天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

文字の大きさ
41 / 158

失礼しました

しおりを挟む
デュラン王子の手のひらの中心から、青白い光がではじめた。
細い線のような光が、ドーラさんの胸の中心に差し込んでいく。

これって、魔力かしら? でも、魔力って見えるものなの?!

なんて、思っている間にも、その光の線は、どんどん太くなり、手のひら全体から光がではじめた。

デュラン王子の手のひらと、ドーラさんがしっかりと光でつながっている状態。
ドーラさんは、驚いている様子だけれど、痛がったり、気持ち悪がったりはしていない。

青白い光が輝いて、とても美しくて、神秘的…。
私は、息をのんで、ただただその様子を見守る。

しばらく、その状態が続いた後、だんだん、光が細くなってきた。
そして、ついに、すーっとデュラン王子の手のひらにすいこまれて、消えていった。

デュラン王子は、目を閉じたまま、立ちあがって、後ろをむく。

「ドーラさん、終わったから、寝間着を着てね。アディー、手伝ってあげて」

「はい! デュー先生!」

思わず声が裏返ってしまったわ。
だって、ドキドキがとまらないもの。
なんだか、すごいものを見たのではないかしら。

そして、ドーラさんは、少し楽になったみたい。
脱ぐ時とちがって、私が手伝う必要もなく、すんなりと自分で着ることができた。

「ドーラさん、着ましたよ。デュー先生!」

あ、また、声が裏返ってしまったわ。
二度目は、ちょっと恥ずかしい。でも、仕方がないわよね。
落ち着かないんだもの。
あれが、なんだったのか、早く知りたい!

私の気持ちが伝わったのか、デュラン王子はふりむくと、微笑みながら言った。

「今から説明するよ、助手さん。そうだ、部屋の前にいる人も呼んできて」

え? 部屋の前? だれかいたっけ?

ドアを開けると、師匠が転がり込んできた。

あれから、ずっと、はりついてたのね。
師匠ったら、そんなにドーラさんのことが、…ムフフフフ。

じゃなくって、そんなことより、早く説明をお願い!

「ドーラさんは大丈夫。風邪をこじらせたみたいだね。けれど、ちょっと楽になってきたでしょ? 薬を飲んで、安静にしていれば、数日でなおるよ」

ドーラさんは、
「ええ、随分楽になりました。ありがとうございます、先生」
と、かすれた声で言った。

「本当に良かった…」
師匠のほうが、泣きそうな顔をしている。

それで、それで? 早く、あの光について教えてよ!

私の顔を見た、デュラン王子が、私の頭をなでて、
「本当にぼくの助手は、かわいいね」
と、とろけるように、笑いかけてきた。

それはどうでもいいですから、早く説明を! ほら、ほら!

師匠が、うっ!と、うなった。

「男の俺が見ても甘すぎる攻撃を、お姫さん、あんた、よく無視できるな…」

「そう、手ごわいんだよね。まあ、それもおもしろいんだけどね」
と、デュラン王子が返す。

「そんなことより、早く説明して!」

あ、思わず、声にでた。しかも、声が大きすぎたわね。
病人の前で私ったら。ごめんなさい、ドーラさん…。

「ふふっ。本当にかわいらしい助手さんですね」
ドーラさんが、笑いながら言った。

うるさくしたのに、寛大な人だわ。確かに、師匠にはもったいないかもね。
そして、ありがとう、ドーラさん。

「では、アディーも我慢の限界のようだし、説明するね。最初に、体の様子をみて、風邪だと思ったんだけど、熱が高くて、衰弱してたんだよね。なので、念のために、ぼくの魔力を使って、詳しく体をみてみたんだ」

「魔力を使って、体の中が詳しくみられるの?」

デュラン王子はうなずいた。
「ぼくの魔力はね、体の中の状態をみることができるんだ。だから、魔力を生かすために、医師の資格も取ったんだよ。じゃないと、状態がみえても、意味がわからないしね」

「じゃあ、もしかして、癒すこともできるの? あのあと、ドーラさんの体調がよくなったもの」

私の問いに、デュラン王子は首を横にふった。

「いや、基本的には病を治したりはできない。でも、ちょっとした癒しはできる。今日は、魔力で体の中を診ながら、高熱を吸いとったから、楽になったんだよ。それくらいかな」

それくらいって、すごすぎるわよ!

この世界には、魔力をもっている人は、ある程度いる。が、通常は、その魔力を使えない人がほとんどだ。
私も、魔力はあるにはあるけれど、この人、魔力があるなあ、などとわかるくらいで、いまだ使い道はわからない。

なので、魔力を役立てることができる人になると、ほんの一握り。
しかも、その人たちは、その使い方を隠したがるから、こうな風に目の前で役立てているのを見るのは初めて。

だから、前世で、よく読んでいた物語のように、魔法使いなどは、この世界では見たことがない。

ちなみに、ユーリは魔力量が膨大だから、本人さえ、その気になれば、名実ともに魔力で国を支配し、魔王になれると思うわ。

それにしても、デュラン王子は、すごい人だったのね。
ずっと魔王だと思ってたけど、間違ってた。まさに、癒しの王子だわ! 失礼しました、デュー先生!

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!

キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。 だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。 「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」 そこからいろいろな人に愛されていく。 作者のキムチ鍋です! 不定期で投稿していきます‼️ 19時投稿です‼️

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。 同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。 おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。 幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。 しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。 実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。 それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?

処理中です...