世界に色を付ける系アイドル始めました

ツヅラ

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5話 きらぴかライブキッチン

01

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「きらりと」
「ひかりの」
「「きらぴかライブキッチン!!」」

 小学生魔法少女の空星きらりと夜野ひかりが、テレビカメラの前でポーズを取る。
 生の収録現場だ。

「ほわぁぁ……かわ……」

 マイクから離れた場所で、声を漏らす灯里に、小林は何とも微妙な表情を向けていた。

 事の始まりは、数日前の事だ。
 以前のドローン襲撃事件後、魔法少女が狙われていることがはっきりしたことで、魔法少女には護衛がつくことになった。
 だが、魔法少女全員を護衛するとなると、警察だけでは人手が足りず、複数人の魔法使いに声をかけられた。
 その中に、Sランクである灯里とAランクの赫田の名前もあった。

「黒沼ちゃんは……ダメか。赫田君、僕ちょっと護衛連中と話してくるから、ここ頼むね」

 戦力として申し分ないが、魔法少女の収録現場にテンションが上がってしまっている灯里に大分不安を抱きながら、赫田に声をかければ、視線だけ返された。
 正直、喧嘩っ早さだけでいえば、赫田も相当心配な部類だが、今のところ灯里よりも心配がない。

「あら、あっちは大丈夫?」

 警察から護衛として派遣されているのは、3人。
 元々桜子のマネージャー兼護衛として雇われていた藤宮と、今回の件からきらりとひかりの護衛として派遣されている熊猫たいびょうと彩花のマネージャー兼護衛の小林。

「なんで僕だけ猛獣観察が追加されてるの? 大澤さんの仕事だっての」
「あら、大澤さんに言ってあげましょうか?」
「冗談! ジョーダンだって! マジ勘弁して」

 熊猫がその大きな体を曲げながら、いやらしく小林を見下ろす。小林も男性の平均身長よりも高いが、熊猫と比べてしまうとどうしても見劣りしてしまう。

「まっいいわ。小林も来たわけだし、この後の予定をもう一度簡単に確認するわね」

 番組構成は、まず最初にミニゲームを行い、買い出しに行く人を決める。そして、近くのスーパーへ買い出しに行っている間に、残ったチームが料理を進める。
 そして、最後に買い出しが買ってきた食材を使って飾り付け。
 その後、ゲストを含めた特別ライブを行って、番組は終了する。

「じゃあ、ゲストの桜子ちゃんと彩花ちゃんと一緒に、ミニゲームで飾り付けを買いに行く人を決めるよ!」

 一番の問題は、その買い出しに行く人だ。
 テレビ局内であれば、警備もあるが、外に行くとなればどうしても警備が手薄になる。生放送ではないが、収録という目立つ集団に加えて、撮影のために魔法少女から少し離れた位置に待機することになる。

「黒沼ちゃんがついてきてくれるのが、一番安全よね?」
「まぁ……そうね」

 灯里の能力については、全員が知っている。その上で、小林は奥歯に何か詰まったような表情をした。

「なによ」
「えーっと、黒沼ちゃん、ものすごく魔法少女が大好きで」
「まぁ、そうでしょうね」

 先程、きらりとひかりに出会った時も、桜子に出会った時も、興奮した様子で赫田の腕を引っ張っていたし、写真を撮るかと聞いた時も、自分を除いた4人だけの写真を撮らせてほしいとお願いしていたし、今も収録から目を離さないでいる。
 少なくとも、好きであることはよくわかる。

「今、最推し魔法少女がキラピカコンビらしく」
「……キラピカが残ったら、確実に残る?」
「たぶん」

 護衛だということは理解しているため、赫田が買い出しについてくるだろうが、灯里はついてこないだろう。
 すると、熊猫と藤宮はお互い顔を合わせて、難しい表情をした。

「え、なに」
「買い出しに行くのは、桜子さんなんです」
「あ、決まってる感じ?」
「いえ、決まってはいないんですが、桜子さん、料理がとても苦手なので」

 料理下手だとバレないように、ミニゲームにわざと負けて買い出しに行くつもりだった。
 そっと目をやれば、桜子が必死な表情でゲームに参加している。

「じゃあ、あれって」
「予想以上にきらりさんが下手で、必死に負けようとしている顔です」
「…………」

 きらりに、お互いに協力して上位の2人に追いつこうとする姿勢を見せながら、必死にアドバイスしている様に、芸能人って大変だな。と、静かに称賛を送っておいた。
 そのおかげもあってか、きらりは無事に僅差で、桜子に勝っている。
 あとは、最後の順番である桜子がギリギリ負けるだけだ。

「これを入れれば勝ち……!! ライブの成功のためにも、絶対に負けられない……!!」
「がんばって! 桜子!」

 すごく真剣な表情で構える桜子は、傍から見れば最下位を回避したいように見えることだろう。
 実際は正反対なのだが。

「あぁ!!」

 的の縁に弾かれ、桜子の投げたボールは床に転がる。

「おっしぃ~~っ!!」
「やったー! 勝ったァ!!」

 悔しがる桜子と喜ぶきらり。取れ高としては十分だろう。
 きらりにアドバイスをしている様子からも、おそらく絶対に、あのミニゲームを必死に練習してきたとは、察しがつくが。
 一度収録を止める声と共に、熊猫が咳ばらいをする。

「はい。じゃあ、予定通り別れましょうか」
「わかりました。何かあれば、小林さんへ連絡します」
「赫田君が何か起こす前提やめて」

 否定できないから困りものだが。

「惜しかったね。桜子」
「うん。本当に、ホントに危なかった……」
「?」
「ううん! あとちょっとズレてれば入ってたのに! でも、すっごくかわいいデコレーション買ってきてあげるから、楽しみにしてなさい」

 営業モードを切っていない桜子に、彩花も苦笑いを零しながら、視線をずっとこちらを見ていた灯里へやる。
 一応、ネームプレートには特別警備員と記載されている上、以前の模擬戦の様子がネットで配信されていたことから、周りのスタッフからも一目置かれる様子はあったが、その様子が完全にただのファンであるため、徐々に周りも困り顔になってきていた。
 魔法の才能は、多少周りに認知されてきたということだろう。赫田のように、一目で強いとわかる容姿でもない。どちらかといえば、舐められる側の容姿だし、何も言われないだけいいのかもしれない。

「桜子ちゃんは、このまま買い出しで」
「わかりました!」

 買い出しに行くスタッフたちが、荷物を持つと、当たり前のように赫田が立ち上がり、ついていく。

「お疲れ。灯里。赫田が桜子についていく感じ?」
「うん」
「じゃあ、こっちは、これからセット変えと着替え含めた休憩だけど、楽屋いく? それとも、こっちでお菓子とか食べてる?」

 一応、きらりとひかりのふたりには、熊猫がついているため、灯里に課せられているのは、彩花の護衛だけだ。
 もし疲れているようなら、楽屋に戻ろうと提案すれば、きらりたちの方に目をやった。

「ごめんなさいね。着替えの護衛をお願いしたかったんだけど……大丈夫かしら?」

 部屋の前には、熊猫が立つが、安全のためにもできれば、室内にもひとり護衛を置いておけるなら置いておきたい。同性で、彩花の友人だというなら、室内にいても不快ではないはずだ。
 灯里が頷くと、両腕が掴まれる。
 見下ろせば、きらりとひかりがしっかりと腕を掴んで、楽屋まで連れて行った。
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