【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~ 

ツヅラ

文字の大きさ
39 / 67
9話 新しい任務

04

しおりを挟む
 テントなどの必要な物品の設営を行いながら、楸は崩れた瓦礫を積み上げているヴェノリュシオンたちに目をやった。
 G45だけではない。P03を除く、全員が自分たちの体程のサイズがある瓦礫を持ち上げては、積み上げている。
 生物として、根本から違うことを見せつけられている気分だ。

「あの連中、壁の外は、変異種がうじゃうじゃいるとか言ってたくせに、嘘じゃん」

 研究所の人間から、この壁の外には危険な変異種が大量にいると聞いていた。
 だが、見渡す限り壁の向こう側も大きく景色に違いはないし、匂いだって大きく差はない。

「これさぁ、僕たちが、急いで壁を直す必要とかある?」
「だったら、無視してればよかっただろ」
「まぁ、そうなんだけどさぁ」

 S08の言葉に、T19は大袈裟にため息をつくと、また瓦礫をひとつ積み上げた。

「さすがのSでも、ずっと寝ないのはカワイソーだし? 僕に感謝しなよ」
「何の話だ」
「しらばっくれちゃって」

 夜の見張りに、昼間の狩猟と壁の応急処置。
 ヴェノリュシオンたちの得手不得手は顕著なもので、担当になったところで意味がない個体も存在する。

 例えば、夜の見張りに、G45は不向きだ。索敵が苦手なG45が、索敵能力を最も必要とする見張りに付いたところで、誰も安心して寝れはしない。
 だが、日中の狩猟と壁の応急処置という力仕事であれば、その能力を最大限に生かせる。
 研究所にいた時ですら、彼らは彼らなりに、それぞれの能力を使って生き延びていた。
 故に、S08が今回の任務で、最もどこにでも配置できる存在であることを理解していた。

「アレ!? O、何もってんの!?」
「ライフル」

 騒がしいG45の声に、目をやれば、O12の手元には確かにライフルが握られていた。
 しかも、自慢げに少し顎を上げている。

「俺も! 俺も欲しい!」
「おもちゃじゃねェんだ。欲しいでやれるか」
「ずーるーいー!! こいつ、一番何もやってないじゃん!!」
「ハッ! お前がバカ力でなんでも壊すからだろ」
「お前も煽るな」

 隙あらばG45をバカにするO12を注意しながら、今にも殴りかかりそうなG45を宥める牧野は、こちらをじっと見つめるT19とS08の視線に苦虫を潰したように渋い顔をした。

「銃の使い方を教える? アイツらにですか?」

 牧野の説明を聞き、楸だ驚いたように聞き返す。
 強大で狂暴な変異種に対して、人類が今まで生きてこられたのは、偏に銃火器によるものだ。武器は変異種に対する人類のアドバンテージだ。
 ヴェノリュシオンたちに銃の使い方を教えるということは、そのアドバンテージを捨てるということ。
 部隊として自由行動を許す以上の危険な行為のはず。簡単に許可が出るとは思えない。

「大穴の開いた壁付近に、人はほとんど来ないしな」
「つまり、許可は出ていないと……」

 案の定、ヴェノリュシオンたちに武器の扱いを教えるのは、未だに賛否が分かれているらしい。

「以前みたいな、周りを巻き込む無茶苦茶な戦い方をされるなら、ちゃんと教えた方が安全だしな。お前は反対か?」

 結果、自分たちが不利益になろうとも。
 見た目が子供だからだろうか、それとも過ごした時間だろうか。牧野が彼らに置く信用は、楸たちとは異なる。

 楸は、少しだけ目尻の下がった牧野を見つめると、何とも言えない声を出した。

「というより、この前、対物ライフル使って肩痛めてたんですよ? もう少し体ができてからでもいいと思います」
「………………痛めてた? 肩?」

 知らなかったのかと、O12へ目をやれば、ひどく睨まれた。何だったら、手に持ったライフルをこちらに向けてきそうだった。

「おまっ……! そういうことは、ちゃんと報告しろ!」
「治った」
「怪我はしてたんだろ! さては、Pも気づいてたな?」
「んっ……そんなにひどい傷じゃなかったよ?」

 自分に関係ないと油断してたのか、少しだけ驚いたように肩を震わせると、P03は不思議そうに首を傾げた。

 彼らにとって些細なことでも、自分たちにとっては重大なことである可能性もあるし、なにより怪我についての報告は、後々ダメージが出てくる場合もあり、より注意する必要がある。
 その辺り、気が付きやすいのは、治癒の能力を持つP03だ。あとでしっかり説明して、報告させるようにするべきだろう。

「…………」

 報告の重要性について教えるのは一旦置いといて、ライフルを離さないとばかりに握りしめるO12を、しばらく牧野はじっと見降ろすと、大きくため息をついた。

「痛みっていうのは、骨まで痛めたわけじゃないな?」
「ちょっと青く――」

 牧野の質問に答えるP03に、O12が駆け寄ると、その口を塞ぐ。
 そして、そっと手を離せば、また答えようとするP03に慌てて、また手を口に当てた。

 ちゃんと報告は聞きたいが、こうなってはO12が別の場所にいない限り話は聞けそうにない。
 加えて、O12を弄れるとばかりに、足音を潜めて近づいてきているT19の襟を掴み上げる。

「…………なら、弾数制限を付ける」

 すぐに治る程度の怪我であるなら、弾数に制限を設ければ、大事にはならないだろう。
 それこそ、大抵のケガは、P03が治すことができる。

「使い方教えるついでに、今日の食料探しに行ってくる。何かあれば、楸に言うように」

 不満そうに文句を言うG45を無視し、流れ弾が当たらないように少し離れた場所へO12と共に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...