最強技能を手に入れた一般学生

黄昏時

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第5話 顔見世

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「はぁ~~」

 俺は立食パーティーのような形で楽しそうに食事を楽しむクラスメイト達を見ながら、そう小さくため息をつく。

 技能を説明した後、「長々と話に付き合っていただきありがとうございます。救世主様方を歓迎するパーティーの準備が出来ておりますので、今からそちらにご案内させていただきます」と言われ、ここに案内された。

 けれどこれはパーティーと言うより、顔見世と言った方しっくりくる。
 恐らくこの国のお偉いさん方と思われる方々が、警護を連れて参加してるからな。
 勿論先程上段に居た王族の方々も参加して居る。

 にしても正直、今はここにある食事を食べたいと思えない。
 何せあんな話を聞いた後だ、嫌でも色々考えさせられる。
 彼女の話を先に聞いていなければこんな事もなかっただろうに……

 ……いや、そう考えるのはお門違いだな。
 彼女は決して悪くない。
 彼女が先に話してくれたからこそ、こうして警戒できているんだ。

 彼女に感謝こそすれ、悪く言うのは間違っている。
 そんな事少し考えればわかる事なのに……
 現実を受け入れて割り切ったと思ってたのに、流石にそう簡単にはいかないという事か。 

「……なんも取らんと、一人で何してるん?」
「俺好き嫌い多いの知ってるやろ?」

 そう言いながら近づいてきた天魔に、俺は軽く笑いながらそう答える。

「あぁ、そう言えばそうやったな。でもお腹空いてんちゃん?」
「それがあんまり空いてないねんな、これが」

 そう言ったものの、実際は少し空腹感を感じ始めている。
 何せ旨そうな匂いがここまで流れて来てるからな。
 嫌でも食欲がそそられる。

 だがやはり俺はこの食事を食べたいと思えない。
 より正確に言うなら、口に含みたくすらない。

「そうなんや」
「天魔こそどうしたん? さっきまで冨永とみながとかと話してたのに?」
「いや、ささ君・・・が一人で居たからなにしてんねやろうと思ってきただけ」

 ささ・・とは、俺がネットゲームをやる時に使っているハンドルネームだ。
 基本的に一緒にネットゲームをやっているクラスメイトは俺の事をささやささ君と呼ぶんだが、天魔は周りにゲームをやっていない友人が居れば、俺の事を緒方君と呼ぶ。

 そう言う気遣いを自然にやっているのは、素直に感心している。
 俺は呼び方に関して全くと言っていい程こだわりが無くなったから・・・・・・・、普段ゲーム内で呼んでいる名前が不意に出たりするんだよな。

 勿論形式ばった場所や、目上の人が同席している場合などはそれが出ないよう注意している。

「そう言えば、ささ君はどんな技能やった?」
「俺? 俺は【仲裁】って技能やった。能力は指定した者同士の戦闘を強制的に禁止するって感じらしい」

 俺はそう聞いてきた天魔に、特に迷うことなくそう答える。
 正直【仲裁】に関しては隠すメリットより隠すデメリットの方が大きいからな。
 それに、一緒に召喚されたクラスメイト達に隠す必要はないってのもある。

 だがもう一つの【複製】に関しては別だ。
 これは出来るだけ秘匿するべき代物だろう。
 例えそれがクラスメイトであり、友人であったとしても。

「へぇー、ナンカ強そうやん」
「言い方が棒読みやぞ……」
「まぁ、何て言うか、だから? って感じやしな」
「それはわからんでもない。けど、ならそう言う天魔はさぞかし凄い技能やったって事なんやろう?」
「いや、そうでもないで。俺のは【御調子者】って技能で、気分によって基礎能力が変動するって能力やからな」
「うん~~って感じやな」
「やろ?」

 聞いた感じ強そうでもあるし、弱そうでもなる。
 基礎能力と言うのが一体どこまでの能力をさし、一体どれ程変動するのか……
 それによってかなり話が変わってくる。

 しかも変動のトリガーが気分と言うのもかなりネックだ。
 自身の気分を思い通りに操るなんて、かなり難しいぞ。
 しかもそれが仮に戦闘中だった場合、意識して操るなど不可能だと言っても過言ではないだろう。

「……因みにやけど、その技能ってパッシブ?」
「そうやねん」
「うわぁ……マジか……」

 心底だるそうにそう言った天魔に対して、俺は哀れむようにそう言った。
 パッシブ……つまり自身で技能のオンオフを切り替える事は出来ず、常時発動しているという事。

 正直自身で能力の発動を制御できればまだ……いや、かなり可能性のある技能だっただろうな。
 要は自身の気分がのっている時にだけ技能を発動させれば、単純に能力が上がるだけの技能って事だからな。

 だがそれが常時となると、かなり難儀だろう。
 基礎能力に仮に身体能力が含まれていた場合、例えそれが自身の体であろうと常に変動する身体能力なんて扱いに困るなんてレベルじゃないだろう。

「まぁ、なんとかなるやろ」
「結局はそれしかないけど……なんかあったら言えよ? 力になれるかはわからんけど相談にはのるからな?」
「おう」

 俺の言葉に、天魔はそう空返事する。
 適当な返事だったが、大丈夫だろう。
 天魔は面倒な事や手に負えない事があれば相談してくるだろうし、そうなった時に色々考えればいいだろう。

 正直今はまだ俺や当事者である天魔ですら何がどう作用するのか、能力に関しては未知数だからな。
 要検証が必要な段階だ。

「今お時間よろしいでしょうか?」

 俺がそんな事を考えていると、不意にそう声をかけられた。
 俺と天魔はほぼ同時に声のした方に視線をやる。
 するとそこには、先程の謁見の間で上段に座っていたリリアンが居た。

 勿論リリアンの後ろにはアランが控えている。
 さて、どう答えるべきか……
 そう迷っていると、俺は目の端で王族が他のクラスメイト達に声をかけているのが見えた。
 これは……

「もちろん構いませんよ、なぁ天魔」
「はい」
「ありがとうございます。まずは改めてまして自己紹介をさせていただきます。私はこの国の第二王女で、リリアン・ザ・サヴィオスと申します」

 彼女は優しく微笑みながらドレスの裾を持ち、軽く頭を下げながらそう言った。
 やはり何度見ても中々のものだ。
 王族だけあって、こういった動作は洗練されているという事だろうか?

「よろしければお二方のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「私は緒方 章丞です」
「僕は北上 天魔です」
「オガタ様にキタガミ様……お二方ともよきお名前ですね」

 オガタ……
 彼女としても今俺に距離を詰められるのは避けたいという事か。
 これはこれでわかりやすくていいな。

 章丞と呼ばれれば周りを気にせず、緒方と呼ばれれば周囲に気を配ってほしいという感じだろう。
 こちらとしてもそんな感じで使い分けてくれるならありがたい。

「パーティーの方は楽しんでいただけていますか?」
「はい」
「僕も緒方君と同じく楽しんでいます」
「それは良かったです。ですが…………」

 彼女はそう言葉に詰まりながら、俺の手元をチラッと見る。
 俺の手には何の汚れもない、綺麗な皿があるのみだ。
 それを見れば、俺が一切料理に手を付けていないのは一目瞭然だろう。

 けれどそこは触れないで欲しい。
 王族である彼女がそれを指摘すれば、俺にはほぼ拒否権が無くなり食事に手を付けざるを得なくなるだろう。

 この場に居るのが彼女だけなら話は別だが、そういう訳じゃないからな。
 今後お世話になるかもしれない彼女の面子をこんな事で潰すわけにはいかない。

「……そうですね、お二方のお好きな食べ物はございますか?」
「食べ物? ですか?」
「はい。何かお気に召す食べ物があったか気になりまして」
「なるほど。天魔はなんかあった?」
「僕? 僕はあのステーキみたいなんかな。何の肉なんかは知らんけど、滅茶苦茶柔らかくてかかってるソースも少しピリ辛やったけど美味しかった」

 天魔はそう言いながら、近くのテーブルの上に置かれたステーキを指さす。

「あぁ、アレな。確かにアレ美味しそうで気になっててんな。やっぱり美味しかったんや?」
「うん。アレは緒方君も絶対食べといた方が良いで」
「そんなに?」
「うん、そんなに」
「それは、流石にちょっと気になるな」
「あちらの料理ですか……」

 俺と天魔がそう言っていると、リリアンは小声でそうつぶやく。
 直後後ろに居たアランにその料理を指さしながら何かを伝えた。
 それを聞いたアランは俺達に軽く頭を下げてから、そそくさとその場を後にする。

「緒方君も食べたら? なんやったら僕がとってきたるで?」
「いや、今はいいや」
「そう? ならいいけど」

 天魔の優しさはありがたいが、食べる気の無いものをとってきてもらう訳にはいかない。
 俺は天魔に対して申し訳なく思いながらも、そう断りを入れる。 
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