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第2章:俺の日常、吉沢に完全ジャックされて終了
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俺の予感は的中し、事故チュー騒動から一夜明け、俺の日常は一変した。
廊下を逃げ回る俺と、その後を追う吉沢。そしてその吉沢を追いかける野次馬たち。授業の合間に、意味不明な集団が校内を右往左往している。
朝、校門で待ち伏せされたのを皮切りに、今の今まで一瞬たりとも気が抜けない。
移動教室の途中でも追いかけられ、流石の俺も息切れしてきた。
元々、体育の授業以外はロクに動かず、家に帰れば引きこもって推し活三昧。
男子高校生らしいまともな体力なんて、最初からない。
「あーもう、しつけ~!!」
逃げ疲れた俺は、吉沢の腕を掴んで廊下の壁に押しつけた。
「きゃー」という悲鳴まがいの歓声と、シャッター音がワンセットで飛んでくる。
「お前どこまで付け回すんだ! いい加減にしろ!」
肩を怒らせ、上から睨みつける。
吉沢の身長は、女子たちがSNSにばら撒いていた情報によれば174センチ。俺より十センチ近く低い。だから、こうして壁際に押し込んじまえば、巨体に見下ろされる恐怖を感じるはず。
「な……中村……?」
声を震わせ、俺の腕の中にすっぽり納まる吉沢。
やっと大人しくなったか、とホッとしかけたところで――。
「いきなり壁ドンしてくるとは、お前なかなかやるな! キスのシチュエーションとして最高だ!」
「はぁ?」
「さあ、多少強引でもいい! ひと思いにやってくれ!」
そっと目を閉じ、渾身のキス待ち顔を向けてくる吉沢。
吉沢が背伸びをしたせいで、ほんの数センチまで近づいた距離。
──おい、この身長差……雑誌の「理想のカップル特集」にそのまま載るやつじゃねえか。
そんなこと、今この状況で気づきたくなかった。
長い睫毛の影が肌に落ち、薄く開いた唇がかすかに震えている。
俺なら確実に間抜け顔になるはずの唇の突き出し方が、吉沢の顔面だとやけに絵になる。
……やべぇ。不覚にもちょっと可愛いって思っちまった。
廊下のざわめきも、カメラのシャッター音も、今この瞬間だけ遠のいた。
まるで吸い寄せられるように身を屈めた俺の目と鼻の先。
唇がくっつくまであと数ミリ、というところで。
「……って、アブねぇ! やらねーよ!」
「あ、待て。中村! 逃げるな!」
甘いシャンプーの匂いが鼻先にまとわりつき、離れない。
そのまま引きずられそうになる心を、邪念ごと振り払うように腕を放し、俺は再び廊下を走り出す。
「こらー! 何遊んでるんだ! 廊下は走るな! 中村~!」
通りすがりの教師の怒声が響く。
こないだはヤマセン(山本先生)で、今回はタニセン(谷口先生)。
――だからなんで、俺の方を叱るんですか先生。
俺より目立ってるのがいるでしょ、後ろに。
世の中は理不尽に満ちている。
さっき間近で見た、珍しくしおらしい吉沢のキス待ち顔が、妙に忘れられない。
もしかして、アイツちょっと緊張してた?
(マズい……この調子じゃ、逃げ切れる気がしねぇ)
確実に、俺の日常は吉沢に侵食され始めていた。
廊下を逃げ回る俺と、その後を追う吉沢。そしてその吉沢を追いかける野次馬たち。授業の合間に、意味不明な集団が校内を右往左往している。
朝、校門で待ち伏せされたのを皮切りに、今の今まで一瞬たりとも気が抜けない。
移動教室の途中でも追いかけられ、流石の俺も息切れしてきた。
元々、体育の授業以外はロクに動かず、家に帰れば引きこもって推し活三昧。
男子高校生らしいまともな体力なんて、最初からない。
「あーもう、しつけ~!!」
逃げ疲れた俺は、吉沢の腕を掴んで廊下の壁に押しつけた。
「きゃー」という悲鳴まがいの歓声と、シャッター音がワンセットで飛んでくる。
「お前どこまで付け回すんだ! いい加減にしろ!」
肩を怒らせ、上から睨みつける。
吉沢の身長は、女子たちがSNSにばら撒いていた情報によれば174センチ。俺より十センチ近く低い。だから、こうして壁際に押し込んじまえば、巨体に見下ろされる恐怖を感じるはず。
「な……中村……?」
声を震わせ、俺の腕の中にすっぽり納まる吉沢。
やっと大人しくなったか、とホッとしかけたところで――。
「いきなり壁ドンしてくるとは、お前なかなかやるな! キスのシチュエーションとして最高だ!」
「はぁ?」
「さあ、多少強引でもいい! ひと思いにやってくれ!」
そっと目を閉じ、渾身のキス待ち顔を向けてくる吉沢。
吉沢が背伸びをしたせいで、ほんの数センチまで近づいた距離。
──おい、この身長差……雑誌の「理想のカップル特集」にそのまま載るやつじゃねえか。
そんなこと、今この状況で気づきたくなかった。
長い睫毛の影が肌に落ち、薄く開いた唇がかすかに震えている。
俺なら確実に間抜け顔になるはずの唇の突き出し方が、吉沢の顔面だとやけに絵になる。
……やべぇ。不覚にもちょっと可愛いって思っちまった。
廊下のざわめきも、カメラのシャッター音も、今この瞬間だけ遠のいた。
まるで吸い寄せられるように身を屈めた俺の目と鼻の先。
唇がくっつくまであと数ミリ、というところで。
「……って、アブねぇ! やらねーよ!」
「あ、待て。中村! 逃げるな!」
甘いシャンプーの匂いが鼻先にまとわりつき、離れない。
そのまま引きずられそうになる心を、邪念ごと振り払うように腕を放し、俺は再び廊下を走り出す。
「こらー! 何遊んでるんだ! 廊下は走るな! 中村~!」
通りすがりの教師の怒声が響く。
こないだはヤマセン(山本先生)で、今回はタニセン(谷口先生)。
――だからなんで、俺の方を叱るんですか先生。
俺より目立ってるのがいるでしょ、後ろに。
世の中は理不尽に満ちている。
さっき間近で見た、珍しくしおらしい吉沢のキス待ち顔が、妙に忘れられない。
もしかして、アイツちょっと緊張してた?
(マズい……この調子じゃ、逃げ切れる気がしねぇ)
確実に、俺の日常は吉沢に侵食され始めていた。
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