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さあ、はじまります
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王と王妃、王太子に続いて、私の入場。
エスコートするために、入口の扉の前で、ユーリが待っていた。
衣装は濃いめのブルーで、私とそろえている。
私を見て、ほほえむユーリ。
その姿に腹黒さは微塵もなく、外向きの天使モードだ。
もう、そこだけ光がさしているほどに、まぶしい。まぶしすぎる…。
人間である私が、天使の横にたってもいいのでしょうか?
根っからの天使好きの私は、思わず、そう言いたくなった。
が、近づいた途端、夢は終わる。
「どうしたの、その髪型。気に入らないんだけど」
ユーリは眉間にしわをよせた。
「は?」
そりゃ、ユーリが私を見て、ドキドキなんてするとは思わなかったけれど、なんたるひとこと。
失礼すぎるでしょ。
にこやかな笑顔をうかべたまま、不機嫌そうな小声で、ユーリは続けた。
「今日のパーティーは、虫がいっぱいいるの。やめてよね、そんな髪型」
「虫? まあ、確かに初夏だからね。でも、中庭には、でるつもりないから大丈夫。髪あげてても、刺されないよ。変なとこ気にするね、ユーリ」
ユーリは、はあーっとため息をついた。
「…ばかかわいいけど、なんか腹立つな」
なんですって!
言い返そうと思ったら、扉が開いた。
入場だ。
あわてて、王女仕様の笑顔をはりつける。
広間の人たちの視線が、いっせいに集中する。
この瞬間、ほんと、慣れない。
王女として、14年間生きてきても、やっぱり苦手。
前世でも目立つことは苦手だったし、まず、注目されることもなかった。
なのに、毎度、毎度、見られまくりなんですけど…。
そして、隣の男はといえば、王族の私より、王族らしい。
優雅な笑みをうかべて、堂々と歩く姿は、だれよりも麗しい。
絶対知らない人が見たら、王族がユーリで、私がお付きとかだよね。
そんなユーリを見て、ざわめく集団が。
いつも私の悪口を言う、ユーリのファンたちだ。
みんな、華やかなドレスをまとっている。
今まで気にしたこともなかったけれど、それなりに、高位貴族の令嬢たち。
ということは、身分的にユーリの婚約者になるのも問題ないわね。
よし、いけるっ!
私ってば、一瞬の間に、そんなことまで頭がまわるなんてすごい!
みなさん、お待ちしてましたー!
思わずうれしくて、そちらの方にむいて、にっこりとほほえんでしまった。
フフフフフ。
令嬢たちは、なんだか、驚いた顔をしている。
不思議ね。
いつもは、意地わるそうに思えていた顔も、今日は、なんだか、みんなかわいい!
「ねえ、アデル。なにしてんの? いつにもまして変なんだけど」
ユーリが外向きの笑顔をうかべたまま、不審げにつぶやいた。
私も負けじと笑顔をはりつけたまま、答えた。
「もちろん、ご挨拶よ」
「あのあたり、いつも避けてるよね」
「そうだったかしら?」
私はとぼけてみせる。
今日の私は、大きな使命があるもの。
昨日の敵は、今日の友だったっけ?
みなさん、よろしくね~。あとで、伺うわ。
「なんか、ほんと気味悪いんだけど」
ユーリがぶつぶつ言っているが、無視だ。
そして、私は王族の席に着席した。
正式な婚約者だけれど、ユーリはここで離れ、公爵家の席に座る。
おっ、マルクも来てる。
なんだか、捨てられた子犬のような顔で私を見てるわ。
あっ、そうか、あの真実の愛作戦失敗から、会ってなかったんだ。
大丈夫よ、マルク。もう、あなたに手伝ってもらおうとはしないから、安心して。
私は一人でやりとげるわ! 見ててね。
という、メッセージをこめて、マルクの方へ、にっこりとほほえむ。
ユーリの冷たい視線が痛いけれど、ダンスの時までは別々だ。
そして、その間が自由に動けるチャンス。
さあ、ユーリの婚約者候補探し、がんばるぞ!
エスコートするために、入口の扉の前で、ユーリが待っていた。
衣装は濃いめのブルーで、私とそろえている。
私を見て、ほほえむユーリ。
その姿に腹黒さは微塵もなく、外向きの天使モードだ。
もう、そこだけ光がさしているほどに、まぶしい。まぶしすぎる…。
人間である私が、天使の横にたってもいいのでしょうか?
根っからの天使好きの私は、思わず、そう言いたくなった。
が、近づいた途端、夢は終わる。
「どうしたの、その髪型。気に入らないんだけど」
ユーリは眉間にしわをよせた。
「は?」
そりゃ、ユーリが私を見て、ドキドキなんてするとは思わなかったけれど、なんたるひとこと。
失礼すぎるでしょ。
にこやかな笑顔をうかべたまま、不機嫌そうな小声で、ユーリは続けた。
「今日のパーティーは、虫がいっぱいいるの。やめてよね、そんな髪型」
「虫? まあ、確かに初夏だからね。でも、中庭には、でるつもりないから大丈夫。髪あげてても、刺されないよ。変なとこ気にするね、ユーリ」
ユーリは、はあーっとため息をついた。
「…ばかかわいいけど、なんか腹立つな」
なんですって!
言い返そうと思ったら、扉が開いた。
入場だ。
あわてて、王女仕様の笑顔をはりつける。
広間の人たちの視線が、いっせいに集中する。
この瞬間、ほんと、慣れない。
王女として、14年間生きてきても、やっぱり苦手。
前世でも目立つことは苦手だったし、まず、注目されることもなかった。
なのに、毎度、毎度、見られまくりなんですけど…。
そして、隣の男はといえば、王族の私より、王族らしい。
優雅な笑みをうかべて、堂々と歩く姿は、だれよりも麗しい。
絶対知らない人が見たら、王族がユーリで、私がお付きとかだよね。
そんなユーリを見て、ざわめく集団が。
いつも私の悪口を言う、ユーリのファンたちだ。
みんな、華やかなドレスをまとっている。
今まで気にしたこともなかったけれど、それなりに、高位貴族の令嬢たち。
ということは、身分的にユーリの婚約者になるのも問題ないわね。
よし、いけるっ!
私ってば、一瞬の間に、そんなことまで頭がまわるなんてすごい!
みなさん、お待ちしてましたー!
思わずうれしくて、そちらの方にむいて、にっこりとほほえんでしまった。
フフフフフ。
令嬢たちは、なんだか、驚いた顔をしている。
不思議ね。
いつもは、意地わるそうに思えていた顔も、今日は、なんだか、みんなかわいい!
「ねえ、アデル。なにしてんの? いつにもまして変なんだけど」
ユーリが外向きの笑顔をうかべたまま、不審げにつぶやいた。
私も負けじと笑顔をはりつけたまま、答えた。
「もちろん、ご挨拶よ」
「あのあたり、いつも避けてるよね」
「そうだったかしら?」
私はとぼけてみせる。
今日の私は、大きな使命があるもの。
昨日の敵は、今日の友だったっけ?
みなさん、よろしくね~。あとで、伺うわ。
「なんか、ほんと気味悪いんだけど」
ユーリがぶつぶつ言っているが、無視だ。
そして、私は王族の席に着席した。
正式な婚約者だけれど、ユーリはここで離れ、公爵家の席に座る。
おっ、マルクも来てる。
なんだか、捨てられた子犬のような顔で私を見てるわ。
あっ、そうか、あの真実の愛作戦失敗から、会ってなかったんだ。
大丈夫よ、マルク。もう、あなたに手伝ってもらおうとはしないから、安心して。
私は一人でやりとげるわ! 見ててね。
という、メッセージをこめて、マルクの方へ、にっこりとほほえむ。
ユーリの冷たい視線が痛いけれど、ダンスの時までは別々だ。
そして、その間が自由に動けるチャンス。
さあ、ユーリの婚約者候補探し、がんばるぞ!
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