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ノンケの同僚に恋してる話
お題「帰り道」「寄り道」
しおりを挟む一緒に組まされた地方イベントのコンペの帰り道。
「じゃあ俺今日直帰だから」
駅の交差点のところで、事務所に報告に向かうはずの宮野に告げれば、無言でぐいと腕を引かれた。
「……なんだよ、俺は手伝わねえぞ」
仕事を押し付けられると思った俺は、咄嗟に腕を振り払う。
「違う。ご褒美」
至近距離でニっと笑った宮野に、一瞬心臓が跳ねた。 『ご褒美』という言い方に、妙な期待をしてしまった俺が馬鹿だったのかもしれない。再び俺の腕を引く宮野に、そのまま引きずられる形で着いていった場所を見て、俺は心の底から後悔した。
***
(うるせー!!)
大音量で流行歌が流れる店内に、悲喜こもごもの声が飛び交う。
宮野が真剣な顔で、かれこれ30分も対峙しているクレーンゲームの箱からは、やたらと軽快な電子音の曲が鳴り続けている。
「あ、クソ。また落ちた」
がっくりと肩を落とす宮野の前で、無情にも流行りの動物キャラクターのぬいぐるみがまた落ちた。
「いつまでやってんだ。お前コレそんなに好きなの?」
「いや、特別好きとかじゃない」
「じゃあなんでこんな金突っ込んでんだよ!」
「やり始めると止まんねぇ性格なんだよ。俺は」
なんだそれ。まあ確かに、宮野は凝り性なところがあるとは思うが。
ズボラな性格のくせして、設計図はやたらと緻密だし、仕事は早い。今日のコンペの結果が好感触だったのも、八割方コイツの仕事が評価された結果だし。そう考えると俺は、この諦めの良さがダメなのかもしれない。
コイツとの距離の詰め方だって、未だわからないまま。漠然と抱かれたいとは思っても、こんな風に二人で過ごす時間を心地よいとも楽しいとも思えず、ただ時間の無駄って思っちまう。
(だって別に、付き合うとかそんなの絶対ないし)
だったらこの時間って、なんなんだって思う。
(帰っちまおうかな……)
連れて来たくせに、宮野はすっかりゲームに夢中で俺のことなんて見ちゃいない。
俺は昔から、こう言う騒がしい場所が好きじゃない。
周りに影響されやすいのかもしれない。雑音が混ざると思考が邪魔されて、上手く感情がコントロール出来なくなる。
そう言えば、宮野に変な気を起こしたのも、騒がしい飲み屋の店内だった。
久々に新しい男が入って来たって、妙にテンション高く絡んで来る野上さん相手に、宮野は黙々と気に入った皿の鳥スティックをバリバリ毟っていた。こういう奴って、絶対自分がブレないんだろうなって思ってたら、案の定だ。どこまでもマイペースな宮野に、俺ばっかりが振り回されている。
(あの、いつかのクッセェパーカーの匂いってここのだったのか)
鼻にまとわりつく煙草の匂いに、俺は顔をしかめる。
てっきり駅前のパチ屋だと思っていたのだが、比べれば幾分か健全な場所だったようだ。そう言えばあの日に買った柔軟剤もそろそろ切れそうだったな、とぼんやり考えていたところで、
「うっしゃー!」
と、普段ローテンションな宮野にしては随分と元気の良い声がして、俺は弾かれたようにそっちを見た。
すると、得意げな顔の宮野が、俺に今しがた取ったばかりの戦利品を俺に「ん」と突き出している。
「なに」
「やる」
「はぁ? いいよ、お前随分金かけたじゃん」
「だな。高いんだから、大事にしろよ」
もう気が済んだのか、宮野はカバンを持って店の出口に向かっている。
「お、おい。待てよ」
慌てて後を追う俺は、仕方なく押し付けられたぬいぐるみを台に備え付けてあったビニール袋に突っ込んだ。
「あのキャラなに」
「知らん。若い子に流行ってんだって。ほら、コンビニとかでもよく見る」
「ああ」
いい年をした男が、そんなモン貰ってもどうしろって言うんだか。
「――お前まさかご褒美って、これか」
「そう。今日のプレゼン、多分勝ち確だし、お前も2割程度頑張ったからな」
「2割って……」
悔しいが、俺と同じ見立てなので反論が出来ない。
「ソレ、見かける度にお前に似てるって思ってた」
宮野は俺が右手にぶら提げた袋を指さして言う。薄いビニール越しに、その丸々と太った独特のフォルムが浮かび上がっている。
「どこがだよ!」
「なんかこう、ふてぶてしいとこ?」
「ハァ!?」
キャンキャン吠え出した俺を笑って、宮野は後ろ手を振る。事務所に帰っていく宮野の背中を見送って踵を返した俺は、夕飯を買いに近くのコンビニ入った。
酒とお気に入りのカップ麺をカゴに突っ込んでレジ待ちしていたら、目の前のお菓子の棚に並んだグミの袋にふてぶてしいソイツを見つけて、思わず5袋買ってしまった。
(コイツ見る度俺のこと思い出してたって……それって、なんか――)
思った以上に至る所で見かけるソイツに、ちょっと照れ臭い気分になる俺なのだった。
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