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第三章
護るべきもの
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老婆は訥々と語り、それはこんな感じの事だった。
ここ一帯に散在する村は全てルパ一族の村で、この一族には、ある伝統がある。
一族で最も強い男は何人も妻を持つことができる。それは人の妻であっても例外なくとりあげることができる。
ルパ族は外からの血の流入を嫌い、一族の中で血を存続させることを選んだ。これは今も続く伝統であり、そうして強い血を持った子を産み育ててきたのだという。
この伝統には理由がある。それは一族本来の力を残すためと言われている。
それが何かはわからない。
今は伝統を重んじてはいるものの、そこまで厳しくはなく、外部と交わる者も稀にいるとか。
(これはとんでもない・・・公認寝取られじゃないか)
「ルナはそれを毛嫌いしてな・・・。もちろん、強者の妻に選ばれなければ関係なかったのだが・・・不運にも選ばれてしまった。今の強者はルナの幼馴染でな。そのために執着があったのだろう」
「私はあいつの事好きじゃなかった。乱暴者で我儘で。村にいたときはどうにか納得しようって思ったこともあったけど、やっぱり駄目だったの」
「それで飛び出した・・・と」
「うん・・・」
「それが正解だったのよね。ラウルと出会えたんだもの」
ルパルナは顔を赤くした。
「お祖母ちゃん、あのね、ちょっとこっちきて」
「どうしたね?」
何やら二人で話している。
ベルがすいーっと飛んで行って話を聞いている。
「おお、ルナ。それは恐らく間違いない。兆候が教えてくれておる」
「わあああああっおめでとう!ルパルナ!」
───なんだか盛り上がってるな
「ラウル、あのね・・・私赤ちゃんができた・・・かも」
照れながらルパルナは教えてくれた。
「え・・・・あ、赤ちゃん!!!」
正直嬉しかった。結婚してたころは子供が授からなかった。
しかし今、中身が違うとはいえ自分の子供ができたのだ。
ラウルはルパルナを抱きしめて、 ありがとうと、何度も伝えた。
その日はルパルナの祖母の家で細やかな祝いをした。
久しぶりに孫が帰ってきた上に、孫か妊娠しているとの喜ばしいことが続いたため、長老はすごく嬉しそうだった。
精一杯のもてなしに、一行は心行くまで楽しんだ。
(ルパルナ、嬉しそうだな。それもそうか)
「このお酒おいしーい」
「おいおい、ベル、飲み過ぎるなよ」
その夜は長老宅に泊まることになった。ルパルナが以前使ってた部屋だという。
「お祖母ちゃん、ずっとそのままにしておいてくれたのね」
「これがルパルナの部屋か。いいね、きれいに整えられてて清潔感があって」
「あまり見ないで。恥ずかしい」
3人ともほろ酔い加減で、気持ちよくベッドに潜り込んだ。
そしていつも通りルパルナを求めようとしたが、止められた。
「ごめんね。お祖母ちゃんに教えてもらったの。だから暫くは我慢して・・・ね」
「そ、そういうものなんだな。わかった。ルパルナが良いと言うまで我慢するから」
(全く無知だから、言いなりになるしかないよな・・・)
「ありがとう。大好き」
「愛してるよ」
優しく抱きしめ、口づけをした。
深夜の事だった。
皆眠りについていたが、ベルが急に起き上がり言った。
「起きて!誰か窓から覗いてる!」
ラウルとルパルナは飛び起きた。
武器を手に窓に近づき開け放つ。
暗闇の中、そこには大勢の人の影があった。皆武器を持って家を取り囲んでいる。
「いったい何事だ!!」
ラウルは叫んだ。
すると次々に松明の火がともる。そこにいたのは村人たちのようだった。
「ルナ、よく帰ってきたな!」
急に部屋の扉が破られる。そこには長老を抱え、こちらを見据える男たちがいた。
長老を抱える若者は、筋骨隆々で黒髪を3か所、色紐で縛っている。
肌は黒く左頬に大きな縦傷がある。
「あんたはレガンド!お祖母ちゃんに何するの!」
飛び掛かろうとするルパルナを制すように男は言い放った。
「まて!動いたらババァの首折るぜ」
「くっ、いったいこれは何!?何の用なの!」
「お前は俺の嫁になるハズだった女だよな。結婚の儀式の直前に逃げやがって・・・俺の面目を潰してくれた事、忘れちゃいないぜ」
「誰があんたの嫁になんか・・・お祖母ちゃんを返して出ていけ!」
祖母を人質に取られて、食って掛かるルパルナ。
「戻ってきたと思ったら、男を連れ込みやがって・・・俺だけじゃなく一族にもお前は泥を塗った!だが、俺は寛大だからな。今なら許してやる、一緒に来い。」
「絶対嫌!」
「ならババァの首をへし折る」
「卑怯者!!」
「ルナ、儂のことは良い。早く逃げるのじゃ」
長老が孫娘に言い含めるように言った。彼女は覚悟を決めているのだろう。だが、優しいルパルナがそれを良しとしていう通り逃げる訳はなかった。
「そんなのダメ!お祖母ちゃん!」
最早どうしようもなかった。不意をうたれた挙句、人質まで取られたら何もできはしなかった。
「・・・ルパルナ、武器を捨てよう。それしか無い」
「ラウル・・・ごめん」
二人は武器を捨てた。
「ルナ・・・こんな老いぼれの事など・・・」
無念そうな表情の長老。
「いいのよ。お祖母ちゃんにはもっともっと長生きしてもらわないとね」
ルパルナはレガンドと言われた男を睨みつけた。
「一緒に行くわ・・・。でも下着のままじゃ嫌だから服を着させて」
「ちっ早くしろ」
ルパルナは服を着ると男たちに縄をかけられて引立てられていく。
その時に、緑翆石の髪飾りが床に落ちた
「ラウル・・・うぅぅっ!!!」
僅かな抵抗も数人の男に囲まれて、細身の少女では何もできはしない。
「ルパルナ!!」
ラウルは叫んだが、その声は虚しく夜の闇に響いた。
「早く来い!それからお前ら、男の方は殺すなよ。痛めつけて牢に入れておけ。あとで使う」
ルパルナは、もがきながらも彼らに連れて行かれたのだった。
ラウルもまた縄をうたれた。そして外に連れ出され、家を取り巻いていた男たちによって激しい暴行を加えられた。耐物理防御の祝福があっても、いつ終わるともしれない暴行の嵐は彼の体力を容赦なく削っていく。
やがてラウルは意識を失った。
ここ一帯に散在する村は全てルパ一族の村で、この一族には、ある伝統がある。
一族で最も強い男は何人も妻を持つことができる。それは人の妻であっても例外なくとりあげることができる。
ルパ族は外からの血の流入を嫌い、一族の中で血を存続させることを選んだ。これは今も続く伝統であり、そうして強い血を持った子を産み育ててきたのだという。
この伝統には理由がある。それは一族本来の力を残すためと言われている。
それが何かはわからない。
今は伝統を重んじてはいるものの、そこまで厳しくはなく、外部と交わる者も稀にいるとか。
(これはとんでもない・・・公認寝取られじゃないか)
「ルナはそれを毛嫌いしてな・・・。もちろん、強者の妻に選ばれなければ関係なかったのだが・・・不運にも選ばれてしまった。今の強者はルナの幼馴染でな。そのために執着があったのだろう」
「私はあいつの事好きじゃなかった。乱暴者で我儘で。村にいたときはどうにか納得しようって思ったこともあったけど、やっぱり駄目だったの」
「それで飛び出した・・・と」
「うん・・・」
「それが正解だったのよね。ラウルと出会えたんだもの」
ルパルナは顔を赤くした。
「お祖母ちゃん、あのね、ちょっとこっちきて」
「どうしたね?」
何やら二人で話している。
ベルがすいーっと飛んで行って話を聞いている。
「おお、ルナ。それは恐らく間違いない。兆候が教えてくれておる」
「わあああああっおめでとう!ルパルナ!」
───なんだか盛り上がってるな
「ラウル、あのね・・・私赤ちゃんができた・・・かも」
照れながらルパルナは教えてくれた。
「え・・・・あ、赤ちゃん!!!」
正直嬉しかった。結婚してたころは子供が授からなかった。
しかし今、中身が違うとはいえ自分の子供ができたのだ。
ラウルはルパルナを抱きしめて、 ありがとうと、何度も伝えた。
その日はルパルナの祖母の家で細やかな祝いをした。
久しぶりに孫が帰ってきた上に、孫か妊娠しているとの喜ばしいことが続いたため、長老はすごく嬉しそうだった。
精一杯のもてなしに、一行は心行くまで楽しんだ。
(ルパルナ、嬉しそうだな。それもそうか)
「このお酒おいしーい」
「おいおい、ベル、飲み過ぎるなよ」
その夜は長老宅に泊まることになった。ルパルナが以前使ってた部屋だという。
「お祖母ちゃん、ずっとそのままにしておいてくれたのね」
「これがルパルナの部屋か。いいね、きれいに整えられてて清潔感があって」
「あまり見ないで。恥ずかしい」
3人ともほろ酔い加減で、気持ちよくベッドに潜り込んだ。
そしていつも通りルパルナを求めようとしたが、止められた。
「ごめんね。お祖母ちゃんに教えてもらったの。だから暫くは我慢して・・・ね」
「そ、そういうものなんだな。わかった。ルパルナが良いと言うまで我慢するから」
(全く無知だから、言いなりになるしかないよな・・・)
「ありがとう。大好き」
「愛してるよ」
優しく抱きしめ、口づけをした。
深夜の事だった。
皆眠りについていたが、ベルが急に起き上がり言った。
「起きて!誰か窓から覗いてる!」
ラウルとルパルナは飛び起きた。
武器を手に窓に近づき開け放つ。
暗闇の中、そこには大勢の人の影があった。皆武器を持って家を取り囲んでいる。
「いったい何事だ!!」
ラウルは叫んだ。
すると次々に松明の火がともる。そこにいたのは村人たちのようだった。
「ルナ、よく帰ってきたな!」
急に部屋の扉が破られる。そこには長老を抱え、こちらを見据える男たちがいた。
長老を抱える若者は、筋骨隆々で黒髪を3か所、色紐で縛っている。
肌は黒く左頬に大きな縦傷がある。
「あんたはレガンド!お祖母ちゃんに何するの!」
飛び掛かろうとするルパルナを制すように男は言い放った。
「まて!動いたらババァの首折るぜ」
「くっ、いったいこれは何!?何の用なの!」
「お前は俺の嫁になるハズだった女だよな。結婚の儀式の直前に逃げやがって・・・俺の面目を潰してくれた事、忘れちゃいないぜ」
「誰があんたの嫁になんか・・・お祖母ちゃんを返して出ていけ!」
祖母を人質に取られて、食って掛かるルパルナ。
「戻ってきたと思ったら、男を連れ込みやがって・・・俺だけじゃなく一族にもお前は泥を塗った!だが、俺は寛大だからな。今なら許してやる、一緒に来い。」
「絶対嫌!」
「ならババァの首をへし折る」
「卑怯者!!」
「ルナ、儂のことは良い。早く逃げるのじゃ」
長老が孫娘に言い含めるように言った。彼女は覚悟を決めているのだろう。だが、優しいルパルナがそれを良しとしていう通り逃げる訳はなかった。
「そんなのダメ!お祖母ちゃん!」
最早どうしようもなかった。不意をうたれた挙句、人質まで取られたら何もできはしなかった。
「・・・ルパルナ、武器を捨てよう。それしか無い」
「ラウル・・・ごめん」
二人は武器を捨てた。
「ルナ・・・こんな老いぼれの事など・・・」
無念そうな表情の長老。
「いいのよ。お祖母ちゃんにはもっともっと長生きしてもらわないとね」
ルパルナはレガンドと言われた男を睨みつけた。
「一緒に行くわ・・・。でも下着のままじゃ嫌だから服を着させて」
「ちっ早くしろ」
ルパルナは服を着ると男たちに縄をかけられて引立てられていく。
その時に、緑翆石の髪飾りが床に落ちた
「ラウル・・・うぅぅっ!!!」
僅かな抵抗も数人の男に囲まれて、細身の少女では何もできはしない。
「ルパルナ!!」
ラウルは叫んだが、その声は虚しく夜の闇に響いた。
「早く来い!それからお前ら、男の方は殺すなよ。痛めつけて牢に入れておけ。あとで使う」
ルパルナは、もがきながらも彼らに連れて行かれたのだった。
ラウルもまた縄をうたれた。そして外に連れ出され、家を取り巻いていた男たちによって激しい暴行を加えられた。耐物理防御の祝福があっても、いつ終わるともしれない暴行の嵐は彼の体力を容赦なく削っていく。
やがてラウルは意識を失った。
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