神器とオリジナルを手に入れた転生王子は、最強への道を歩み始める

黄昏時

文字の大きさ
14 / 17

第14話 格上

しおりを挟む
 俺達は模擬戦の為、森の中にあったイアンの家から森の中の切り開かれた場所へと移動していた。

「坊主……本当にいいんだな?」
「勿論です。それに貴方が仰ったんですよ? 本気の模擬戦をやろうと」
「確かにそうは言ったが……まさか坊主から契約武具を使っての模擬戦・・・・・・・・・・・・を提案してくるとは思ってなかったからな」

 俺は彼、イアンとの模擬戦を行う条件として、契約武具を使って行う事を提示した。
 最初はその提案に驚きはしていたみたいだが、すんなりと承諾はしてくれた。

 しかしながらこの模擬戦に反対の人間が一人居る。
 それは勿論ナタリーだ。
 俺達が契約武具を使って行う事は勿論、この模擬戦自体に猛烈に反対していた。

 と言うか現在進行形で反対している。
 今こうして俺とイアンが向き合い、模擬戦を始めようとしているのを遠くから見つめる視線はとても鋭く感じる。

 だがここでナタリーの意見を通すのは、現状を維持し、逃げる事に他ならない。
 例えここで多少危険を冒そうとも、逃げずに立ち向かわなければ何も進展しないんだ。

 というのは建前で、見くびられたまま何もせずに帰るなんて事出来るはずがない!
 この男に一泡吹かせて、力ずくにでも協力させてやる!!
 その為に俺は契約武具を使う事を提案しだんだからな!

 例え中身が転生した魂であろうと、肉体はたかが三歳の子供。
 更には転生した魂である俺ですら、武術の心得が無いときている。
 そんな人間が、実戦経験が豊富であろう元騎士団長と普通にやってまともに渡り合えるはずがない。

 実力不足? 経験不足?
 そんな事は百も承知!
 だからってここで引き下がれない理由が今の俺にはある。

 ならどうするか?
 そんな事は決まっている。
 敵わないとわかっているなら、敵うよう工夫するしかない!

 そして俺の契約した神器・・はそう言ったことを行うのに、とても適した力がある。
 しかしながらこれは賭けだ。

 俺が足りないものを契約武具で補うという事は、同じく相手も契約武具により実力を更に上げるという事……
 とは言え契約武具を使わなければ俺の勝つ確率はゼロだ。

 例えそれが賭けであったとしても、数十パーセント、あるいは数パーセントあるのなら、俺はそちらに賭ける。
 ゼロよりは断然ましだからな。

「それじゃぁ坊主、始める前に幾つかルールを確認しておくぞ?」
「はい」
「まず第一にこの場所から離れ、森に入るのは禁止だ。第二に、相手を殺す事を禁止とする。よって、勝利条件は相手に参ったと言わせるか、相手を戦闘不能にするかのどちらかとする。これで構わないか?」
「構いません」
「良し。それじゃぁ、ある程度間合いをとってから始めよう。この場から、互いに三十歩離れたと同時に開始の合図とする。何か異論はあるか?」
「大丈夫です」
「なら、早速始めよう」

 イアンはそう言うと、俺に対して背を向けた。
 同時に、俺もイアンに対して背を向ける。
 そして互いに一歩、また一歩と歩を進める。

 イアンとの距離が少しずつ離れていくと同時に、空気が張り詰めていくのがわかる。
 緊張感が高まり、もうすぐ始まるのだと実感させられる。

「……《神殺し》」

 そしてそう実感した瞬間に、俺は無意識にそう口にしていた。
 右手に伝わるずっしりとした確かな重み。
 その重みで、俺は神器を出したのだと確信する。

 模擬戦とは言え、コイツを本気で人に向けるのは初めてだ。
 不安が無いと言えば嘘になるが……それよりも、現状の俺が神器を使ってどこまで通用するかの方が気になる。

 もしかしたら、シャルロッテを守る為に強硬手段に出るかもしれないからな。
 確認し、知っておく必要がある。
 自身にどこまでの事が出来るかを……

 俺がそんな事を考えている間に、約束の三十歩が近づいてきた。

 26……27……28……29……30!!

「なっ!!」

 三十歩距離をとった瞬間後ろを振り返ると、イアンが俺との間合いを既に半分以上詰め、すぐそこまで近づいていた。

「反応が遅すぎるぞ、坊主」

 イアンは先程までとは全くの別人のような雰囲気を纏いながら、一切感情をのせずそう言った。
 不味い!!

 イアンの持つ武器が俺の見える角度からじゃ、イアンの背に隠れて全く分からない! 
 恐らくだがワザとそうしているんだろう。
 武器がわからなければ相手の間合いの予想が一切できない!!

 今の俺の場合、相手の間合いというのはとてつもなく重要だ。
 何せ普通にやりあえば技術でも力でも勝てない。
 ならせめて少しでも相手が不得意な部分で戦うしかない。

 クソ!!
 あまり悠長に考えている時間が無い!
 ここは相手から猛烈に間合いを詰めてきた事を考慮して、至近距離で戦いたいと予想するしかない!

 なら出来るだけ距離をとるべきだろう。
 だが普通に距離をとろうとしても速度で勝てるとは思えない。
 それならば、相手から離れてもらうしかない!

 俺はそう考え、右手に握る神器に力込める。
 すると突如として大量の水が現れ、凄まじい勢いでイアンの右横腹目掛けて空中を進む。

 それに気づいたイアンは、バックステップで自身に向かってきていた水をかわす。
 だが水はほぼ直角に角度を変え、イアンが避けた方に向かって尚進み続ける。
 それを見た瞬間、イアンはかわすのは無駄だと判断したのだろう。

 隠していた得物を構え、向かってくる水に向かって切っ先を向ける。
 あれはもしかして……、か?

 俺がそう思った次の瞬間には既に刀は振り抜かれており、イアンに向かっていたはずの水が真っ二つに両断されていた。

 ありえない!!
 なんだ今のは!
 刀を振り抜くのが早すぎて、全く見えなかった。

 水が両断されたと言う事を確認してから、初めて刀が振るわれたのだと認識できた。
 ............なめていたのは俺の方だった。

「坊主、出し惜しみせず本気で来い。......でないと一瞬でケリがついちまうぞ」

 無感情に放たれたイアンの言葉は、実力差を実感し始めていた俺の中ですんなりと受け入れることが出来た。

 俺は即座に自身を中心とした半径三メートル程の所に、水を薄く半球状に展開する。
 水と言っても、これは神器の力によって生み出した水だ。
 なので通常の水とは違い、かなり融通が利く。

 例えばこの水に俺以外の人間が触れれば、俺が認識するよりも早く自動で反撃を行ってくれる、とかな。
 俺はイアンから目を離さずに、内心でそんな事を考える。

 イアンは俺の周囲に突如現れた水に何かを感じとったのか、鋭い視線で見つめた後、俺から更に距離をとった。

 やはりそう簡単には突っ込んできてくれないか。
 俺はそう思いながら、悔しそうに表情を少し歪める。

「……坊主、契約武具を使っての模擬戦は初めてか?」
「契約武具はおろか、模擬戦自体初めてですよ。何せ戦闘訓練自体未だに受けていませんから」
「なるほどな。それならば仕方ないか……逆に初めての戦いでこれ程動け、更に契約武具をその年でこれ程扱える事を評価するべきだろうな」

 イアンは俺の言葉に頷くと、かろうじて聞きとれるほどの声でそう言った。
 仕方ない、評価すべき?
 一体何が仕方なく、何をどう評価すべきだというんだ?

「動き自体は完全に素人だが、相手の行動に対する警戒並びに対処は悪くなかったぞ。恐らく鍛えれば強くなるだろうな。これからが楽しみだ」

 イアンは笑みを浮かべながらそう言うと構えていた刀を左側の腰に当て、居合のような構えをとる。

「!!」

 だが次の瞬間にはイアンは真剣な表情へと変わっており、俺の事を見据えていた。
 そんなイアンを見て、俺は背筋が凍る。

 体が……動かない……
 それにこの何とも言えない息苦しさ。
 このプレッシャーは一体……

「……フン!」

 俺がそう考えていると、イアンはそんな掛け声とともに、凄まじい速度で刀を振るった。
 とは言っても、俺にはどう振るわれたのかは見る事が出来なかった。

 気づいたときには刀が先程の腰ではなく、右側の地面に向いていた事から振るわれたと判断したのだ。
 流石にこの距離なら剣筋が見えなくても……そう考えかけた瞬間、俺の周囲を半球状に囲んでいた水が突如両断された。

 勿論両断されたところで周囲の水は消えたりしない。
 即座に元に戻り、イアンに向かって反撃・・する為に拳大程の水を物凄い勢いで飛ばした。
 だがイアンは飛んでくる水を冷静に両断し撃ち落とす。

 やはりこの程度の攻撃は意味がないか。
 しかし周囲の水がイアンに向かって反撃したという事は、水を両断したのはイアンで間違いないという事……
 
 とは言えいくらイアンが目に追えない速さで刀を振るうと言っても、流石にこの距離を一瞬で縮め、更には元居た場所に気づかれずに戻るなど不可能なはずだ。
 それに時間差での反撃……

 予想でしかないが、恐らく契約武具の能力を使って斬撃・・を飛ばしてきたんだろう。

 クソ!!
 俺としては、イアンは遠距離攻撃の手段が無いと決め込んでいただけに、これはかなりつらい状況だぞ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

処理中です...