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1話 ヴェノム研究所
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「離れ、ろ……!! そこから、離れろォォオオッッ!!!」
雄たけびを上げながら、こちらに迫る少年をいなし蹴れば、床に倒れ込むが、金属製の床を抉り掴むように、こちらに体を向けたまま堪えると、大きく口を開け、顔を上げる。
牧野も照準を少年の頭に合わせるが、引き金よりも先に尋ねた。
「どうして、その子は眠っているんだ」
あの夢の最後、彼女は苦しんでいた。
エンジェルポーションの出所は、この研究所。
そして、エンジェルポーションの使用後に、その研究所で明らかな実験体となっている少女と夢の中で出会う。
偶然などではない。
この施設も、夢の中で確かに彼女と共に歩いた建物だ。
「ガァ゛ァ゛ア゛ア゛ッァ゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ッッ!!!!」
尋ねる言葉などわからないかのように、叫び、飛び掛かってくる。
会話は不可能。
危険な赤い獣は、即座に排除する対象。
銃に噛みつかんとする少年の口に、引き金を引かなければいけない。
「ゥ゛ア゛ァ゛ッ!!」
少年の口が閉じ、銃口を噛み砕いた衝撃が腕に伝わる。
同時に、牧野は銃から手を離し、少年の頭を掴んだ。
「テメェは――――人間だろッッ!! 言いたいことは言葉で言えッ!!」
そのまま、地面に頭から叩きつければ、凶悪な口は塞がり、背中に乗れば、簡単には動けない。
「その子を助けたいなら、言葉で、伝えろッ!!」
抑える腕の下から覗く殺気の籠った視線に、負けじと牧野は続けた。
「テメェらガキだけじゃ、その子は、助けられねェだろッ!!」
ピクリと指先に感じた感覚と共に、腕に感じる抵抗が弱まった。
「その人、助けて、くれるのか……?」
腕の下から覗く目は、まだ疑っているようだったが、先程よりは会話できそうだった。
「約束はできない。俺たちも、この施設のことも実験のことも理解してるわけじゃない。だから、詳しい奴がいる。ここの研究員はどこにいる?」
「全員殺した」
半ば予想はついていた答え。
彼らが生きるためには仕方なかったのだろう。
「何があった」
「……知らない。ただ、その人が苦しそうに叫ぶから」
そっと逸らされた視線は嘘をついているわけではなく、本当にわからないのだろう。
何もわからないが、それでも水槽の中の彼女を助けるために、戦うしかなかった。
「そいつがわかるわけないじゃん。バカだもん」
突然、会話に入ってきた声に振り返れば、腕の下の少年と同じくらいの少年と後ろで銃を構えている隊員。
どうやら、彼は研究所の外の森で待ち構えていた少年らしい。
牧野たちの突入後、しばらくしてから投降してきたという。
「怖い顔しないでくださーい。両手を上げたら、降参なんでしょ? 負け試合にエントリーする気はないって」
終始このようなおちょくるような、真意の見えない態度のため、部下たちもどう対応すべきか迷い、連れてきたようだ。
研究員が誰一人生きていないことが分かった今、少年たちの中で少しでも施設について知っている者がいるなら、話を聞きたいところだ。
戦意がないというなら、なおいい。
「なら、お前はわかるのか?」
「聞きたい?」
張り付けたような笑みで、蛇のようにこちらを見つめる少年に、後ろで銃を構えている部下に、銃を下させる。
「僕たちはね、生まれてからずっと、大人たちの言う”大事な実験”に付き合ってたんだ。特にPは、代わりのない大事な実験体だったんだよ」
でも、あの日、大人たちは焦るように、今まで強引な実験を行っていなかったPに対して、突然自分たちに行うような体へ負担のかかる実験を行った。
本来、実験体同士は、型番が違えばお互いを知ることなどないが、Pだけは違った。
実験の傷を癒すため、Pは実験体の全員と意識を繋いでいた。故に、実験が行われた瞬間、全員にその苦痛が伝わってきた。
「そんで、キレたそいつが研究所を破壊しまくったってわけ」
少年の話を、部下はまるで信じられないと眉を潜めていたが、牧野はあの夢での記憶と、異様な回復速度を見せた体のせいで、その話を絵空事だと一蹴することはできなかった。
むしろ、夢だと捨て置いたことが、この研究所に来てから、やけに現実味を帯びてきている。
「こいつってば、適当に壊すもんだから、まともな設備が残ってんのがここくらいで」
話しながら近づく少年は、身振り手振りで伝えるように牧野に向かって腕を振るう。
妙な感覚に、牧野が視線を自分の腕へ向ければ、袖が刃物に切られたかのように裂けていた。
「あれ? うーん……オジサン、もしかして、Pと知り合い?」
先程までと変わらない調子で会話を続ける少年は、少し不思議そうに牧野を見つめるが、牧野はそれどころではなかった。
確実に、少年を抑えている腕を落とそうと、下手すれば自分を殺そうとしていた。
何の殺気のないまま。武器のひとつも持たずに、素手で。
銃を噛み砕かれてから、ようやく収まってきていたはずの心臓がまたうるさく響く。
「あーへぇ……んじゃ、いいや」
だが、予想に反し、少年は水槽で眠る少女を一瞥すると、その手を頭の後ろに組み、踵を返した。
「いやいやいや!? 今、お前、俺を殺そうとしたよな!?」
あまりにも行動が読めない少年に、つい牧野が声を上げれば、少年は心底めんどくさそうな表情で足を止めると、振り返った。
「殺してないんだからいいじゃん。こっまかいなぁ」
「細かくねェよ!! とんでもねェガキだな……」
本当にめんどくさいとばかりに眉を潜める少年は、ふと目に入ったこちらへ向けられる銃口に、大きくため息をつくと、水槽に眠る少女を指さした。
「その子、助けないと、今度こそ殺されちゃうかもしれないですよ?」
だから、とっとと助けてくださいね。
ニヒルに笑う少年に、牧野は大きく息を吐き出した。
雄たけびを上げながら、こちらに迫る少年をいなし蹴れば、床に倒れ込むが、金属製の床を抉り掴むように、こちらに体を向けたまま堪えると、大きく口を開け、顔を上げる。
牧野も照準を少年の頭に合わせるが、引き金よりも先に尋ねた。
「どうして、その子は眠っているんだ」
あの夢の最後、彼女は苦しんでいた。
エンジェルポーションの出所は、この研究所。
そして、エンジェルポーションの使用後に、その研究所で明らかな実験体となっている少女と夢の中で出会う。
偶然などではない。
この施設も、夢の中で確かに彼女と共に歩いた建物だ。
「ガァ゛ァ゛ア゛ア゛ッァ゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ッッ!!!!」
尋ねる言葉などわからないかのように、叫び、飛び掛かってくる。
会話は不可能。
危険な赤い獣は、即座に排除する対象。
銃に噛みつかんとする少年の口に、引き金を引かなければいけない。
「ゥ゛ア゛ァ゛ッ!!」
少年の口が閉じ、銃口を噛み砕いた衝撃が腕に伝わる。
同時に、牧野は銃から手を離し、少年の頭を掴んだ。
「テメェは――――人間だろッッ!! 言いたいことは言葉で言えッ!!」
そのまま、地面に頭から叩きつければ、凶悪な口は塞がり、背中に乗れば、簡単には動けない。
「その子を助けたいなら、言葉で、伝えろッ!!」
抑える腕の下から覗く殺気の籠った視線に、負けじと牧野は続けた。
「テメェらガキだけじゃ、その子は、助けられねェだろッ!!」
ピクリと指先に感じた感覚と共に、腕に感じる抵抗が弱まった。
「その人、助けて、くれるのか……?」
腕の下から覗く目は、まだ疑っているようだったが、先程よりは会話できそうだった。
「約束はできない。俺たちも、この施設のことも実験のことも理解してるわけじゃない。だから、詳しい奴がいる。ここの研究員はどこにいる?」
「全員殺した」
半ば予想はついていた答え。
彼らが生きるためには仕方なかったのだろう。
「何があった」
「……知らない。ただ、その人が苦しそうに叫ぶから」
そっと逸らされた視線は嘘をついているわけではなく、本当にわからないのだろう。
何もわからないが、それでも水槽の中の彼女を助けるために、戦うしかなかった。
「そいつがわかるわけないじゃん。バカだもん」
突然、会話に入ってきた声に振り返れば、腕の下の少年と同じくらいの少年と後ろで銃を構えている隊員。
どうやら、彼は研究所の外の森で待ち構えていた少年らしい。
牧野たちの突入後、しばらくしてから投降してきたという。
「怖い顔しないでくださーい。両手を上げたら、降参なんでしょ? 負け試合にエントリーする気はないって」
終始このようなおちょくるような、真意の見えない態度のため、部下たちもどう対応すべきか迷い、連れてきたようだ。
研究員が誰一人生きていないことが分かった今、少年たちの中で少しでも施設について知っている者がいるなら、話を聞きたいところだ。
戦意がないというなら、なおいい。
「なら、お前はわかるのか?」
「聞きたい?」
張り付けたような笑みで、蛇のようにこちらを見つめる少年に、後ろで銃を構えている部下に、銃を下させる。
「僕たちはね、生まれてからずっと、大人たちの言う”大事な実験”に付き合ってたんだ。特にPは、代わりのない大事な実験体だったんだよ」
でも、あの日、大人たちは焦るように、今まで強引な実験を行っていなかったPに対して、突然自分たちに行うような体へ負担のかかる実験を行った。
本来、実験体同士は、型番が違えばお互いを知ることなどないが、Pだけは違った。
実験の傷を癒すため、Pは実験体の全員と意識を繋いでいた。故に、実験が行われた瞬間、全員にその苦痛が伝わってきた。
「そんで、キレたそいつが研究所を破壊しまくったってわけ」
少年の話を、部下はまるで信じられないと眉を潜めていたが、牧野はあの夢での記憶と、異様な回復速度を見せた体のせいで、その話を絵空事だと一蹴することはできなかった。
むしろ、夢だと捨て置いたことが、この研究所に来てから、やけに現実味を帯びてきている。
「こいつってば、適当に壊すもんだから、まともな設備が残ってんのがここくらいで」
話しながら近づく少年は、身振り手振りで伝えるように牧野に向かって腕を振るう。
妙な感覚に、牧野が視線を自分の腕へ向ければ、袖が刃物に切られたかのように裂けていた。
「あれ? うーん……オジサン、もしかして、Pと知り合い?」
先程までと変わらない調子で会話を続ける少年は、少し不思議そうに牧野を見つめるが、牧野はそれどころではなかった。
確実に、少年を抑えている腕を落とそうと、下手すれば自分を殺そうとしていた。
何の殺気のないまま。武器のひとつも持たずに、素手で。
銃を噛み砕かれてから、ようやく収まってきていたはずの心臓がまたうるさく響く。
「あーへぇ……んじゃ、いいや」
だが、予想に反し、少年は水槽で眠る少女を一瞥すると、その手を頭の後ろに組み、踵を返した。
「いやいやいや!? 今、お前、俺を殺そうとしたよな!?」
あまりにも行動が読めない少年に、つい牧野が声を上げれば、少年は心底めんどくさそうな表情で足を止めると、振り返った。
「殺してないんだからいいじゃん。こっまかいなぁ」
「細かくねェよ!! とんでもねェガキだな……」
本当にめんどくさいとばかりに眉を潜める少年は、ふと目に入ったこちらへ向けられる銃口に、大きくため息をつくと、水槽に眠る少女を指さした。
「その子、助けないと、今度こそ殺されちゃうかもしれないですよ?」
だから、とっとと助けてくださいね。
ニヒルに笑う少年に、牧野は大きく息を吐き出した。
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