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第7章:地獄のテスト期間、恋も勉強も赤点確定!?
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こそこそ吉沢と担任のあとをつけ、職員室までやってきた俺は、当たり前にそこで足止めを食らっていた。
うちの学校はそこまで厳しい校風ではないが、さすがになんの用事もなく職員室に入れるほどフリーダムではない。
吉沢を連れて先生が職員室に入ってから、はや十分が経過している。
その間俺は、職員室の廊下の端に置物みたいに気配を殺してうずくまっていた。
(なにやってんだ、俺は)
ここにいたって吉沢と先生の話が聞けるわけでもないし、出てきたところで「何話してたんだよ」なんて聞ける状況でもない。 それでもここを離れる気にならない自分が、未練がましくて情けない。
(吉沢からは無理でも、先生からは話聞けっかも)
そんな、望み薄の期待にかけて俺は座り込みを続ける。
と、職員室のドアが開いて、そこから背の丸まった小柄な先生が出て来た。
(あれって……門倉先生か?)
うちの文芸部の、囲碁部と掛け持ちで名ばかり顧問のお爺ちゃん先生。
顔を見るのも久々すぎて、一瞬先生だと気付かなかった。
俺の視線に気づいたのか、門倉先生はこっちを見てから、「おや?」と驚いた風に片眉をあげた。
それから、ゆっくりとこっちに近づいて来る。
「中村くん」
「……はい!」
声をかけられたことにビビった俺は、思った以上にデカイ声を出してしまった。慌てて立ち上がった俺に、先生はにこやかな笑みを浮かべる。
「丁度君を探してたんだ。少し話をいいかい?」
「あ、はい……」
ラッキー! これで職員室に入れる。
入ったところで吉沢たちの話が盗み聞き出来るとは思えない。
(いやでも、遠目にでも顔が見えればヤバイ雰囲気かどうかはわかるだろ)
ここにいるよりはずっとマシだ。
そう思って喜んだのもつかの間、門倉先生に連れて来られたのは部室だった。
「ここなら人もいませんし、お茶もありますからね」
そう言って、先生は急須にティーバックを突っ込んで二人分のお茶を淹れた。
先生はそれをズズっと一口すすって、がっくりと肩を落とす俺にも紙コップを差し出した。
「さて、中村くん。部活は楽しいですか?」
「まあ、そうですね……」
元々俺が文芸部に入ったのは、部活に入ってた方がいざ推薦取るとかってなった時には有利だって聞いたからだ。
潰れそうなほど人気がなくて、オタクの俺でも平穏に過ごせるだろうってだけの目的で選んだ部。
部活らしい活動もまったくなくて、誰も集まらない部室は一人でいたい俺にとっては好都合だった。
けど、そこに吉沢が入って来て、先輩たちも自然と集まるようになって、気づけば随分と騒がしい部室になっていた。俺にとっては耐え難いはずのその変化は、思ったほど嫌じゃなかった。
逃げ場所だったはずの部室が、誰かと――吉沢と過ごす場所に変わった。
それが、一番大きなことだった。
「吉沢くんは……」
「え?」
丁度吉沢のことを考えていたところだったから、頭の中を覗かれたみたいでびっくりして顔をあげる。
「部長から入部届は貰っていたんですけどね。彼はどうですか?」
「どうって、どういうことっすか? アイツが何か……」
食い気味の俺に、先生は少し言いにくそうに声をひそめた。
その表情だけで、嫌な予感しかしなかった。
うちの学校はそこまで厳しい校風ではないが、さすがになんの用事もなく職員室に入れるほどフリーダムではない。
吉沢を連れて先生が職員室に入ってから、はや十分が経過している。
その間俺は、職員室の廊下の端に置物みたいに気配を殺してうずくまっていた。
(なにやってんだ、俺は)
ここにいたって吉沢と先生の話が聞けるわけでもないし、出てきたところで「何話してたんだよ」なんて聞ける状況でもない。 それでもここを離れる気にならない自分が、未練がましくて情けない。
(吉沢からは無理でも、先生からは話聞けっかも)
そんな、望み薄の期待にかけて俺は座り込みを続ける。
と、職員室のドアが開いて、そこから背の丸まった小柄な先生が出て来た。
(あれって……門倉先生か?)
うちの文芸部の、囲碁部と掛け持ちで名ばかり顧問のお爺ちゃん先生。
顔を見るのも久々すぎて、一瞬先生だと気付かなかった。
俺の視線に気づいたのか、門倉先生はこっちを見てから、「おや?」と驚いた風に片眉をあげた。
それから、ゆっくりとこっちに近づいて来る。
「中村くん」
「……はい!」
声をかけられたことにビビった俺は、思った以上にデカイ声を出してしまった。慌てて立ち上がった俺に、先生はにこやかな笑みを浮かべる。
「丁度君を探してたんだ。少し話をいいかい?」
「あ、はい……」
ラッキー! これで職員室に入れる。
入ったところで吉沢たちの話が盗み聞き出来るとは思えない。
(いやでも、遠目にでも顔が見えればヤバイ雰囲気かどうかはわかるだろ)
ここにいるよりはずっとマシだ。
そう思って喜んだのもつかの間、門倉先生に連れて来られたのは部室だった。
「ここなら人もいませんし、お茶もありますからね」
そう言って、先生は急須にティーバックを突っ込んで二人分のお茶を淹れた。
先生はそれをズズっと一口すすって、がっくりと肩を落とす俺にも紙コップを差し出した。
「さて、中村くん。部活は楽しいですか?」
「まあ、そうですね……」
元々俺が文芸部に入ったのは、部活に入ってた方がいざ推薦取るとかってなった時には有利だって聞いたからだ。
潰れそうなほど人気がなくて、オタクの俺でも平穏に過ごせるだろうってだけの目的で選んだ部。
部活らしい活動もまったくなくて、誰も集まらない部室は一人でいたい俺にとっては好都合だった。
けど、そこに吉沢が入って来て、先輩たちも自然と集まるようになって、気づけば随分と騒がしい部室になっていた。俺にとっては耐え難いはずのその変化は、思ったほど嫌じゃなかった。
逃げ場所だったはずの部室が、誰かと――吉沢と過ごす場所に変わった。
それが、一番大きなことだった。
「吉沢くんは……」
「え?」
丁度吉沢のことを考えていたところだったから、頭の中を覗かれたみたいでびっくりして顔をあげる。
「部長から入部届は貰っていたんですけどね。彼はどうですか?」
「どうって、どういうことっすか? アイツが何か……」
食い気味の俺に、先生は少し言いにくそうに声をひそめた。
その表情だけで、嫌な予感しかしなかった。
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