スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
22 / 120
【一章】異世界でプラモデル

21.第二王女

しおりを挟む
 デイビットさんに連れられ、俺とエドワルドさんは闘技場の一番高い所にある特等席……いわゆるVIP席へと案内された。

 一般の観客席とは違い、広々とした空間に席が数個ポツンとあるだけの、悠々とした空間だ。そしてそこには見覚えのある後ろ姿があった。
 
「あれは……ザッコブか」

 肩身狭そうにしてその場に跪いているザッコブ。あいつ……一人で何してるんだ?

「王女殿下、ヴァイシルト家の者並びにケイタ・サガミをお連れしました」

「……来ましたか。デイビット、ご苦労様。貴方は下がってよくってよ」

「はっ」

 王女様らしき人物にそう言われ、デイビットさんは早々に退室してしまう。
 今この場に居るのは俺とエドワルドさん、ザッコブに王女様とその護衛っぽい人が2人。合計6人だけだ。
 王族なのに護衛が2人だけなんて、ちょっと危ないんじゃないかな。

 ……いや、それにしてもこの王女様、かなりの美少女である。比べるのもアレだが、シルヴィアとは別系統の美人さんだ。特に胸のあたりが豊かでらっしゃる。

 艶のある長い真紅の髪を左右2つにまとめている。ツインテールってやつだ。そして、まとめた髪は螺旋状に巻かれている。
 ……こ、これが縦ロールってやつか。リアルなやつは初めて見たぜ。なんだろう、触ってポヨンポヨンしたい欲求に駆られる。

 そしてはち切れんばかりの胸部を見せ付けるように張りながら、高飛車お嬢様然とした高圧的な態度で語りだした。

「先の決闘、見事でしたわ! まずは決闘で賭けていたものを、きちんと譲渡しなさい。アークライト王国第二王女、フラムローゼ・アークライトが責任を持って見届けますわ!」

 こうやって王家の人間が見届けることで、ただの口約束ては済まさないように強制力を持たせたつもりだろうが、失敗したようだな。
 負けてしまった今、ザッコブに逃げ道はない。

 こっちが負けていたら、ヴァイシルト家が管理する領地の権利書、家財全てを差し出す約束だったな。
 ザッコブは何を賭けていたんだっけか。

「…………」

 ザッコブは依然として黙ったままだ。さあ、早く俺の前にひれ伏せ! そして謝れ! バーカバーカ!

「……ザッコブ・カマセーヌ。このわたくしが命じているのよ? 負けたのはあなた。早くしなさいな」

「――フラムローゼ王女殿下、お言葉ですが彼らはもう報酬を手にしております。彼らが勝った場合の報酬は、『望むものが返ってくる』こと。そう、彼らは『失われかけた名誉を取り戻す』という報酬を既に受け取っているのですよ!」

 はぁ!? そんなの屁理屈もいいところだろ!?
 そんなんで納得できるわけがない。エドワルドさんはほぼ全て財産を賭けていたんだぞ。
 
「――ふ、ふざけるな! 貴様が当家の家宝を盗んだのだろう!? それを返してもらうために我々は戦ったのだ!」

「盗んだぁ? 何の証拠があるんだ! もし疑うのならばうちの宝物庫でもなんでも調べてみるといい。どうせ何も出てきやしないんだからな」

「貴様っ……!」

「――あなたたち。わたくしの前で醜く言い争いなど、無礼が過ぎますわよ」

 王女様の鋭い目付き、その声色にゾクッとしてしまう。これほどの気迫……やはり王家の人間ともなると、こういった場面を何度も経験しているのだろう。『本物』の圧力を感じた。

「「失礼しました」」

 エドワルドさんとザッコブは、すぐさま口喧嘩を止め、姿勢を正した。
 
「――はぁ。双方の間に食い違いがあるようなので、わたくしの裁量で決めさせていただきますわ。よろしくて?」

「「仰せのままに」」

 王女様にそう言われちゃ了承する他ないでしょうよ。
 まあこっちが勝ったわけだし、悪いようにはならないだろうから、俺としては気が楽だな。

 王女様は護衛の人から書状を受け取り、さっと一読していた。あの書状にこの決闘の詳細が書かれているんだろうな。

「ふむふむ……ヴァイシルト家が負けた場合は、『領地の権利書と財産の全てを相手に譲渡する』。カマセーヌ家が負けた場合は、『望むものを返却する』……ね」

「そ、そうです王女殿下! 先も言ったとおり、彼らは既に――」

「黙りなさい。今わたくしが話しているのですよ」

「――っはい!」

 ザッコブはすっかり萎縮してしまっている。
 蛇に睨まれた蛙とはこのことだな。まあ国のトップ相手じゃ誰でもそうなるか。

「望むもの……ね。ヴァイシルト卿、あなたの望む物はなんだったのかしら?」

「はっ、当家の家宝である『絶界宝盾ぜっかいほうじゅんアイギス』にございます」

「その名はわたくしも知っていますわ。かの大戦で大いに活躍したとか。ところで……どうしてあなたはそんな大切なものを失ってしまったのかしら?」

「――留守の間賊に入られたようでして……全ては私の不徳の致すところでございます」

「なるほど。我が国にとっても大事な戦力の1つ……それを不注意で失うなど、大失態もいいところですわね」

「面目次第もございません……」

 アイギス……シルヴィアの言ってたヴァイシルト家の代名詞となる白金等級プラチナムグレードの兵装か。
 やっぱり家宝っていうのはそれのことだったんだな。国にとっても重要な物っぽいし、必死で取り返そうとしたのも頷ける。

 で、それを返してもらおうと財産の全てを賭けていたにもかかわらず、ザッコブはシラを切ってると。
 なんだあいつ、いいかげんにしろよ!

「……確かに、王家の元に送られてきたこの書状には、具体的な物品名は記されていないわね」

「そ、そうです王女殿下。それにその家宝とやらが当家の手元にございませんので、そんな要求をされても困ります」

「――ああ、そうそう。ザッコブ・カマセーヌ。噂に聞いたのだけれど、最近懐が潤っているようですわね? 少し気になって調べさせてもらいましたが、元々あなたの家には銀等級の魔動人形なんて買える資金はなかったはずよね?」

「あ……いえ、それは……」

 ザッコブの目が泳いでいる。やましいことがある証拠だ。
 まさかとは思うが、あいつ……ヴァイシルト家の家宝を売ったのか!?
 
「それと、最近犯罪組織に大量の資金が流れているらしいのよ。奴らの動きが活発になっていい迷惑よ。――どこかでいいパトロンでも見つけたのかしら。ねぇ? ザッコブ・カマセーヌ」

「は……はは、そうなのですね。初耳です」

 ザッコブは言葉ではそう取り繕っているが、冷や汗ダラダラである。
 内心ではめちゃくちゃパニクってるんだろうな。ざまぁ。

 ……でも、売ってしまったのならば家宝は返却されないんじゃないか?

 そんな一抹の不安を抱えながら、俺たちは王女様の判決を待っていたのだった。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...