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7話 必要な嘘
03
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S08は、医務室の部屋の外で、ひとり座っていた。
自分が中でできることはないし、何かをするつもりもない。なら、邪魔なだけだと、P03の気が済むのを外で待っていた。
「…………」
否応なしに周囲の音を拾う鼓膜を、少しだけ煩わしそうに抑えると、沸き立つように聞こえてきた喜びの声。
そっと囲っていた手を開けば、聞き慣れた声と騒がしい声が何度か会話を繰り返した後、慌ただしく足音が近づいてくる。
「誰かいるか!?」
「はい? なんですか。騒がしくしないでください」
杉原が何事かと部屋から顔を出せば、負傷した兵士たちを抱えた兵士たちに、慌てて処置室に運ぶように指を差す。
「どうして、彼らが?」
負傷した兵士たちを、運び込む時、杉原だけではなく、その場にいた医療部隊の隊員たちも不思議な表情をしていた。
彼らは、変異種に襲われ、救出を諦められた部隊の兵士たちだった。
「帰ってきたんだよ! 自力で! がんばって!」
無駄に大きな声と、若干引きつった声色で、語彙力の欠片もない言葉と共に、医官である杉原の肩を掴む兵士に、杉原は驚くほど冷たい視線を送る。
しかし、長いため息と共に必死で残念な言い訳を続ける兵士の腕を引き剥がすと、処置室に向かった。
「よっしっ! 納得してくれた!!」
「どう見てもしてなかっただろ。バカなのか。こいつ」
「うるせぇ! 大人には建前っていうのがあるんだよ!」
「そうだそうだ! よくわかんないけど、うまくいったならいいじゃん!」
「はぁ……バカにお気楽、脳筋と来たか。花と会話してた方がマシだな」
「あ゛?」
O12の言葉に、G45もいつものように掴みかかりそうになるが、部屋から顔を出してふたりに目をやるP03に、前屈みになっていた姿勢を戻す。
「P! ただいま!」
「おか、えり……?」
G45の言葉に、O12が一瞬目を見開き、G45へ視線をやるが、すぐに諦めたように視線を逸らした。
負傷した兵士たちを連れてきた彼らまでも、慌てたように周囲に目をやっている様子に、少なくともふたりが先程まで畑仕事を手伝っていたとは思えなかった。
「聞いてよ! SもTも、全然ついてきてくれなくてさぁ! 俺、探し物は苦手だって言ってんのに!」
だが、周りの慌てる容姿に気が付かず、G45は言葉を続ける。
その様子に、O12は長いため息をつきながら、頭に手をやった。
「バカにも程があんだろ……」
「おまっ……まだ文句言うつもりかよ!」
「ここでそれ言う奴がいるかよ。俺たちは、本当は牧野がいなきゃ、あの部屋から出ちゃいけねぇんだろーが」
「…………」
O12の言葉に、ようやく意味を理解したらしく、G45は慌てたように処置室の方へ目をやるが、忙しそうな声だけが響いてくる。
彼らの居場所を把握をしていなかったP03も、この反応では、さすがにG45とO12が、運び込まれた負傷した兵士たちを救助に向かっていたということは察してしまった。
O12の言う通り、ヴェノリュシオンたちの行動は、牧野ありきのものだ。G45が部屋の外にいる時は、常に場所を把握されていたし、誰かの目が必ずあった。
だが、今回は、牧野が把握していない上に、P03がひとりで部屋の外を出歩いたどころではなく、駐屯地から勝手に出ていたとなれば、牧野は怒るだろう。
「で、でもさ、マキノさんだって、助けに行こうとしてたじゃん。オッサンにダメって言われただけでさ」
牧野だって、久留米に止められるまでは、救助に賛成していたはずだ。実際、G45たちがいなければ、危険だった兵士もいた。悪いことをしたわけじゃない。
「お、怒られるかな……」
しおらしく顔を俯かせるG45に、O12は呆れたように明後日の方向に視線をやっていた。
「今更かよ」
「なんだよ。てか、わかってたのに、お前ついてきたの? …………どうしたんだよ」
普段なら、人が失敗したり、怒られたりするのを、離れたところからニヤニヤと見てるのが、O12だ。
顔を逸らしていたO12の何か言いたげな表情は、G45には見えなかったが、振り返ったO12の表情は、よく知っているG45をバカにする顔だった。
「牧野の慌てる顔が見足りなかったからな」
「うわ……サイテー」
言葉を漏らしたのは、G45だけだったが、周りの兵士も同じことを思っていた。
しかし、G45に首根っこを掴まれ、強制的に森の中に連行されていったことをしているS08は、ついP03へ視線をやってしまう。
「…………どっちも本心」
先程の何とも言えない表情も、先程の言葉も、どちらも本心であるO12に、P03は困ったように笑みをこぼした。
素直じゃないにも程がある。ある意味、素直とも言えるが。
「S?」
苦笑するP03から視線をG45たちへ戻すS08の、初めて見る感情に、つい目を瞬かせてしまう。
そして、小さく目尻を下げた。
そのP03の微笑みに気が付いたのか、S08が少しだけ目を見開くと、睨むようにP03へ目をやったが、その直後だ。
小さな爆発音が駐屯地に響いた。
自分が中でできることはないし、何かをするつもりもない。なら、邪魔なだけだと、P03の気が済むのを外で待っていた。
「…………」
否応なしに周囲の音を拾う鼓膜を、少しだけ煩わしそうに抑えると、沸き立つように聞こえてきた喜びの声。
そっと囲っていた手を開けば、聞き慣れた声と騒がしい声が何度か会話を繰り返した後、慌ただしく足音が近づいてくる。
「誰かいるか!?」
「はい? なんですか。騒がしくしないでください」
杉原が何事かと部屋から顔を出せば、負傷した兵士たちを抱えた兵士たちに、慌てて処置室に運ぶように指を差す。
「どうして、彼らが?」
負傷した兵士たちを、運び込む時、杉原だけではなく、その場にいた医療部隊の隊員たちも不思議な表情をしていた。
彼らは、変異種に襲われ、救出を諦められた部隊の兵士たちだった。
「帰ってきたんだよ! 自力で! がんばって!」
無駄に大きな声と、若干引きつった声色で、語彙力の欠片もない言葉と共に、医官である杉原の肩を掴む兵士に、杉原は驚くほど冷たい視線を送る。
しかし、長いため息と共に必死で残念な言い訳を続ける兵士の腕を引き剥がすと、処置室に向かった。
「よっしっ! 納得してくれた!!」
「どう見てもしてなかっただろ。バカなのか。こいつ」
「うるせぇ! 大人には建前っていうのがあるんだよ!」
「そうだそうだ! よくわかんないけど、うまくいったならいいじゃん!」
「はぁ……バカにお気楽、脳筋と来たか。花と会話してた方がマシだな」
「あ゛?」
O12の言葉に、G45もいつものように掴みかかりそうになるが、部屋から顔を出してふたりに目をやるP03に、前屈みになっていた姿勢を戻す。
「P! ただいま!」
「おか、えり……?」
G45の言葉に、O12が一瞬目を見開き、G45へ視線をやるが、すぐに諦めたように視線を逸らした。
負傷した兵士たちを連れてきた彼らまでも、慌てたように周囲に目をやっている様子に、少なくともふたりが先程まで畑仕事を手伝っていたとは思えなかった。
「聞いてよ! SもTも、全然ついてきてくれなくてさぁ! 俺、探し物は苦手だって言ってんのに!」
だが、周りの慌てる容姿に気が付かず、G45は言葉を続ける。
その様子に、O12は長いため息をつきながら、頭に手をやった。
「バカにも程があんだろ……」
「おまっ……まだ文句言うつもりかよ!」
「ここでそれ言う奴がいるかよ。俺たちは、本当は牧野がいなきゃ、あの部屋から出ちゃいけねぇんだろーが」
「…………」
O12の言葉に、ようやく意味を理解したらしく、G45は慌てたように処置室の方へ目をやるが、忙しそうな声だけが響いてくる。
彼らの居場所を把握をしていなかったP03も、この反応では、さすがにG45とO12が、運び込まれた負傷した兵士たちを救助に向かっていたということは察してしまった。
O12の言う通り、ヴェノリュシオンたちの行動は、牧野ありきのものだ。G45が部屋の外にいる時は、常に場所を把握されていたし、誰かの目が必ずあった。
だが、今回は、牧野が把握していない上に、P03がひとりで部屋の外を出歩いたどころではなく、駐屯地から勝手に出ていたとなれば、牧野は怒るだろう。
「で、でもさ、マキノさんだって、助けに行こうとしてたじゃん。オッサンにダメって言われただけでさ」
牧野だって、久留米に止められるまでは、救助に賛成していたはずだ。実際、G45たちがいなければ、危険だった兵士もいた。悪いことをしたわけじゃない。
「お、怒られるかな……」
しおらしく顔を俯かせるG45に、O12は呆れたように明後日の方向に視線をやっていた。
「今更かよ」
「なんだよ。てか、わかってたのに、お前ついてきたの? …………どうしたんだよ」
普段なら、人が失敗したり、怒られたりするのを、離れたところからニヤニヤと見てるのが、O12だ。
顔を逸らしていたO12の何か言いたげな表情は、G45には見えなかったが、振り返ったO12の表情は、よく知っているG45をバカにする顔だった。
「牧野の慌てる顔が見足りなかったからな」
「うわ……サイテー」
言葉を漏らしたのは、G45だけだったが、周りの兵士も同じことを思っていた。
しかし、G45に首根っこを掴まれ、強制的に森の中に連行されていったことをしているS08は、ついP03へ視線をやってしまう。
「…………どっちも本心」
先程の何とも言えない表情も、先程の言葉も、どちらも本心であるO12に、P03は困ったように笑みをこぼした。
素直じゃないにも程がある。ある意味、素直とも言えるが。
「S?」
苦笑するP03から視線をG45たちへ戻すS08の、初めて見る感情に、つい目を瞬かせてしまう。
そして、小さく目尻を下げた。
そのP03の微笑みに気が付いたのか、S08が少しだけ目を見開くと、睨むようにP03へ目をやったが、その直後だ。
小さな爆発音が駐屯地に響いた。
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