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【三章】技術大国プラセリア
32.日常
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第二選考の戦いから一週間。結果を待っている間も魔動人形の改造やらに時間を費やしつつ、カティアやリンと市場に行ってみたりと慌ただしくも充実した日々を送っていた。
そしてとある日に、ようやく結果を知らせる書類が届いたのだった。
「おうケイタ。ようやく通知が来たぜ」
郵便受けに封筒が来ていたのを確認したカティアが、その封筒をうちわのようにしてパタパタと扇ぎながら居間へと現れた。
「やっとか。開けてみてくれよ、まあ合格は間違いないから心配すんなって」
と言いつつも内心ではドキドキしていた。なにせ合否は相手側のさじ加減一つで変わってしまうのだ。
試験官を倒せば合格と言われていたが、別に正式に決まっているルールではないので、その辺は機嫌次第でいかようにもできるだろう。
「リンが開けるー!」
「ん、ほらよ」
「わーい! へへ、こっちだよー!」
カティアの周りでピョンピョンと跳ねていたリンは、カティアから封筒を受け取るなり別の部屋へと走り去っていった。
「ちょ、どこ行くんだよリン! ったく……ケイタ、リンを捕まえてきてくれ」
「俺がか? カティアの方が早く捕まえられるんじゃないか?」
俺とカティアじゃ身体能力に天と地の差がある。カティアが本気を出せばおそらく一瞬でリンに追い付けるはずだ。
「多分だけどよ、ありゃあお前に追いかけて欲しいんだと思うぜ? わりぃけど付き合ってやってくれよ」
「そ、そうなの? まあ……それじゃあ行ってくるよ」
リンを追いかけて部屋に入るが、姿が見当たらない。しかし、ここは角部屋なので間違いなくこの部屋のどこかにいるはず。
「うーん。――お」
きっとどこかに身を隠しているのだろうと予想し、部屋の中を見回していると、物陰からゆらゆらと揺れる尻尾が見え隠れしている。
「ふふ、頭隠して尻尾隠さずだぞ、リン」
気付かれないようゆっくりと近付き、一気に捕まえる作戦を実行だ。俺は可能な限り気配を消しながら物陰へと歩みより、そして勢いよく飛び出した。
「見つけたぞリン――――って、ありゃ?」
物陰に隠れていたのはリンではなく、尻尾の付いた半球状の物体だった。
「じゃーん! ドッキリ成功なのだ!」
俺が呆気に取られていると、背後からリンの声が聞こえた。どうやらこの謎の物体はフェイクで、俺はまんまとリンの作戦に引っ掛かったみたいだ。
「へへー。んしょ、んしょ……」
大きな箱の中に身を隠していたリンは、してやったり、といった表情で箱から出てきて、俺の前へとやってきた。
「今回はリンの勝ち! ケーくんは、残念でした」
「いやあ……完全に騙されちゃったよ。さすがリンだな」
「にゃははー」
得意気なリンの頭にポンポンと触れると、リンは嬉しそうに目を細める。
「ケーくんには、残念賞としてこれをあげます!」
そう言ってリンは俺に例の封筒を手渡してきた。かまって欲しくて持ち去ったのだろうが、本気で俺を困らせるつもりはないのだろう。あっさりとそれを手放す。
「おめでとう、ケーくん!」
「残念賞だけどね」
「ううん、合格おめでとうってことだよ」
「ん? いつの間に中身を見たんだ――って開封されてないじゃないか」
封筒のどこを見ても開封された形跡はない。内容を確認してもいないのに『合格おめでとう』とは、いったいどういうことだろうか。
「ケーくんなら絶対大丈夫だって、リンは信じてるから!」
「リン……ありがとな。じゃあ、リンも一緒に封筒の中身を見てくれるか?」
リンが全幅の信頼を置いてくれていることに気恥ずかしさを覚えながら、早速封筒を開封していく。
これでダメだったら格好悪いな、なんて思いながら恐る恐る書類に目を通すと、大きな時で合格の二文字が目に入った。
「おおっ! やった、やったぞリン!」
「さすがケーくん! いぇーい!」
ハイタッチを交わしながら自分の事のように喜ぶリン。俺もこれでようやく肩の荷が下りた。
まだ全部が終わったわけではないが、結果を待ってハラハラする時間が無くなっただけ、だいぶ気が楽になる。
「ん? もう一枚あるな」
合格を報せる書類の他にもう一枚、また別の書類があった。確認すると、次の選考の日程などが事細かに記載されていた。
「ふむふむ……うえっ!? 明日ぁ!?」
あろうことか、選考の日程が明日に設定されていたのだ。まだ朝なので丸一日はあるが、それにしても急すぎる。
「明日やるの!? リンとカーちゃんで応援に行くね!」
「お、おう。ありがとな。まあ……今更焦っても仕方がないか、やれることはやってきたつもりだし」
次の選考のために毎日コツコツと準備は進めてきた。通知の翌日が本番なのは予想外だったけど、問題なのは俺の心の準備だけだ。
逆に言えば間があかなかったことで、いい緊張感を維持することができるのでないだろうか。
俺はそうポジティブに捉えることにして、残る時間をどう使うかを考え始めた。
そしてとある日に、ようやく結果を知らせる書類が届いたのだった。
「おうケイタ。ようやく通知が来たぜ」
郵便受けに封筒が来ていたのを確認したカティアが、その封筒をうちわのようにしてパタパタと扇ぎながら居間へと現れた。
「やっとか。開けてみてくれよ、まあ合格は間違いないから心配すんなって」
と言いつつも内心ではドキドキしていた。なにせ合否は相手側のさじ加減一つで変わってしまうのだ。
試験官を倒せば合格と言われていたが、別に正式に決まっているルールではないので、その辺は機嫌次第でいかようにもできるだろう。
「リンが開けるー!」
「ん、ほらよ」
「わーい! へへ、こっちだよー!」
カティアの周りでピョンピョンと跳ねていたリンは、カティアから封筒を受け取るなり別の部屋へと走り去っていった。
「ちょ、どこ行くんだよリン! ったく……ケイタ、リンを捕まえてきてくれ」
「俺がか? カティアの方が早く捕まえられるんじゃないか?」
俺とカティアじゃ身体能力に天と地の差がある。カティアが本気を出せばおそらく一瞬でリンに追い付けるはずだ。
「多分だけどよ、ありゃあお前に追いかけて欲しいんだと思うぜ? わりぃけど付き合ってやってくれよ」
「そ、そうなの? まあ……それじゃあ行ってくるよ」
リンを追いかけて部屋に入るが、姿が見当たらない。しかし、ここは角部屋なので間違いなくこの部屋のどこかにいるはず。
「うーん。――お」
きっとどこかに身を隠しているのだろうと予想し、部屋の中を見回していると、物陰からゆらゆらと揺れる尻尾が見え隠れしている。
「ふふ、頭隠して尻尾隠さずだぞ、リン」
気付かれないようゆっくりと近付き、一気に捕まえる作戦を実行だ。俺は可能な限り気配を消しながら物陰へと歩みより、そして勢いよく飛び出した。
「見つけたぞリン――――って、ありゃ?」
物陰に隠れていたのはリンではなく、尻尾の付いた半球状の物体だった。
「じゃーん! ドッキリ成功なのだ!」
俺が呆気に取られていると、背後からリンの声が聞こえた。どうやらこの謎の物体はフェイクで、俺はまんまとリンの作戦に引っ掛かったみたいだ。
「へへー。んしょ、んしょ……」
大きな箱の中に身を隠していたリンは、してやったり、といった表情で箱から出てきて、俺の前へとやってきた。
「今回はリンの勝ち! ケーくんは、残念でした」
「いやあ……完全に騙されちゃったよ。さすがリンだな」
「にゃははー」
得意気なリンの頭にポンポンと触れると、リンは嬉しそうに目を細める。
「ケーくんには、残念賞としてこれをあげます!」
そう言ってリンは俺に例の封筒を手渡してきた。かまって欲しくて持ち去ったのだろうが、本気で俺を困らせるつもりはないのだろう。あっさりとそれを手放す。
「おめでとう、ケーくん!」
「残念賞だけどね」
「ううん、合格おめでとうってことだよ」
「ん? いつの間に中身を見たんだ――って開封されてないじゃないか」
封筒のどこを見ても開封された形跡はない。内容を確認してもいないのに『合格おめでとう』とは、いったいどういうことだろうか。
「ケーくんなら絶対大丈夫だって、リンは信じてるから!」
「リン……ありがとな。じゃあ、リンも一緒に封筒の中身を見てくれるか?」
リンが全幅の信頼を置いてくれていることに気恥ずかしさを覚えながら、早速封筒を開封していく。
これでダメだったら格好悪いな、なんて思いながら恐る恐る書類に目を通すと、大きな時で合格の二文字が目に入った。
「おおっ! やった、やったぞリン!」
「さすがケーくん! いぇーい!」
ハイタッチを交わしながら自分の事のように喜ぶリン。俺もこれでようやく肩の荷が下りた。
まだ全部が終わったわけではないが、結果を待ってハラハラする時間が無くなっただけ、だいぶ気が楽になる。
「ん? もう一枚あるな」
合格を報せる書類の他にもう一枚、また別の書類があった。確認すると、次の選考の日程などが事細かに記載されていた。
「ふむふむ……うえっ!? 明日ぁ!?」
あろうことか、選考の日程が明日に設定されていたのだ。まだ朝なので丸一日はあるが、それにしても急すぎる。
「明日やるの!? リンとカーちゃんで応援に行くね!」
「お、おう。ありがとな。まあ……今更焦っても仕方がないか、やれることはやってきたつもりだし」
次の選考のために毎日コツコツと準備は進めてきた。通知の翌日が本番なのは予想外だったけど、問題なのは俺の心の準備だけだ。
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