【完結】ヴェノリュシオン ~ 違法研究所を摘発したら、実験体にされていた遺伝子組み換えされた子供を育てることになりました ~ 

ツヅラ

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9話 新しい任務

05

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 牧野とO12が、森の方へ消えてから数時間。
 数回、銃声が森の方から響いてきた。

「ずるーい」

 いまだ不貞腐れているG45だが、手元が陰ったことに顔を上げれば、瓦礫。
 慌てて避ければ、直後鈍い音が響く。

「おいッ!! あぶねーだろッ!!」
「だって、ネチネチうるさいんだも~ん」

 瓦礫を投げた本人は、悪びれた様子もなく、近くに落ちていた小さな石を拾い上げると、G45へ投げた。
 負けじとG45も抱えていた瓦礫をT19へ投げ始めては、楸も慌てたようにP03の元へ駆けていく。

「Pちゃん、あのふたり止められない!?」
「?」
「危ないから!! 普通に!」

 何故とばかりに首を傾げるP03は、楸の言葉にやはり不思議そうに瞬きを繰り返す。

「お前が止めればいいじゃないか」
「死ぬわ!!」

 見かねたS08が楸を睨む様子は、楸の言葉など聞き入れる気はない。
 そもそも、以前からS08の態度は刺々しい物があった。特にP03が関わると。

「…………Pちゃん。よく聞いて。頭にアレが当たったら、めちゃくちゃ痛い」

 牧野のように、ヴェノリュシオンたちに提案を聞き入れてもらえないのならば、聞き入れてもらえそうな方を説得するに限る。
 そうして、影響力のある人たちへ伝播させてもらう。
 それが、アウェイな場所で、話をスムーズに進める一番のコツだ。

 罰として、アウトサイドへ遠征に行かされる楸は、隊内での立場などの関係性を掴む目が自然と養われていた。
 P03はヴェノリュシオンたちの中で、中心的な位置にいる。そして、こちらの話を聞いてくれるタイプ。
 楸にとっては、とても助かる構図だ。

「アイツらはともかく、俺は死ぬ! だから止めて!!」
「……私が治すよ?」
「うーん! ありがとう! でも即死するんじゃねェかなァ!? 俺!!」

 そんなに頑丈さに自信ない! と情けない言葉を叫ぶ楸に、S08は呆れたように、静かにため息をついた。
 直後、頭に強い衝撃が走る。

「「あ」」

 石を投げ合っていたG45とT19の声と視線がきれいに揃った。
 その声で、誰が犯人かは、確信した。そもそも、状況的に犯人などほぼ決まっていたが。

 実際よりも長く感じられた時間、一息だけ早くT19が動き出したが、くるぶしに激痛。
 走り出した勢いのまま、地面に顔を強打させた。

「僕悪くないじゃん!?」
「お前が避けなければ済んだ話だろ」

 地面に顔をつけながら、背中に馬乗りになっているS08へ振り返れば、手に握られた石を掲げている。

「待って待って待って!? ガチじゃん!! P!! ヘルプ!! 死ぬって!?」

 こいつマジで冗談が通じないと、P03へ助けを求めるT19の耳に聞こえたのは、握力だけで砕かれる石の音。
 
「そんなことするわけないだろ」

 そして、少し細かくなった石を、G45へ放り投げた。

*****

「――で、何があった」

 作業が進んでいないことはまだいい。そもそも、この人数でやる案件じゃない。
 だが、怪我は別だ。

「楸」

 すごく嫌そうな表情をしていたが、視線を向ければ、観念したように昼間に起きたことを報告する。
 報告を聞き終えた牧野は、大きくため息をつくと、P03へ目をやった。

「止めて……お願いだから」
「止めたって、止まらないよ」
「そう、なんだよなぁ……Sまで混ざると、被害がデカいな」

 正直、彼らの喧嘩を止めるのは、力づくだ。言葉で止まることはない。
 P03の言葉は聞いてくれるが、それは手が出る前の話。出たら、止まらない。

「とりあえず、P。今日は、アイツらのケガは治さなくていい」

 大きなケガでもない。もし変異種が現れたとしても、あの程度であれば問題はない。
 ならば、少しは反省してもらわなければ。

「そういえば、Pちゃんの不思議治療術って結局、なんなの?」

 駐屯地で保護及び監視をする上で、ある程度のヴェノリュシオンの情報は開示されたが、楸のような下の階級の兵士には、詳細な情報は開示されていない。
 それこそ、人間の進化させたい部位を変異させたデザイナーズベビーであるという情報以上のものはない。
 彼らと過ごしていれば、それぞれ、どの部位を強化されているのかは見えてくるが、あくまで推測だった。

「よくわかんない」
「うそぉ……そんなことある?」

 そんな無自覚な力で、瀕死の人間を助けていたのかと、驚きながら牧野へ目をやれば、煮だしたお茶を飲みながらP03へ目をやっていた。
 牧野たちにとっても、P03の能力は不明点が多い。感情が見えると言うのは体験したが、治療についてはわからないことが多い。

「なんかできちゃったんだよねぇ」
「そっかぁ~~できちゃったかぁ~~」

 どうやら、本人もわからないらしい。
 赤ん坊が立ち上がり方を教わったわけでもなく、立ち上がるのと同じで、彼女にとってできるものだから、できた。それだけ。

「じゃあ、エンジェルポーションも?」
「エンジェルポーション?」
「ほら、Pちゃんの血液入りだったとかいう――」

 その瞬間、殺気が楸の喉を締め上げた。
 正確に言えば、牧野が腕を間に入れてくれていなければ、S08とG45の腕が、実際に楸の喉を掴んでいた。

「ふたり共、落ち着け。楸に掴みかかったって、何もわからないぞ」
「うっわぁ……脳筋コンビ。ヤダヤダ」

 P03の後ろから抱きつきながら、T19がマキノの腕を掴んでいるふたりをバカにすれば、ふたりの視線はT19へ向く。
 ただP03が間にいるからか、昼間のように殴り合いに発展しそうな勢いはない。

「T知ってるの?」
「ん~~きっと牧野の方が詳しいと思うよ?」

 笑顔でP03の頬を摘まむ、T19にP03は頬を膨らませると、牧野へ目をやり、T19の頬を摘まんだ。
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