スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
56 / 120
【三章】技術大国プラセリア

5.キャッツシーカー

しおりを挟む
 カティアの背中を追い、工場の合間にある通路を歩く。
 
「これだけすごい設備が山ほどあるんだ、見学が楽しみだよ」

 歩きながらもキョロキョロと辺りを見回すと、見たこともない施設やら機材やらが散見できる。
 どんな使い方をするのだろう、どんな役割があるのだろうかと否応なしに知的好奇心が高まっていく。

「……あ? 何勘違いしてんだ。ほら、オレたちの行き先はあっちだよ」

 俺の期待に反し、そう言いいながらカティアはある方角を指差した。
 俺はその方角を見るが、そこには高い壁がそびえ立っているだけだった。

「壁……?」

「ちげぇよ! よく見ろ下だ、下!」

 下……?

「あっ!? 地下への通路か!」

 カティアに指摘され、地面を見ると五メートル四方の鉄製ハッチのようなものがあった。
 カティアはおもむろにハッチの端の方へと近付き、埋め込まれていたのであろう鉄製の円柱を引き上げ、百八十度回転させてから再び押し込んだ。

 すると、ギギギッという鉄の軋む音と共にハッチがゆっくりと開き始めたのだ。

「おおっ、秘密基地っぽいな!」

 こういうの、世の中の男子は大好物ですよ。
 まあこの世界ではこれが当たり前なんだろうし、喜ぶのは俺だけなんだろうけども。

「……秘密でもなんでもねぇ、この都市の居住区はぜーんぶ地下だ。こういった地下への通路がそこらじゅうにあるんだよ」

 ほほう、地上は工場で埋め尽くされているから地下で暮らしているってことか。

「さ、付いてこい。はぐれんなよ」

「お、おう」

 カティアに続き地下通路に入ったが、地下なのに思った以上に明るい。
 聞くと、光を照射する小型の魔道具がいくつも壁に埋め込まれているらしい。俺の体感では地上と殆ど変わらない明るさだ。

 しばらく奥に進むと、今度は重厚そうな鉄の扉が行く手を阻んでいた。
 カティアはさっきのハッチと同じ要領で扉を開ける。すると、目の前には広大な空間が広がっていた。

 今俺たちがいる場所は天井にほど近い位置で、空間の全貌がよく見渡せた。

 眼下にはアークライト王国とは違った様式の家屋が所狭しと軒を連ねており、それが視界のずっと先まで広がっている。

 行き交う人々には獣の耳や尻尾があり、人によっては頭部が動物そのものって人もいる。その光景がここが獣人の国だということを改めて実感した。

「うおーっ、すっげぇ……。なあカティア、この辺少し散歩して見て回ってもいいか?」

 螺旋状の階段を下りながら、改めて街並みを見てみたいと思い、カティアに散歩しないかと持ちかける。

「ダメだ。先にうちのカンパニーに来てもらう」

 逸る気持ちとは裏腹に、返ってきた言葉は端的な否定の台詞だった。
 目の前にあるおもちゃを取り上げられた子供のように、俺はがっくりと肩を落とす。
 
「あぁ……そんなに落ち込むなよ! 落ち着いたら案内してやっから!」

「えっ、マジで!?」

 先の落ち込みぶりはなんだったのかと言わんばかりに、一瞬で機嫌が良くなる俺。我ながらテンションおかしいな……。
 
「現金なヤロウだぜ……いや、ガキなだけか?」

「はは、よく言われる」

「まあ……ガキっぽい方がウチのボスと相性いいかもな。ほら、着いたぞ」

 階段を下りきってすぐの所にそれはあった。
 『キャッツシーカー』と、手書きの文字で綴られ、猫の顔を模した木製の看板が軒先に吊り下げられている、他と比べてだいぶみすぼらしいボロ屋だ。

「えと……もしかして、ここがカティアのカンパニー?」

「――――そうだ」

 なんというか……会社というか、家としても機能しているのか怪しいレベルだろ。
 いやいや、疑っちゃいけない。中はめちゃくちゃハイテクみたいなパターンだってあるしな。

「おじゃましまーす……」

 爆撃を受けたかのような、やけに歪で扉もなく開きっぱなしの入り口をくぐり中へと入る。

 散乱する鉄クズ、積み上げられたゴミの山……おおよそ外観通りの内装に俺の淡い期待は裏切られ、同時に不安が胸をよぎった。

「えーと、カティアさん……?」

「あのバカ……ちゃんと片付けておけって言ったろうが――やばっ!? 伏せろっ!」

「あだっ!」

 ドカァァァーーンッ!

 カティア頭を掴まれ、地面へと無理矢理に組み伏せられた次の瞬間、奥から爆発音が轟き、爆風と共に煙が押し寄せる。

「ゴホッ! ゲホッ! ――な、なんだ!?」

 襲撃があったのかとすら思ったが、カティアは煙が晴れるとゆっくりと立ち上がり、何事も無かったかのように服に付いた埃を払っていた。

 まるでこれが日常茶飯事であるかのような振る舞いだ。

「ふぇぇ……や、やっちまったのだ~」

 気の抜けた台詞と共に、奥からふらふらとした足取りで何者かが現れた。

 全身黒ずくめ……というか肌やら髪まで真っ黒だった。多分煤が付いたのだろうが……まるで某推理漫画の犯人のようなシルエットだな。
 小柄であることから、おそらく子供だということが予測できる。

「き、君は誰だ……!?」

「ん? この声は……」

 しまった……思わず喋っちゃった。
 もしかしたら爆弾魔かもしれないし、迂闊だったか!?

 爆発のせいで腰が抜けて未だ立ち上がれない俺に、黒ずくめの子供はゆっくりゆっくりと近付いてくるのだった。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...