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第三章
ルパルナの故郷
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バレーノの街から南方へおよそ2週間。かつて両国の戦争で激しく上下した国境線を超えて、南の大国ジェマイエフ王国に入った。ラングリオ王国との争いも30年前の事。いまでは争いの跡もなく、静かに両国の国境の砦が佇むのみである。両国は国交を回復しているので、いちいち国境を越える旅人に対し、目くじらを立てることなくすんなりと通る事が出来た。
一行の馬車はのんびりと街道を進む───
「ルパルナ、ちょっといいか?」
「ん?何?」
ルパルナはバレーノを発つ前に、きれいな布地を何枚か買っていて、それらを使ってベルの服を作っていた。ここまでて2着縫い上げていて、最初の作品はなかなか悪戦苦闘したようだったが、2着目はコツを掴んだようで、見違えるほどの出来に仕上げた。馬車での移動中にもやるのだから、本当に器用である。
ベルは服が増えることが嬉しいようで、当初は数時間おきに着替えていた。
縫物を止めて、ルパルナが振り向く。
「ルパルナはどこの出身だったっけ?」
「言わなかったっけ?」
「あ、ああ。あまりそのことについて話さなかったろ?だから忘れてしまってね」
「そうだったね・・・。私の故郷は竜翼山の麓にある村だよ。カラの村っていうの」
「そうか。竜翼山か」
「ルパルナぁ、なんで村から出てきたの?」
ベルが訊いてくれたが、俺もそれは知りたい。
「ん、村が息苦しくて・・・ね」
「いじめられてたの?」
「違う違う。むしろ両親が居なくてお祖母ちゃんに育てられてた私を、皆で大事にしてくれてたよ。
っていうか、村では子供は宝なの。一族の血脈を継いでいく存在だから・・・」
「なあ、一度村に帰ってみないか?お祖母さんも心配しているだろう。そのことはルパルナも気がかりなんじゃないか?」
「で・・でも」
「ずっといる訳じゃない。それに何かあっても俺たちもいるから大丈夫だ」
「・・・わかった。お願いします」
「道がわからないから案内してくれるか?」
「うん、待ってね。道具しまっちゃう」
仕舞い終わると、ラウルの隣にちょこんと座る。そしてしな垂れかかる。
今の二人はこういうことが普通になっている。口づけも自然にしてしまうほど・・・
(何かの本で読んだが二人は『連理の枝』とか言う奴だろう。)
「あーもー-!!」
ベルが癇癪を起した。
「私もいるんだからっ!」
そう言ってラウルとルパルナにキスをしてきた。
両手(?)に花で、実に楽しい道行だった。
数日後、馬車は街道を大きく外れて山道に入っていく。
「途中で道が無くなるとかはないから、このまま行けるよ。たまに行商の馬車が来たりしてたから。でも、奥の村へは馬車は無理なのよね」
「村はいくつかあるのか?」
「うん。同じ一族なんだけど、別れてそれぞれ村を作ってるのよね」
「あ、そこの分かれ道は左ね」
「後どれくらいかかるの?」
「3日くらいかな」
「すっごい山奥なのね」
「不便でごめんねー」
ルパルナの言う通り、3日の後にカラの村の入り口についた。
小さな村だった。フランクが過ごしたあの村と大して変わりのない感じで、どことなく懐かしい感じがした。村に入るとルパルナは少し落ち着きなく周りを見渡す。
外に出ていた村人たちがこちらを見ている・・・
「変わりないな・・・。あ、あそこの建物がお祖母ちゃんの家だよ!」
他の家よりはやや大きい家だった。
荷馬車を飛び降りて駆けだしたルパルナは、家の扉を勢いよく開いた。
「お祖母ちゃん!!」
そこには揺り椅子に座って編み物をしている老婆がいた。彼女はいきなりの訪問者に目を向けると
手に持った道具を取り落とすようにして立ち上がった。
「ルナ、ルナなのかい?」
「うん!ただいま!お祖母ちゃん!」
ルパルナは祖母を優しく抱きしめた。
「ごめん、ごめんね。お祖母ちゃん。勝手に飛び出しちゃって・・・」
「ああ、ああ、もういいんだよ。こうして帰ってきてくれた。無事に帰ってきてくれただけで私は・・・・」
「失礼する」
「こんにちは~」
急に入ってきた男と妖精に老婆は目を見張る。
「あ、二人は私の仲間なの。紹介するね。ラウルとベル。ラウル、ベル、私のお祖母ちゃんよ」
「ラウルです。よろしくお願いします」
「ベルヒナよ。ベルって呼んでくれていいわ」
失礼にならないように、姿勢を正し挨拶をする。
(そういえば、ベルヒナがばるの本名だったけな。すっかり忘れてた。)
「これはご丁寧に・・・私はこの村の長、カラです。孫を村に無事に連てきてくださってありがとうございます」
「いいのよ~大切な人の故郷にご挨拶しに来ただけだもの。ね、ラウル」
「お前が言うなよ」
「ベル!」
「あーそのールパルナは俺の大切な人。その、恋人・・・なのです」
「なんと!」
「そ、そういうことなのお祖母ちゃん」
照れてるルパルナ。身内に恋人を紹介するときはそういうものなんだろう。
「しかしそれは・・・。ルナ、おまえは判っておるはずじゃろ?それでもか?」
ルパルナのお祖母ちゃんは、やや難しい表情を浮かべながら言った。
そこのルパルナが村を出た理由があるのだろう。
「うん。ラウルなら大丈夫」
老婆は溜息をついた。
「きちんと話し合っての事なのだな?」
「それが・・・まだなの」
申し訳なさそうにルパルナが言う。
「相変わらずそそっかしいのう。ラウルさん、まあお座りください。何を話しているのかわからんでしょうから、説明いたしましょう」
老婆は皆に椅子を勧めると、自らも揺り椅子に腰を掛けた。
一行の馬車はのんびりと街道を進む───
「ルパルナ、ちょっといいか?」
「ん?何?」
ルパルナはバレーノを発つ前に、きれいな布地を何枚か買っていて、それらを使ってベルの服を作っていた。ここまでて2着縫い上げていて、最初の作品はなかなか悪戦苦闘したようだったが、2着目はコツを掴んだようで、見違えるほどの出来に仕上げた。馬車での移動中にもやるのだから、本当に器用である。
ベルは服が増えることが嬉しいようで、当初は数時間おきに着替えていた。
縫物を止めて、ルパルナが振り向く。
「ルパルナはどこの出身だったっけ?」
「言わなかったっけ?」
「あ、ああ。あまりそのことについて話さなかったろ?だから忘れてしまってね」
「そうだったね・・・。私の故郷は竜翼山の麓にある村だよ。カラの村っていうの」
「そうか。竜翼山か」
「ルパルナぁ、なんで村から出てきたの?」
ベルが訊いてくれたが、俺もそれは知りたい。
「ん、村が息苦しくて・・・ね」
「いじめられてたの?」
「違う違う。むしろ両親が居なくてお祖母ちゃんに育てられてた私を、皆で大事にしてくれてたよ。
っていうか、村では子供は宝なの。一族の血脈を継いでいく存在だから・・・」
「なあ、一度村に帰ってみないか?お祖母さんも心配しているだろう。そのことはルパルナも気がかりなんじゃないか?」
「で・・でも」
「ずっといる訳じゃない。それに何かあっても俺たちもいるから大丈夫だ」
「・・・わかった。お願いします」
「道がわからないから案内してくれるか?」
「うん、待ってね。道具しまっちゃう」
仕舞い終わると、ラウルの隣にちょこんと座る。そしてしな垂れかかる。
今の二人はこういうことが普通になっている。口づけも自然にしてしまうほど・・・
(何かの本で読んだが二人は『連理の枝』とか言う奴だろう。)
「あーもー-!!」
ベルが癇癪を起した。
「私もいるんだからっ!」
そう言ってラウルとルパルナにキスをしてきた。
両手(?)に花で、実に楽しい道行だった。
数日後、馬車は街道を大きく外れて山道に入っていく。
「途中で道が無くなるとかはないから、このまま行けるよ。たまに行商の馬車が来たりしてたから。でも、奥の村へは馬車は無理なのよね」
「村はいくつかあるのか?」
「うん。同じ一族なんだけど、別れてそれぞれ村を作ってるのよね」
「あ、そこの分かれ道は左ね」
「後どれくらいかかるの?」
「3日くらいかな」
「すっごい山奥なのね」
「不便でごめんねー」
ルパルナの言う通り、3日の後にカラの村の入り口についた。
小さな村だった。フランクが過ごしたあの村と大して変わりのない感じで、どことなく懐かしい感じがした。村に入るとルパルナは少し落ち着きなく周りを見渡す。
外に出ていた村人たちがこちらを見ている・・・
「変わりないな・・・。あ、あそこの建物がお祖母ちゃんの家だよ!」
他の家よりはやや大きい家だった。
荷馬車を飛び降りて駆けだしたルパルナは、家の扉を勢いよく開いた。
「お祖母ちゃん!!」
そこには揺り椅子に座って編み物をしている老婆がいた。彼女はいきなりの訪問者に目を向けると
手に持った道具を取り落とすようにして立ち上がった。
「ルナ、ルナなのかい?」
「うん!ただいま!お祖母ちゃん!」
ルパルナは祖母を優しく抱きしめた。
「ごめん、ごめんね。お祖母ちゃん。勝手に飛び出しちゃって・・・」
「ああ、ああ、もういいんだよ。こうして帰ってきてくれた。無事に帰ってきてくれただけで私は・・・・」
「失礼する」
「こんにちは~」
急に入ってきた男と妖精に老婆は目を見張る。
「あ、二人は私の仲間なの。紹介するね。ラウルとベル。ラウル、ベル、私のお祖母ちゃんよ」
「ラウルです。よろしくお願いします」
「ベルヒナよ。ベルって呼んでくれていいわ」
失礼にならないように、姿勢を正し挨拶をする。
(そういえば、ベルヒナがばるの本名だったけな。すっかり忘れてた。)
「これはご丁寧に・・・私はこの村の長、カラです。孫を村に無事に連てきてくださってありがとうございます」
「いいのよ~大切な人の故郷にご挨拶しに来ただけだもの。ね、ラウル」
「お前が言うなよ」
「ベル!」
「あーそのールパルナは俺の大切な人。その、恋人・・・なのです」
「なんと!」
「そ、そういうことなのお祖母ちゃん」
照れてるルパルナ。身内に恋人を紹介するときはそういうものなんだろう。
「しかしそれは・・・。ルナ、おまえは判っておるはずじゃろ?それでもか?」
ルパルナのお祖母ちゃんは、やや難しい表情を浮かべながら言った。
そこのルパルナが村を出た理由があるのだろう。
「うん。ラウルなら大丈夫」
老婆は溜息をついた。
「きちんと話し合っての事なのだな?」
「それが・・・まだなの」
申し訳なさそうにルパルナが言う。
「相変わらずそそっかしいのう。ラウルさん、まあお座りください。何を話しているのかわからんでしょうから、説明いたしましょう」
老婆は皆に椅子を勧めると、自らも揺り椅子に腰を掛けた。
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