聞かせた。
今もまだ、挨拶に行きたそうに広間の奥をじっと見続けるメアリー。
アーノルド様はいないにしても、公爵家の方たちはあのあたりにいるだろう。
今まで社交をしてこなかった僕は、だれが公爵様なのかもわからないけれど。
メアリーは噂は事実ではない、自分は何も悪いことはしていないと言っていたから、公爵家の方たちに会うことを気にしてはいないようだ。
でも、向こうは平気ではないかもしれない。
正直、メアリーから公爵家のことを聞いたことはないから、想像することしかできない。
僕が自分の目で見て、知っている事実は、学園時代、メアリーがアーノルド様にひかれていたことだけ。
わからない以上、用心のためにも、父が言っていたように、公爵家の方たちがいるだろうところから十分に距離をとったほうがいい。
つまり、広間の奥にいき、列に並んで王族に挨拶をするなんて危険すぎる。
どう言って、メアリーをここにとどまらせておこうか……。
そう考えた時だった。
見覚えのある年配の女性が近くにいることに気がついた。
何回か夜会で一緒になったブルーノ子爵夫人だ。
気さくな方で、夜会に慣れていない僕たちに率先して声をかけてくれた。
メアリーとも話が弾んでいた。
ちょうどいい!
「メアリー、ブルーノ子爵夫人があそこにいるよ」
「あら、本当。挨拶に行きましょう」
そう言って、微笑んだメアリー。
いつもの顔に戻っている。
良かった……。
メアリーの意識がそれた。
世話好きのブルーノ子爵夫人のおかげで、ブルーの子爵夫人の知り合いに紹介されたりしながら、なごやかに、そして無難にすごしていると、わあっと歓声があがった。
壇上からおりてきたオズワルド様とリンダ様がフロアの中心に立った。
どうやら、ファーストダンスを踊るようだ。
ふたりの優雅なダンスにみんなが静まり返る。
踊り終わった途端、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
そして、他の招待客たちも、次々とフロアにでて踊り始めた。
かわりに、オズワルド様とリンダ様はダンスをやめて、歩き始める。
「まあ! オズワルド様とリンダ様が広間をまわられるみたいね! 足を痛めているので、ご挨拶の列に並ぶのは遠慮していたのだけれど、こちらまで来ていただけるのなら、ご挨拶ができるわ!」
ブルーノ子爵夫人が嬉しそうに声をあげた。
オズワルド様とリンダ様は移動しながら、招待客に声をかけているのか、あちこちで楽しそうな歓声があがる。
おふたりはこちらの方に向かってきている。
もちろん、ここまでこられたら、挨拶をしないといけない。
広間の奥にいくわけではないから、挨拶をすること自体は問題がない。
でも、そうなると、ひとつだけ気になることがある。
僕はメアリーに聞いてみた。
「メアリーは第二王子のオズワルド様と話したことがある?」
「いえ、オズワルド様が生徒会にいらした時は、まだ私は生徒会にいなかったから。特にお話したことはないわ」
それを聞いて僕は安堵した。
学園時代、オズワルド様はアーノルド様と仲がよさそうに見えた。
キングス公爵家は王家とも縁続きだから、おそらく、今もだろう。
アーノルド様につながるオズワルド様が仮にメアリーと話をするくらいの間柄だったとしたら、今ここで、挨拶をしたら、どんな会話になるのか怖い……。
でも、学生時代、メアリーと接点がなかったのなら、オズワルド様にとって何者でもない僕の婚約者として、簡単に挨拶は終わるだろう。
そして、第二王子オズワルド様と王子妃リンダ様がこちらに近づいてきた。
僕はメアリーの手をとって、ブルーノ子爵夫人の仲間の中に紛れるような位置に連れて行くと、できるだけ目立たぬように挨拶の時を待った。
※ リアルが忙しく不定期な更新のなか、読んでくださっている方、ありがとうございます!
いいね、エール、お気に入り登録もとても嬉しく、励みにさせていただいております。
ジョイス視点はまもなく終わります。どうぞよろしくお願いします。
招待客たちから大きな拍手がわきおこり、広間全体が喜びに包まれる。
そして、軽やかな音楽が流れ始めて、みんなが思い思いに動き始めた。
今回の主役、第二王子オズワルド様と王子妃リンダ様は、国王様と王妃様に囲まれるようにして椅子に座った。
その前には、挨拶をしようと貴族たちが列をなす。
「ゴラン子爵家としては私が挨拶にいく。いいか。おまえはメアリー嬢とここにいろ」
父が小声で僕に釘をさすと、ローラさんと共に広間の奥に向かって歩いていった。
「ジョイス。私たちもご挨拶に行ったほうがいいんじゃない?」
メアリーが王家の方々がいるあたりを見ながら、僕に聞いてきた。
「あんなに沢山並んでいるし、父が代表で挨拶すれば十分だよ」
「挨拶はすぐに終わるから、それほど待たなくてもいいみたいよ。やっぱり、頃合いをみて、私たちもご挨拶したほうがいいんじゃないかしら……」
僕にむかってそう言いながら、メアリーの視線はじっと奥を見つめたままだ。
確かに、メアリーが言うことはもっともだ。
だけど、心がざわつく。
メアリーがやけに熱心に、そして、思いつめたような表情で、あのあたりを見ている気がするから。
もしかして、メアリーはアーノルド様を探しているんだろうか……?
その可能性が否定できなくて、一気に不安がふくれあがる。
でも、大丈夫だ。
アーノルド様は夜会には参加されない。
メアリーがアーノルド様の姿を目にすることはない。
僕が不安に思うことはなにもない。
そう自分に言い聞かせた。
今もまだ、挨拶に行きたそうに広間の奥をじっと見続けるメアリー。
アーノルド様はいないにしても、公爵家の方たちはあのあたりにいるだろう。
今まで社交をしてこなかった僕は、だれが公爵様なのかもわからないけれど。
メアリーは噂は事実ではない、自分は何も悪いことはしていないと言っていたから、公爵家の方たちに会うことを気にしてはいないようだ。
でも、向こうは平気ではないかもしれない。
正直、メアリーから公爵家のことを聞いたことはないから、想像することしかできない。
僕が自分の目で見て、知っている事実は、学園時代、メアリーがアーノルド様にひかれていたことだけ。
わからない以上、用心のためにも、父が言っていたように、公爵家の方たちがいるだろうところから十分に距離をとったほうがいい。
つまり、広間の奥にいき、列に並んで王族に挨拶をするなんて危険すぎる。
どう言って、メアリーをここにとどまらせておこうか……。
そう考えた時だった。
見覚えのある年配の女性が近くにいることに気がついた。
何回か夜会で一緒になったブルーノ子爵夫人だ。
気さくな方で、夜会に慣れていない僕たちに率先して声をかけてくれた。
メアリーとも話が弾んでいた。
ちょうどいい!
「メアリー、ブルーノ子爵夫人があそこにいるよ」
「あら、本当。挨拶に行きましょう」
そう言って、微笑んだメアリー。
いつもの顔に戻っている。
良かった……。
メアリーの意識がそれた。
世話好きのブルーノ子爵夫人のおかげで、ブルーの子爵夫人の知り合いに紹介されたりしながら、なごやかに、そして無難にすごしていると、わあっと歓声があがった。
壇上からおりてきたオズワルド様とリンダ様がフロアの中心に立った。
どうやら、ファーストダンスを踊るようだ。
ふたりの優雅なダンスにみんなが静まり返る。
踊り終わった途端、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
そして、他の招待客たちも、次々とフロアにでて踊り始めた。
かわりに、オズワルド様とリンダ様はダンスをやめて、歩き始める。
「まあ! オズワルド様とリンダ様が広間をまわられるみたいね! 足を痛めているので、ご挨拶の列に並ぶのは遠慮していたのだけれど、こちらまで来ていただけるのなら、ご挨拶ができるわ!」
ブルーノ子爵夫人が嬉しそうに声をあげた。
オズワルド様とリンダ様は移動しながら、招待客に声をかけているのか、あちこちで楽しそうな歓声があがる。
おふたりはこちらの方に向かってきている。
もちろん、ここまでこられたら、挨拶をしないといけない。
広間の奥にいくわけではないから、挨拶をすること自体は問題がない。
でも、そうなると、ひとつだけ気になることがある。
僕はメアリーに聞いてみた。
「メアリーは第二王子のオズワルド様と話したことがある?」
「いえ、オズワルド様が生徒会にいらした時は、まだ私は生徒会にいなかったから。特にお話したことはないわ」
それを聞いて僕は安堵した。
学園時代、オズワルド様はアーノルド様と仲がよさそうに見えた。
キングス公爵家は王家とも縁続きだから、おそらく、今もだろう。
アーノルド様につながるオズワルド様が仮にメアリーと話をするくらいの間柄だったとしたら、今ここで、挨拶をしたら、どんな会話になるのか怖い……。
でも、学生時代、メアリーと接点がなかったのなら、オズワルド様にとって何者でもない僕の婚約者として、簡単に挨拶は終わるだろう。
そして、第二王子オズワルド様と王子妃リンダ様がこちらに近づいてきた。
僕はメアリーの手をとって、ブルーノ子爵夫人の仲間の中に紛れるような位置に連れて行くと、できるだけ目立たぬように挨拶の時を待った。
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