スキル『モデラー』で異世界プラモ無双!? プラモデル愛好家の高校生が異世界転移したら、持っていたスキルは戦闘と無関係なものたったひとつでした

大豆茶

文字の大きさ
120 / 120
エピローグ

しおりを挟む



「――ええ、正直な話、あのときの戦いをこの目で見ていなかったら、あなたの話を聞いても荒唐無稽だと断じたでしょうね」

「なるほど……では、アノレス殿はは真実だとおっしゃるので?」

「それは私にもわかりません。噂とやらについては、実際に確認したわけではないですから。……ですが、彼らならばそれぐらいはしてもおかしくない。そう言っているのです」

 この日、アノレスはひとりの記者から取材を受けていた。噂についての当事者、国を救った英雄と讃えられる『サガミ家』の戦いの目撃者として、一番新しい記憶を持っていたからだ。

「しかし、質問した僕が言うのもなんですが……現実的にあり得る話なのか、いまだに信じられません。そもそも、あの厄災竜を滅ぼしたとかって話も出鱈目なんじゃないかと思ってるぐらいですよ」

 アノレスよりも少々若いぐらいだろうか。オールバックに整えた白髪混じりの頭をぽりぽりと掻きながら、記者の男は訝しげにそう告げた。
 彼は巷で流れる噂の真偽を探るため、『サガミ家』についての情報収集をしていた。だが、集める情報すべてに現実味が感じられず、全部が出鱈目なのではとすら思っていた。

「確かに、厄災竜は数百年周期で現れる存在ですからね。前回現れたのが一年前だから、次に現れるのを確認できるとしたら数百年後になる。本当に厄災竜を倒したのかを確認するには、それこそ気の遠くなる時間が必要になるでしょう」

「でしょう? 確認のしようがないんですよ。つまり証拠がない。いやね、僕の推測では、厄災竜はたまたま人里を通らずに、深い眠りについたのではないかも考えてるんですよ。たまたま運よくやり過ごせたことを、『サガミ家』の連中が、自分が倒したと虚勢を張ってるだけじゃないのかともね」

 記者のその言葉に、アノレスは深くため息を吐く。この記者が帝国から来たとはいえ、対岸の火事のような言い分と、英雄の戦いを虚仮にしたような発言に呆れてしまったからだ。
 そんな彼の考えを正すために、アノレスは話し方を変えながら、こう言った。

「……それは違う。私はしっかりとこの目で見た。厄災竜を討ち滅ぼすその瞬間を。その勇姿を。それだけは間違いないない。誓ってもいい、厄災竜は二度と現れない」

「そ、そうですか。失礼しました」

 語気の強まったアノレスの言葉に、記者は気押されてしまう。一国の将軍たる男にここまで言わせるのだ、彼にとっては信じがたいことだが、サガミ家の話について信憑性が増してきたと認めざるを得ない状況になってきた。
 だが、心の底から信じきれていない記者は、新たな質問を投げ掛ける。

「――しかし、その厄災竜を滅ぼした張本人である『サガミ家』の戦闘記録はそう多くないですよね? それは何故でしょうか?」

 記者がアノレスの話を信じきれないのには理由がある。それは、サガミ家が人前に現れることが極端に少ないのだ。
 どの国にも属さないにも関わらず、一国に匹敵する戦力を保有しているとさえ言われているサガミ家だが、その力を目の当たりにした者は少ない。
 公式に残っている戦闘記録は、闘技場で格上相手に二度勝利を収めたこと。そして、プラセリアで開催された選考会を最終戦まで勝ち抜いたこと。記者の調べた限りでは、それぐらいのものだった。
 確かに素晴らしい戦績ではあるが、だからといって、あの厄災竜を倒せるのかと問われれば疑問が残ってしまうのだ。

「……そうですね。まあ、あの力は人に向けるものではない、そういうことですよ」

「と、いいますと?」

「彼らの戦いは次元が違う。少なくとも、我が国の戦力では相手にもならないでしょう。故に、その剣を振るえる場所は限られている。だから情報が少ないのでしょう」

 一旦落ち着き、口調を戻したアノレスが、厄災竜との戦いを思い出しながら言った。

「ほう。では、サガミ家の力は一国に相当するというのは真実であるということですか」

「ええ、少なくとも魔動人形の性能においては、この世界で並ぶものはないでしょう」

「そう……ですか」

 手帳に殴り書きをしながら、記者の男はため息混じりに呟いた。
 堅物で知られるアノレスにこうも断言されては、信じざるを得ない。先程話していたように、記者はサガミ家に対して懐疑的であった。だが、アノレスの言う通り、厄災竜を滅するほどの力を持っているのならば、が本当だという裏付けにもなる。

「――ほら、見てください。彼らはあそこで戦っているのかもしれません」

 アノレスが空を指差したので、記者の男は太陽の眩しさに目を細めながら、空を見上げる。

「……? なにか、光っている?」

 ごく僅かに見える程度だが、記者の目には、なにかが明滅しているのが見えた。
 遠く遠く、遥か彼方で、爆発のようなものが連続して起きている。そう思わせるような光だ。

「自然現象ではありえない……では、やはり……」

 記者が調べていた噂とは、『空の彼方より謎の生物が降ってきた』『突如巨大な船が現れ、天へと飛び去った』という噂だ。
 その噂の影には、サガミ家が絡んでいる。そう睨んだ記者の勘は、アノレスの証言により裏付けられた。

「そうですね。おそらくは、空の彼方から来る驚異に対して、あの方たちは空飛ぶ船に乗って戦ってくれているのでしょう。人知れず、我々を守ってくれているのです」

 アノレスの言葉はただの憶測にすぎなかったが、彼の胸中には根拠のない自信があった。

 ――あの日、あの時、アノレスが目撃したように、どこか緊張感に欠けた雰囲気で戦っているのだろう。
 
 愛するこの世界を、守るために――。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

A・l・m
2025.03.02 A・l・m

読了。

綺麗な完結おめでとうございます。


うーむ、綺麗に終わってるから数年後とか子供(子孫)とかしか続け様が無さそうだな……。
まあ、色々敵と戦ってるから無理じゃないけど。

……クジャク式なのか作れるようになりました!なのかはちょっと知りたい所ではあるな……。

解除
A・l・m
2025.02.20 A・l・m

回想編の途中まで読んだ

他の人は兎も角、パパは駄目だな……
隠してある家宝が盗まれた時点で相手が家の奥まで入り込める犯罪者だと分かりきってるんだし、どんな方法かで裏切らせてるのは疑うべき

金とかじゃなくて家族が拐われるとかいくらでもありうるのに最大戦力(プラモデル箱)を簡単に持ち出せるとかダメダメ
周辺監視?の兵士、騎士とかまで裏切ってないか心配なレベル

解除
A・l・m
2025.02.20 A・l・m

狼登場まで読んだ感想

木工でもするのかと思ったら本当にプラモデルだった……(悪くはない)

道具召喚(変形)で武器になるとかかと思った(まだ出来ないとは限らない)

ランナーで改造が出たので武器作成とか改造とか、人用装備とか作るかと思った(これからやるかも知れない)
というより安い機体ならものすごく改造しても良さそうな……

解除

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。