50 / 73
第五章
遺跡の外
しおりを挟む
「ラウル、荷物に弓が混じってるわ」
点検をしていたルパルナが言ってきた。
「弓?ボウィックの街でルパルナ使ってたろ?それじゃないのか」
「あれは武器屋さんのを適当に借りてただけよ。なんか装飾が奇麗な弓ね」
「それ、魔法装備だと思うわよ。効果はわからないけど」
ベルが教えてくれた
「屋敷の誰かが入れてくれたのかな・・・」
「でも、弓があっても矢が無いのよね」
「それじゃ無意味だな」
「うーん。どうしよう、これ」
「ルパルナが管理してくれ」
「はーい」
ディオラムの遺跡はアンセルムスの街から西におよそ2日、小雨が降る夜に到着した。すでにいくつかの冒険者パーティがいて、それぞれ野営をしている。ラウル達も木の陰に荷馬車を止めて野営の準備を始めた。
「こんな雨の日は幌馬車でよかったって思うね」
「そうだな。そうそう、ここはアンデッドがよく出てくるそうだ。こうして野営をしている火を目当てにして襲ってくることもあるらしいぞ」
「ここは古代の墓地だったっけ。明日は地下に行くんでしょ?」
「ああ、師匠がいるかどうかわからないけど、行けるところまでは行ってみようかと思う。だが、ルパルナはあまり無理をしないように。少しでもきついと感じたら、すぐに言うこと。そこで探索は終えるから」
「わかった」
その深夜、3人でくっついて馬車で寝ていると、表で剣を打ち合う音や声が静寂を破った。
思っていた通り、アンデッドが現れたようだ。不運にも襲われたパーティが応戦しているようだ。
「少し離れているようだが・・・手伝いはいるかな?ベル、見てきてくれよ」
「眠いわー」
「また服作ってあげるから、お願い」
「もーしょうがないなー」
ふらふらと表に飛んでいくベル。
しばらくして戻ってきた
「ほっといてよさそうよ?近くのパーティが助けに行ってるみたい」
「そうか。まあ、様子を見ながら休むとしようか。ルパルナ、眠っていいよ。俺が気を付けておく」
「ん・・・無理しないでね。私だってまだ全然動けるんだし」
「ああ」
「私にも気をつかえぇぇぇぇ!」
「ふふっベルおいで。一緒に寝ましょ」
襲撃は間もなく収まったかに思えたが・・・ベルが急に飛び起きた。
「私たちの方に何か来てる。数多いみたい」
「よし、俺が行こう」
ラウルが飛び出すと森の奥からボロボロの身体を引きずった奴やスケルトンが10体以上出現していた。木に繋がれた馬は怯えて激しく嘶いている。
火焔魔鎧を発動し、武器に炎を纏わせたラウルは次々とアンデッド達を倒していく。
(この程度は相手じゃないな。)
戦っていると、どんどんアンデッドが増えてきた。
(やられることはないと思うが、面倒だな・・・)
「私も戦うよ!」
「ルパルナ!ありがとう」
彼女は炎を纏った2本の短剣を使って次々モンスターを退けていく。
ルパルナにとってもこのアンデッド共は数が多いだけの雑魚の類という感じだった。
後に知ったが、ルパルナの短剣は銀製でアンデッドに対し特別強い効果があったようだ。それにプラスして魔法効果を足したのだ。弱い訳がない。
敵に対する度に両手の短剣をくるくるっと回転させて攻撃する。
ルパルナのクセなのだろうが、まるで円形の武器を使って攻撃してるように見える。
それもあって、舞うように戦う彼女はとても美しい。
一方でベルは馬を落ち着かせているようだ。言われずとも判断してこういう動きをしてくれる彼女にはいつも助けられている。
(ルパルナもそうだけど、ベルも俺の至らないところを自分から助けてくれる。旅慣れているからなんだろうか。俺は元農民で、こういったことの判断に慣れてない・・・。とにかくありがたい。)
やがてアンデッドは打ち止めとなったのか、湧いてくる様子は無くなった。
「いい運動になったね!」
「ああ、良い動きだったな。ルパルナ。流石だよ」
「ありがとう!」
「さ、すっかり濡れたし身体拭いて温まろう。火をおこすよ」
「ベル!もう大丈夫だ。馬をありがとう」
「はーい」
3人は雨で濡れた身体を冷やさないように暖かい紅茶を飲み、再び眠りにつく。といっても、そこまでぐっすりと眠れた訳ではないが。
日が昇り、3人はダンジョンに潜る準備を整え、馬を放して出発した。
ルパルナが弓を持ってきていた。
「あれ?それ持っていくのか」
「うん、鞄にメモが入ってたのよ。お義兄さんからだったみたいよ」
ルパルナがメモを見せてくれた。
『この弓は俺が成人になったときに、父上から貰ったものだ。自分の魔力を矢にして放つことができる魔法の弓だ。だが、俺では魔力が少なすぎて使いこなすことができないので、お前たちに贈ることにした。俺からの結婚祝いだ』
「そうか・・・兄上が。直接渡してくれればよかったのにな」
「ふふっ恥ずかしかったんじゃない?」
地下に行く入り口は1箇所であり、そこには既にいくつかのパーティが集まっていた。
不安そうにするもの、気力充実したものなど様々だ。
皆こちらを見ている。やっぱりベルの存在が珍しいのだろう。
「中で団子になって進むのは避けたい。さっさと進もう」
「はーい」
ラウル達は、やや早足で中に入っていった。
点検をしていたルパルナが言ってきた。
「弓?ボウィックの街でルパルナ使ってたろ?それじゃないのか」
「あれは武器屋さんのを適当に借りてただけよ。なんか装飾が奇麗な弓ね」
「それ、魔法装備だと思うわよ。効果はわからないけど」
ベルが教えてくれた
「屋敷の誰かが入れてくれたのかな・・・」
「でも、弓があっても矢が無いのよね」
「それじゃ無意味だな」
「うーん。どうしよう、これ」
「ルパルナが管理してくれ」
「はーい」
ディオラムの遺跡はアンセルムスの街から西におよそ2日、小雨が降る夜に到着した。すでにいくつかの冒険者パーティがいて、それぞれ野営をしている。ラウル達も木の陰に荷馬車を止めて野営の準備を始めた。
「こんな雨の日は幌馬車でよかったって思うね」
「そうだな。そうそう、ここはアンデッドがよく出てくるそうだ。こうして野営をしている火を目当てにして襲ってくることもあるらしいぞ」
「ここは古代の墓地だったっけ。明日は地下に行くんでしょ?」
「ああ、師匠がいるかどうかわからないけど、行けるところまでは行ってみようかと思う。だが、ルパルナはあまり無理をしないように。少しでもきついと感じたら、すぐに言うこと。そこで探索は終えるから」
「わかった」
その深夜、3人でくっついて馬車で寝ていると、表で剣を打ち合う音や声が静寂を破った。
思っていた通り、アンデッドが現れたようだ。不運にも襲われたパーティが応戦しているようだ。
「少し離れているようだが・・・手伝いはいるかな?ベル、見てきてくれよ」
「眠いわー」
「また服作ってあげるから、お願い」
「もーしょうがないなー」
ふらふらと表に飛んでいくベル。
しばらくして戻ってきた
「ほっといてよさそうよ?近くのパーティが助けに行ってるみたい」
「そうか。まあ、様子を見ながら休むとしようか。ルパルナ、眠っていいよ。俺が気を付けておく」
「ん・・・無理しないでね。私だってまだ全然動けるんだし」
「ああ」
「私にも気をつかえぇぇぇぇ!」
「ふふっベルおいで。一緒に寝ましょ」
襲撃は間もなく収まったかに思えたが・・・ベルが急に飛び起きた。
「私たちの方に何か来てる。数多いみたい」
「よし、俺が行こう」
ラウルが飛び出すと森の奥からボロボロの身体を引きずった奴やスケルトンが10体以上出現していた。木に繋がれた馬は怯えて激しく嘶いている。
火焔魔鎧を発動し、武器に炎を纏わせたラウルは次々とアンデッド達を倒していく。
(この程度は相手じゃないな。)
戦っていると、どんどんアンデッドが増えてきた。
(やられることはないと思うが、面倒だな・・・)
「私も戦うよ!」
「ルパルナ!ありがとう」
彼女は炎を纏った2本の短剣を使って次々モンスターを退けていく。
ルパルナにとってもこのアンデッド共は数が多いだけの雑魚の類という感じだった。
後に知ったが、ルパルナの短剣は銀製でアンデッドに対し特別強い効果があったようだ。それにプラスして魔法効果を足したのだ。弱い訳がない。
敵に対する度に両手の短剣をくるくるっと回転させて攻撃する。
ルパルナのクセなのだろうが、まるで円形の武器を使って攻撃してるように見える。
それもあって、舞うように戦う彼女はとても美しい。
一方でベルは馬を落ち着かせているようだ。言われずとも判断してこういう動きをしてくれる彼女にはいつも助けられている。
(ルパルナもそうだけど、ベルも俺の至らないところを自分から助けてくれる。旅慣れているからなんだろうか。俺は元農民で、こういったことの判断に慣れてない・・・。とにかくありがたい。)
やがてアンデッドは打ち止めとなったのか、湧いてくる様子は無くなった。
「いい運動になったね!」
「ああ、良い動きだったな。ルパルナ。流石だよ」
「ありがとう!」
「さ、すっかり濡れたし身体拭いて温まろう。火をおこすよ」
「ベル!もう大丈夫だ。馬をありがとう」
「はーい」
3人は雨で濡れた身体を冷やさないように暖かい紅茶を飲み、再び眠りにつく。といっても、そこまでぐっすりと眠れた訳ではないが。
日が昇り、3人はダンジョンに潜る準備を整え、馬を放して出発した。
ルパルナが弓を持ってきていた。
「あれ?それ持っていくのか」
「うん、鞄にメモが入ってたのよ。お義兄さんからだったみたいよ」
ルパルナがメモを見せてくれた。
『この弓は俺が成人になったときに、父上から貰ったものだ。自分の魔力を矢にして放つことができる魔法の弓だ。だが、俺では魔力が少なすぎて使いこなすことができないので、お前たちに贈ることにした。俺からの結婚祝いだ』
「そうか・・・兄上が。直接渡してくれればよかったのにな」
「ふふっ恥ずかしかったんじゃない?」
地下に行く入り口は1箇所であり、そこには既にいくつかのパーティが集まっていた。
不安そうにするもの、気力充実したものなど様々だ。
皆こちらを見ている。やっぱりベルの存在が珍しいのだろう。
「中で団子になって進むのは避けたい。さっさと進もう」
「はーい」
ラウル達は、やや早足で中に入っていった。
50
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる