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【一章】異世界でプラモデル
19.下克上
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「ぐ、ぬ……おのれぇっ!」
爆煙が晴れ、姿を現したシルバライザーは右腕が完全に消し飛んでいたものの、未だ健在だった。
くっ、照準がずれたのか!?
でもライフルを持っていた右手は破壊した。これで遠距離での攻撃手段は失われただろう。よし、ここで一気に攻めきる!
「もう一発くらわしてやるぜ! いけっ!」
「――なめるなっ!」
再びトリガーを引くと、同じように大口径砲が放たれる。
しかし、今度は放たれる直前にシルバライザーが素早く横へと移動したので、かすりもしなかった。
最初の一発は油断していて反応が遅れたんだろう。まさか銃口を向けられるとは思ってなかったんだろうな。
でもこっちが優勢なのは変わらない。どんどん撃ちまくろう。
「くっ、速いな! 当てられるか……?」
機動力を活かして闘技場内を縦横無尽に動き回るシルバライザー。でもさっきので射撃の感覚は掴んだ……次は当てる!
「よし、ここだっ! ――――ん? 魔力充填中!? くそっ、クールタイムがあるのか!?」
追撃を放とうと試みたのだが、トリガーを引いても無反応。おかしいと思って計器類を見ると、魔力充填中の表示があった。
くっ、さすがにこの大口径砲の連射は厳しかったのか……!? 多分この感じだと再使用まで数十秒はかかる。こうなったら接近戦に持ち込むしかないか。
「ヒャヒャヒャッ、どうやら魔力切れのようだな! このまま仕留めさせてもらう!」
敵は盾を捨て、腰部にマウントされていたショートソードを構えた。その刀身はエネルギー的なものを纏っている。
……あれで斬られたらヤバそうだな。
「……だが、接近戦なら望むところだ!」
装甲と馬力なら間違いなくこっちが上だ。受けて立つ!
「おおおおっ!」
「はあああっ!」
ガキィィィィンッ!
巨大な鉄と鉄とが正面からぶつかる音が会場に響く。
相手の剣はこちらの胸部へと命中しているが、こっちも相手の足をアームで掴むことに成功している。
計器が赤く点滅し、警告音を発する。幸いなことに、エネルギーを纏った剣はこちらの装甲を切断するに至らなかったが、警告を見るに真っ二つになるのも時間の問題だろう。
だが足は捉えた。さすがに握り潰すことは出来ないようだ。
奴は片腕を失っている。防御は出来ないだろうし、次の一手は必中……だがどこを狙えばいい!?
「――っ! やっぱりか!」
ザッコブの機体を見た時に感じた違和感の正体……流線的なデザインにも関わらず、突起物が多いように見えたのは、ゲート跡が残っているんだ。
なんて雑な作り方だ、ちゃんとゲート処理ぐらいはしろよ!
だがそのおかげで弱点を見つけたぞ……!
胴体のところ……ゲート跡が干渉してパーツが完全に閉じきっていない、隙間があるぞ!
俺は咄嗟にクローアームの先端をその隙間に滑り込ませ、出力全開で引き剥がそうと試みる。
「うおおおっ!」
「――はっ! 無駄な足掻きをっ!」
メリメリと、装甲が剥がれる音が聞こえる。やはり、作りが甘い分脆くなっているようだ。
「なっ!? おい、まさか……やめろっ!」
慌てて剣を引き、こちらの攻撃を妨害しようとするが、一手遅かったな。
「どりゃあぁぁっ!」
ガコンッ!
大音と共にシルバライザーの胸部パーツを引き剥がす。
すると、コックピットだろうか。球体のようなものの中にザッコブが居るのを目視できた。
「あわ、あわわわっ……! 来るなっ! やめろ、やめてくれっ、降参する! 降参するぅ!」
いや、別に何かする気はなかったんだが……まぁ生身の状態で至近距離からこいつのモノアイに睨まれたらビビるよな。
ザッコブは降参したし、とりあえず……勝ちってことでいいのかな?
戦いが終わってようやく周りの状況に気が配れるようになった俺は、機体越しに辺りを見回すが、観客はシーンとしていた。
「あ、あれ……? なんかまずかったか?」
やっべ、なんかルール違反的なことしちゃったのかな。
「――――はっ! け、決着です! まさかまさかの展開! なぁんということでしょう! 一般等級が……銀等級の魔動人形を下しました! こんな戦い、かつてあったでしょうか!? いいえ、ありません! 大番狂わせが起きましたぁ! まさに下克上! 史上初の快挙っ! 今日、今ここにいる私たちは、新たな歴史の証人となったのですっ!」
おお……めっちゃ言うやん。そんな凄いのか?
実況の人が早口でまくし立てると、一拍置いて会場が一気に沸いた。
「す、すげぇもんを見ちまったぜ……! 俺、今日観に来て良かった!」
「私感動しちゃったわ。決闘を見て泣くだなんて思わなかった……」
「ヴァイシルト家が木偶の坊で戦いに挑んだ時は勝負を捨てたかと思ってたんだが……違ったんだな」
「ああ、きっとお抱えの人形技師の実力を見せつけるため、わざと一般等級の魔動人形を選んだに違いないぜ」
「やっぱ英雄の家系はすげぇな……」
いつまでも鳴り止まない歓声を受け、俺は自らの機体に手を振らせていた。
(やっべ……降り方がわかんねぇ)
俺的にはさっさと退場したいのだが、どうやったら降りれるのかがわからなかったので、しばらくの間機体に乗ったまま愛想を振り撒いていたのであった。
爆煙が晴れ、姿を現したシルバライザーは右腕が完全に消し飛んでいたものの、未だ健在だった。
くっ、照準がずれたのか!?
でもライフルを持っていた右手は破壊した。これで遠距離での攻撃手段は失われただろう。よし、ここで一気に攻めきる!
「もう一発くらわしてやるぜ! いけっ!」
「――なめるなっ!」
再びトリガーを引くと、同じように大口径砲が放たれる。
しかし、今度は放たれる直前にシルバライザーが素早く横へと移動したので、かすりもしなかった。
最初の一発は油断していて反応が遅れたんだろう。まさか銃口を向けられるとは思ってなかったんだろうな。
でもこっちが優勢なのは変わらない。どんどん撃ちまくろう。
「くっ、速いな! 当てられるか……?」
機動力を活かして闘技場内を縦横無尽に動き回るシルバライザー。でもさっきので射撃の感覚は掴んだ……次は当てる!
「よし、ここだっ! ――――ん? 魔力充填中!? くそっ、クールタイムがあるのか!?」
追撃を放とうと試みたのだが、トリガーを引いても無反応。おかしいと思って計器類を見ると、魔力充填中の表示があった。
くっ、さすがにこの大口径砲の連射は厳しかったのか……!? 多分この感じだと再使用まで数十秒はかかる。こうなったら接近戦に持ち込むしかないか。
「ヒャヒャヒャッ、どうやら魔力切れのようだな! このまま仕留めさせてもらう!」
敵は盾を捨て、腰部にマウントされていたショートソードを構えた。その刀身はエネルギー的なものを纏っている。
……あれで斬られたらヤバそうだな。
「……だが、接近戦なら望むところだ!」
装甲と馬力なら間違いなくこっちが上だ。受けて立つ!
「おおおおっ!」
「はあああっ!」
ガキィィィィンッ!
巨大な鉄と鉄とが正面からぶつかる音が会場に響く。
相手の剣はこちらの胸部へと命中しているが、こっちも相手の足をアームで掴むことに成功している。
計器が赤く点滅し、警告音を発する。幸いなことに、エネルギーを纏った剣はこちらの装甲を切断するに至らなかったが、警告を見るに真っ二つになるのも時間の問題だろう。
だが足は捉えた。さすがに握り潰すことは出来ないようだ。
奴は片腕を失っている。防御は出来ないだろうし、次の一手は必中……だがどこを狙えばいい!?
「――っ! やっぱりか!」
ザッコブの機体を見た時に感じた違和感の正体……流線的なデザインにも関わらず、突起物が多いように見えたのは、ゲート跡が残っているんだ。
なんて雑な作り方だ、ちゃんとゲート処理ぐらいはしろよ!
だがそのおかげで弱点を見つけたぞ……!
胴体のところ……ゲート跡が干渉してパーツが完全に閉じきっていない、隙間があるぞ!
俺は咄嗟にクローアームの先端をその隙間に滑り込ませ、出力全開で引き剥がそうと試みる。
「うおおおっ!」
「――はっ! 無駄な足掻きをっ!」
メリメリと、装甲が剥がれる音が聞こえる。やはり、作りが甘い分脆くなっているようだ。
「なっ!? おい、まさか……やめろっ!」
慌てて剣を引き、こちらの攻撃を妨害しようとするが、一手遅かったな。
「どりゃあぁぁっ!」
ガコンッ!
大音と共にシルバライザーの胸部パーツを引き剥がす。
すると、コックピットだろうか。球体のようなものの中にザッコブが居るのを目視できた。
「あわ、あわわわっ……! 来るなっ! やめろ、やめてくれっ、降参する! 降参するぅ!」
いや、別に何かする気はなかったんだが……まぁ生身の状態で至近距離からこいつのモノアイに睨まれたらビビるよな。
ザッコブは降参したし、とりあえず……勝ちってことでいいのかな?
戦いが終わってようやく周りの状況に気が配れるようになった俺は、機体越しに辺りを見回すが、観客はシーンとしていた。
「あ、あれ……? なんかまずかったか?」
やっべ、なんかルール違反的なことしちゃったのかな。
「――――はっ! け、決着です! まさかまさかの展開! なぁんということでしょう! 一般等級が……銀等級の魔動人形を下しました! こんな戦い、かつてあったでしょうか!? いいえ、ありません! 大番狂わせが起きましたぁ! まさに下克上! 史上初の快挙っ! 今日、今ここにいる私たちは、新たな歴史の証人となったのですっ!」
おお……めっちゃ言うやん。そんな凄いのか?
実況の人が早口でまくし立てると、一拍置いて会場が一気に沸いた。
「す、すげぇもんを見ちまったぜ……! 俺、今日観に来て良かった!」
「私感動しちゃったわ。決闘を見て泣くだなんて思わなかった……」
「ヴァイシルト家が木偶の坊で戦いに挑んだ時は勝負を捨てたかと思ってたんだが……違ったんだな」
「ああ、きっとお抱えの人形技師の実力を見せつけるため、わざと一般等級の魔動人形を選んだに違いないぜ」
「やっぱ英雄の家系はすげぇな……」
いつまでも鳴り止まない歓声を受け、俺は自らの機体に手を振らせていた。
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