最強技能を手に入れた一般学生

黄昏時

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第3話 王族

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 俺は今、最初に目覚めた部屋のベッドに座りながらうなだれている。

「この世界に適応出来るように改変してしまう……」

 つまりそれは、この世界に召喚される前の俺と今の俺は全くの別物だという事になる。
 外見は同じように見えるが、内面はどうなっているか……
 俺はそんな事を考えながら、自身の両手を見つめる。

 更に問題なのが、その改変内容が自身には全く分からないという事だ。
 記憶を含めて改変されるとなると、何がどう変えられたのか理解する事は不可能だろう。
 例えば、別人の体に緒方章丞という人物の記憶を上書きされており、俺は緒方章丞本人ではなかったとしても、俺はそれに気づく事は不可能だろう。

 だがこれは正直考えたくない。
 この体が別人の体だったとして、記憶はどれだけ思い返しても緒方章丞のもので、俺自身緒方章丞本人だと思っている。
 その場合一体俺はその別人なのか、はたまた緒方章丞なのか、俺自身わからなくなって気が狂ってしまうかもしれないからな……

「はぁ~~」

 俺はそんな事を考えながら大きなため息をつき、ベッドに倒れ込む。

 出来れば記憶改変があるとしても話さないでほしかったと思ってしまうのは、自分勝手な考えだろう。
 それにもし話されなかったとしても、俺は自身で色々調べていただろう。

 その過程で知ってしまった場合、彼女達を信頼する事は絶対になかった。
 そう考えると、彼女の俺に真実を話すという選択は間違いではないだろうな……
 …………
 ……

「さてと」

 俺はそう言いながら勢いよく上体を起こし、両手で自身の太股を叩く。
 どれだけ頭を使って考えたとしても、この世界に召喚されたという事実も、俺自身に何らかの改変が行われたという現実も変わることは無い。
 
 それにあの少年の最後の言葉……
 途切れ途切れで若干聞きとれなかったが、恐らく元の世界にはもう戻ることは出来ないだろう。

 なら今俺がやらなければならないのは現実を嘆く事ではなく、現実を受け入れ、この未知の世界でどう生きていくかを考えるべきだ。
 とは言え、今の俺に選択肢などない。

 今はとりあえず、リリアンと名乗った彼女に従うしかないだろう。
 何せ今の俺にはこの世界に関する知識が圧倒的に足りない。
 加えて真実を話してくれた彼女なら、まだ多少は信用できるだろう。

 そして一人で生きていけるだけの知識と力を手に入れた時、再び考えればいい。
 そのまま彼女に従うのか、はたまた彼女のもとを離れるのか、な。
 
 コンコン

「お目覚めですか?」
「……はい」
「部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ」

 俺がそう答えるとすぐに扉が開き、メイド服を着た少しおっとりとした雰囲気の女性が入ってきた。
 やはりか。

 先程俺をこの部屋まで送り届けてくれた人とは違う人だ。
 ここら辺はあまりふれない方がいいだろうな。

「これより国王様より説明がございますので、謁見の間までご案内いたします」
「……わかりました」

 頭を下げながら言われた言葉に、俺はそう返す。
 国王、という事はここは国でありそれなりの場所という事。
 更にそんな場所でかなり自由に動いていた彼女はかなりの権力者か、あるいは王に連なる存在……

 いや、今考えるのはやめよう。
 恐らく行けばわかるだろうからな。
 俺はそう思いながら、メイド服の女性の後に続く。

 部屋を出ると、隣の部屋から知り合いが出てくるところだった。

亨志りょうじ!」
「お! 章丞!」

 俺の言葉にそう返してきたのは、植野うえの 亨志りょうじ
 小学生の頃から一緒で、偶然進学した高校も同じでクラスも同じという腐れ縁の奴だ。
 そして俺はそんな付き合いの長い人間を見て、心底安心していた。

 どれだけ冷静に物事をとらえ、考えられていたとしても、不安が無かったと言えば嘘になる。
 それは自身の知らない場所、知らない世界で知り合いがおらず、一人であるかもしれないという孤独からくる恐怖感。

「何か久しぶりに会った感じがするな」
「確かにそんな気がする」
「で章丞、これどういう状況なんかわかる?」
「……いや、俺もわからん」
「やっぱりか。とりあえずこの人達についてくしかないみたいやな」

 俺は亨志の言葉に申し訳なく思いながら頷く。
 正直今の状況について話そうか少し迷った。
 だが話さないと今決めた。

 今周りにメイド服姿の女性が二人居るのもあるが、もし彼女達が居なかったとしても俺からは話す事は今後もないだろう。
 知らずに済むなら知らない方が心情的にいいだろうからな。
 色々思い悩むのは俺だけで十分だ。

 それに俺の知っている情報が真実であるという保証は何もない。
 ただ俺が彼女は嘘を言っていないと思っているのと、態々こんな嘘をつく必要性が思いつかないという状況から鑑みて、真実であるという結論に至っただけだ。
 不確かな情報で不安を煽り、実はあの情報は嘘でしたでは話にならないからな。

 俺はそんな事を考えながら、亨志と並ぶ形で歩きはじめる。

 数分程歩いたところで、前を歩いていたメイド服の女性の足が止まった。

「この先になります。どうぞお入りください」

 そう言って、女性は他の扉よりは一回り程大きな扉を示した。
 この扉の先には俺達が先に入る、あるいは俺達だけで入ると言ったところか。

「入ればいいんですか?」
「はい。どうぞ」
「わかりました」

 亨志は軽い口調でそう答えると、何のためらいもなく扉に手をかけ押し開けた。
 扉の先はそれなりに大きな部屋であり、左右に兵士らしき人が立ち道のようになっている。

 更にその先には、兵士達が立っている場所より数段高い場所に玉座と思わしき一際豪華な椅子と、五つのこれまた豪華な椅子が置かれている。
 そして玉座の手前には、既に俺と亨志以外の召喚されたクラスメイト達が数人集まっているのが確認できた。

「お! 凄いな。こんなん生で見たん初めてや」
「確かにな……」

 俺は亨志の言葉に生返事でそう答えながら、部屋の中に居る兵士達に目を凝らす。
 大半の兵士達は今扉を開けた俺と亨志に対して、憧れとも期待ともとれるようなキラキラとした表情をしている。
 もちろん大半はそうだという話で、中には訝しむような表情をしている兵士もいる。

「皆あそこに居るやん、行こうぜ」
「そうやな」

 俺は亨志の言葉に軽くそう返しながら、後に続くかたちで歩を進める。
 それと同時に、亨志が開けた扉を先程ここまで案内してくれたメイド服の女性が閉めていた。

 クラスメイトが何人かこの部屋の中に居るという事は、毎回扉を閉めているという事か?
 なんとも効率の悪いことを……
 
 俺はそんな事を思いながらも、扉を閉めてくれているメイド服の女性に向かってお礼の意味を込めて会釈する。
 するとメイド服の女性は軽く微笑みながら、俺に対して会釈を返す。

「よ、天魔。これどういう状況?」
「わからん、俺もさっきここに案内されたとこやし……」

 亨志は先にこの場所に案内されていたであろう天魔のもとに近づきながらそう言った。
 俺は天魔の言葉に頷きながら集まっているクラスメイトを確認する。

 ……14人
 大体クラスメイトの半数ってところだな。
 にしても皆落ち着いてるな。

 まるで朝礼の為に体育館に集められたかのような落ち着きぶりだ。
 正直こんな訳の分からない状況なら、多少取り乱してもおかしくないと思うんだが……
 やはりこれは彼女の言っていた改変が影響していると考えるべきなのだろうか?

 いや、安易にそうだと決めつけるのはよくないな。
 それは自身で自身の視野を狭めるだけだ。
 こんな訳の分からない状況だからこそ、広い視野で周りを見て、冷静かつ客観的に物事を判断していかなければならないだろう。

 とは言え、それが今の俺に出来るかどうかは別の話だがな……
 俺はそんな事を考えながら、クラスメイト達全員が集まるのを皆と同じようにただ待つ。


 数分もすれば、クラスメイト全員がこの部屋に集められていた。

「国王陛下並びに王族様方、ご入来!!」

 それを見計らったかのよう、玉座に一番近い兵士が声高にそう叫ぶ。
 すると玉座のある場所の左側から少し年の行った男女二人と、若い男女四人の計六人が優雅な立ち振る舞いで、それぞれにあてがわれていたであろう椅子に座っていく。

 一番豪華な椅子に座ったところを見るに、あの年のいった男性が国王で間違いないだろう。
 いや、それよりも一番右端に座る女性。
 ある程度予想は出来ていたから驚きはそれ程ないが、まさか本当に王族だったとはな……

 俺はそんな事を思いながら、一番右端に座る女性に視線を向ける。
 そこには先程俺に色々と教えてくれた女性、リリアン・ザ・サヴィオスの姿があった。

 俺が視線をやっている事には向こうも気づいているだろうが、何の反応もないという事は初対面を演じるという理解でよさそうだな。
 こちらとしても変な波風が立ちそうだからそっちの方が助かる。

 さて、一体これからどこまで話されるのか?
 かなり気になるところだな。
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