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第五章
手合わせ
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「もーびっくりしたわよ!あのモンスター!いきなり出会ったら大きな目がびかびかって!」
「はいはい」
「手がぴくぴくしてて可愛かったわよ」
「いじわるぅ!」
道を戻り、広間にやってくると一人の老人が立っていた。
簡素な衣服に身体に見合うショートソードを1本身に着けただけのその小柄な老人はラウル達を見かけるとニヤっと微笑んで近づいてきた。
「・・・」
「あれって・・・まさかイグニア様?」
「はっは!ラウル、久しぶりじゃ!」
「お、お師匠様?!」
「焔嵐の気配を感じてここに出てきたが、やはりお主だったか」
「ご無沙汰しております。こっちは私の妻、ルパルナとベルです」
「そうかそうか。妻か・・・なんじゃとう!?」
「先日結婚しまして・・・」
「これはめでたい事だな。おめでとう」
イグニアは目を細めた。
「お腹には赤ちゃんもいるのよ~」
「なんと!これは御父上もお喜びじゃろう」
「はい!ところでお師匠様、何故こんなところに?」
「おお、雨露凌げる上に、冒険者の連中もよく来るし、退屈しないからの」
「な、なるほど・・・」
「ところでラウル、ちと今のお前の力を見たい」
「は?」
「まだ火龍は見つけてはおらんのだろう?ならば今の力で奴に敵うか確かめたいのじゃよ」
(火龍だと?奴に敵うって・・・ラウルは龍討伐しようとしていたのか)
「さあ、幸いにもここは広い。全力でかかってくるがいい」
「わかりました。参ります!お師匠様!」
ラウルは焔帝イグニアに全力で打ちかかる。もちろん、真剣である。火焔魔鎧を纏い、炎の大剣で攻撃をする。イグニアは後ろに飛びながらその攻撃を往なす、往なす、往なす。
老人と思えない素早さで、ラウルの攻撃が当たらない。
(早すぎる!!これが焔帝!世界の5指に入る実力者か!)
「次は技を放て!焔嵐じゃ!」
「はい!焔嵐!!」
先ほどの魔物にも放った範囲攻撃がイグニアを包む。しかし、次の瞬間、火焔旋風は老人の一撃で掻き消えた。
「なっ!?」
「・・・次は火龍斬じゃ。全力で来い」
ラウルが火龍斬を放とうとした時、イグニアも同じ構えを見せていた。
(火龍斬と火龍斬か!少しでも加減したら死ぬかもしれない!!)
「おおおお!!火龍っ斬!!!」
二人の火龍斬は丁度両者の真ん中あたりで激突した。
2匹の火龍は激しくぶつかり絡み合い、互いを喰い尽くそうとしているが、やがてイグニアの火龍が圧し始める。
(マジか!?ラウルの本気の攻撃が圧されるというのか)
そして、ラウルの火龍が飲み込まれるとラウル自身も飲み込まれた。
「うおああああああっ!!!」
「ラウル!!!」
ラウルは生きていた。火焔魔鎧は消し飛んで大剣は折れ、かなりのダメージを受けていたが死にはしなかったのは火龍斬同士のぶつかり合いだったからだろう。
「まるで歯が立ちませんでした・・・さすが・・・お師匠様」
老人はラウルに近づいてきた。
「・・・ラウル。お主、何者だ?」
(見破られた?!)
どぎまぎして何も話せないでいると、老人は続けた。
「お主、いったいどうしたのだ?まるでなっていない。これでは技が使えるようになっただけのヒヨッコと変わらん。儂と別れた数年間、修行を怠っていたのか?」
「い、いえ、それは・・・」
「魂の燃え上がりが足らぬ。まるで別人じゃ。なにがあった!?儂は確かにお前に技を授け、最後の試練に向かわせたはずじゃ。それはお前ならば火龍と出くわすまでに技の力を蓄えることができる。倒す事ができるようになると信じておったからだ」
「ラウルは心に傷を受けたんです!」
ルパルナが叫んだ。
「む・・・どういうことじゃ?」
「ラウルは自分を追って旅に出た弟のカレルを亡くしたんです・・・」
「何!?カレルが死んだと!!」
意外にもイグニアはカレルの死に衝撃を受けていた。
「いったい何があったのだ・・・」
「カレルは・・・私と合流後、私たちが別件でパーティを離れているうちに別の仲間と一緒に簡単な依頼を受けました。ですが、簡単だった依頼が困難なものとなってしまったのです。そう言ったことはよくあることです。ですが、カレルはまだその変化に対応できなかった。若さから逃げ帰ることもできず、仲間と一緒に命を失いました」
「おお・・・なんということじゃ。焔帝はお主ら兄弟が互いに継ぐものと安心しておったのに・・・」
老人は一気に老けたように見えた。
「ラウル、気持ちはよくわかるが、こうなったらお主がしっかりせねばいかんぞ。必ず火龍を倒し、奴の肉を喰らえ!この試練を必ず達するのじゃ。そして焔帝の名を継ぐのだ!」
「はい!お師匠様!」
「そうか・・・カレルがのう・・・。運命とは残酷よな」
(火龍討伐だと・・・。さすがに一人でできる事じゃない。仲間を増やさないといけないということか。そうだとすると、ここから先はルパルナは無理だ。出産に備えさせないと。)
ラウルはルパルナと離れて旅をすることを決意した。彼女と子供を守るために仕方のない決断だった。
「はいはい」
「手がぴくぴくしてて可愛かったわよ」
「いじわるぅ!」
道を戻り、広間にやってくると一人の老人が立っていた。
簡素な衣服に身体に見合うショートソードを1本身に着けただけのその小柄な老人はラウル達を見かけるとニヤっと微笑んで近づいてきた。
「・・・」
「あれって・・・まさかイグニア様?」
「はっは!ラウル、久しぶりじゃ!」
「お、お師匠様?!」
「焔嵐の気配を感じてここに出てきたが、やはりお主だったか」
「ご無沙汰しております。こっちは私の妻、ルパルナとベルです」
「そうかそうか。妻か・・・なんじゃとう!?」
「先日結婚しまして・・・」
「これはめでたい事だな。おめでとう」
イグニアは目を細めた。
「お腹には赤ちゃんもいるのよ~」
「なんと!これは御父上もお喜びじゃろう」
「はい!ところでお師匠様、何故こんなところに?」
「おお、雨露凌げる上に、冒険者の連中もよく来るし、退屈しないからの」
「な、なるほど・・・」
「ところでラウル、ちと今のお前の力を見たい」
「は?」
「まだ火龍は見つけてはおらんのだろう?ならば今の力で奴に敵うか確かめたいのじゃよ」
(火龍だと?奴に敵うって・・・ラウルは龍討伐しようとしていたのか)
「さあ、幸いにもここは広い。全力でかかってくるがいい」
「わかりました。参ります!お師匠様!」
ラウルは焔帝イグニアに全力で打ちかかる。もちろん、真剣である。火焔魔鎧を纏い、炎の大剣で攻撃をする。イグニアは後ろに飛びながらその攻撃を往なす、往なす、往なす。
老人と思えない素早さで、ラウルの攻撃が当たらない。
(早すぎる!!これが焔帝!世界の5指に入る実力者か!)
「次は技を放て!焔嵐じゃ!」
「はい!焔嵐!!」
先ほどの魔物にも放った範囲攻撃がイグニアを包む。しかし、次の瞬間、火焔旋風は老人の一撃で掻き消えた。
「なっ!?」
「・・・次は火龍斬じゃ。全力で来い」
ラウルが火龍斬を放とうとした時、イグニアも同じ構えを見せていた。
(火龍斬と火龍斬か!少しでも加減したら死ぬかもしれない!!)
「おおおお!!火龍っ斬!!!」
二人の火龍斬は丁度両者の真ん中あたりで激突した。
2匹の火龍は激しくぶつかり絡み合い、互いを喰い尽くそうとしているが、やがてイグニアの火龍が圧し始める。
(マジか!?ラウルの本気の攻撃が圧されるというのか)
そして、ラウルの火龍が飲み込まれるとラウル自身も飲み込まれた。
「うおああああああっ!!!」
「ラウル!!!」
ラウルは生きていた。火焔魔鎧は消し飛んで大剣は折れ、かなりのダメージを受けていたが死にはしなかったのは火龍斬同士のぶつかり合いだったからだろう。
「まるで歯が立ちませんでした・・・さすが・・・お師匠様」
老人はラウルに近づいてきた。
「・・・ラウル。お主、何者だ?」
(見破られた?!)
どぎまぎして何も話せないでいると、老人は続けた。
「お主、いったいどうしたのだ?まるでなっていない。これでは技が使えるようになっただけのヒヨッコと変わらん。儂と別れた数年間、修行を怠っていたのか?」
「い、いえ、それは・・・」
「魂の燃え上がりが足らぬ。まるで別人じゃ。なにがあった!?儂は確かにお前に技を授け、最後の試練に向かわせたはずじゃ。それはお前ならば火龍と出くわすまでに技の力を蓄えることができる。倒す事ができるようになると信じておったからだ」
「ラウルは心に傷を受けたんです!」
ルパルナが叫んだ。
「む・・・どういうことじゃ?」
「ラウルは自分を追って旅に出た弟のカレルを亡くしたんです・・・」
「何!?カレルが死んだと!!」
意外にもイグニアはカレルの死に衝撃を受けていた。
「いったい何があったのだ・・・」
「カレルは・・・私と合流後、私たちが別件でパーティを離れているうちに別の仲間と一緒に簡単な依頼を受けました。ですが、簡単だった依頼が困難なものとなってしまったのです。そう言ったことはよくあることです。ですが、カレルはまだその変化に対応できなかった。若さから逃げ帰ることもできず、仲間と一緒に命を失いました」
「おお・・・なんということじゃ。焔帝はお主ら兄弟が互いに継ぐものと安心しておったのに・・・」
老人は一気に老けたように見えた。
「ラウル、気持ちはよくわかるが、こうなったらお主がしっかりせねばいかんぞ。必ず火龍を倒し、奴の肉を喰らえ!この試練を必ず達するのじゃ。そして焔帝の名を継ぐのだ!」
「はい!お師匠様!」
「そうか・・・カレルがのう・・・。運命とは残酷よな」
(火龍討伐だと・・・。さすがに一人でできる事じゃない。仲間を増やさないといけないということか。そうだとすると、ここから先はルパルナは無理だ。出産に備えさせないと。)
ラウルはルパルナと離れて旅をすることを決意した。彼女と子供を守るために仕方のない決断だった。
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