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第六章
武闘大会①
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翌日、ラウルはベルに『武闘大会が終了したら王都を発つ』との伝言をアイシャに頼んだ。
彼女は食事を早々に済ませると、素早く飛んで行った。
「このままベルを置いて行ってもいいの?」
「ああ、アイツは俺だけは何処にいても見つけることができるらしい。だから心配なく出かけられるよ」
「そうなのね。便利だわ~。私もそんな能力が欲しい」
「そういえばナディーリア、君の神の祝福はなんだい?」
「私?私のは・・・実は何もないの」
「そうだったか」
「本当に何をやっても不器用だったし・・・祝福もないって馬鹿にされることもあったんだよ。酷くない?」
「酷いな。珍しい事でもないのに」
「でしょう。そういうとこも里から出てきた理由の一つなのよね」
「そうか。まあ、ここでは気にするな。ナディーリアは俺たちの大切な仲間だからな」
「うん!」
「それじゃコロシアムに行こうか。まだ座れるだろう」
「お弁当持っていこうね」
二人はベルを待たずにコロシアムに向かった。途中で観戦中に飲食できるものを買って、軽く露店を冷やかしながら。
コロシアムは太陽が頂点に昇る前から熱戦が繰り広げられていた。2つに分けられた会場で2次予選にに進んだ選手たちは戦っている。戦士・騎士・魔術師・弓士・盗賊(便宜上レンジャー)、人間・エルフ・ドワーフ・ハーフリング等など職・種族関係なく振り分けられて戦っている。
ラウル達は魔術師に注目して見ているが、何人か優れた術者を見つけることができた。
老人2人に青年が1人、女性が1人。
「目ぼしいのは4人。若いのに優れた術者がいる。勿論それ以外にもいい感じの選手がいるな」
「うんうん。里の術師より凄いんじゃないかなぁ。世界は広いね」
「そうだな。しかし・・・ベル遅いな」
「アイシャに絡んでるのかしら。ふふっ」
「手紙にしておけばよかったかな・・・変な事言ってなければいいが」
この日は2次予選だけで、翌日決勝が行われるようだ。32人がトーナメントで戦い、優勝を目指す。ラウル達が目を付けた魔術師はちょうど半分、老人と女性が勝ち残っていた。
そこでラウルは敗北したが、実力を認めた2人に声を掛けてみたが、二人ともすでにどこかのパーティに所属していたため断念せざるを得なかった。
宿に戻ると間もなく、ベルが戻ってきた。
「ただいまー」
「遅かったな。どうしたんだ?」
「アイシャとずっといたのよ。彼女は旅立ちの日まで宝物庫管理に戻ったみたい」
「それも大事だからな。アイシャみたいな腕の立つ騎士がいないと困るだろう」
「ベルから甘い匂いがする」
「調理場でごちそうになってたのよ~」
「お前ご迷惑をかけるなと・・・」
「みんな邪魔じゃないっていってたもの!」
「アイシャのお陰だな。今度礼を言っておこう」
武闘大会は明日で終了となる。出場者は連戦になる過酷なスケジュールだが、楽しみだった。
「ねえ、ラウル。貴方が参加して目立てば仲間に入りたがる人もいるんじゃないの?」
「それはそうだろうけど、予選してないしな。まあ、地道に探すさ」
この日は早々に休むことにした。翌日いい席を取るためだ。弁当は宿の親父に用意してもらうことになった。
翌日、一行はコロシアムに向かった。しかし既に観客が多く詰めかけていて、思っているようないい席は取れそうになかった。
「こんな早い時間にこんなに来てるなんて」
「すごいな。みんな娯楽に飢えてるんだろう」
「ラウル、お貴族特権で特別席で見ようよー」
「あまりそういうのは使いたくないんだよ・・・なんだか申し訳なくて」
「ふーん。なかなか染みついたものは抜けないのね。でも、好感が持てるわよ~」
ベルが頭の上で上から目線で言ってくる。
座席を確保して暫く待っていると、暇でどこかに飛んで行ってたベルが戻ってきた。
「ラウル、大変よ!参加者が一人棄権したって。それで希望者を一斉に戦わせて一人を選ぶ敗者復活戦?みたいなことするんだって!参加してきなよっ」
「それは予選をやってなくてもいいんだな?」
「直接王様に訊いてきたから間違いないわよ」
「お、お前!王様に直接話に行ったのか!」
「王様見に来てたから、ご挨拶しに行ったのよ~。ラウルを出場させろって言ってたわよ」
「そうか・・・なら行くか」
ラウルはゆっくり立ち上がると、人々をかき分けて参加者の待機場に向かった。
場所は判らなかったが、所々に立っている警備兵に教えてもらいながら辿り着くと、そこには既に10名以上の腕に覚えありといった老若男女・各種族が待機していた。中にはパーティに勧誘して断られた魔術師二人もいた。
若い魔術師と目が合うと、彼は近づいてきてくれて挨拶を交わす。
「昨日は悪かったな。せっかく誘ってくれたのに」
「いや、いいんだよ。仲間がいたのに知らずに済まなかった」
「この予選は勝ち残りが一人だ。よろしく頼むぜ!」
「ああ、こちらこそ」
魔術師のイメージとはかけ離れた爽やかな感じの青年だった。
暫く待ってると、戦闘会場までの通路を塞いでいた降し戸が開き、全員促されるままに通路を進み会場に歩み出た。すると全周囲から大歓声が上がり、気分を高揚させてくれる。それに続き、地響きのような銅鑼とラッパの音が空気を劈く。
「これより決戦に先駆けて、棄権者が出た関係で再予選を行う!参加者全員で戦い、勝ち残った一名が本戦に進むことになる!」
参加者は護衛の兵士と共に、会場の中央に連れてこられた。
貴賓席には国王陛下、魔導士殿の姿が見える。そして最前列の貴族席にから身を乗り出すようにしてアイシャが何やら叫んで激しく手を振っていた。
ラウルは頭の中にベルの意識が流れ込んできて、アイシャが役目を他の者に押し付けて応援に駆けつけてきてくれたことを知ったので、手を振り返した。
そして、ナディーリアとベルのいる席の方にも手を振った。
「それではこれより、再予選を開始する!!始め!!」
開始の声の後、再び地鳴りのように銅鑼が激しく叩かれた。
彼女は食事を早々に済ませると、素早く飛んで行った。
「このままベルを置いて行ってもいいの?」
「ああ、アイツは俺だけは何処にいても見つけることができるらしい。だから心配なく出かけられるよ」
「そうなのね。便利だわ~。私もそんな能力が欲しい」
「そういえばナディーリア、君の神の祝福はなんだい?」
「私?私のは・・・実は何もないの」
「そうだったか」
「本当に何をやっても不器用だったし・・・祝福もないって馬鹿にされることもあったんだよ。酷くない?」
「酷いな。珍しい事でもないのに」
「でしょう。そういうとこも里から出てきた理由の一つなのよね」
「そうか。まあ、ここでは気にするな。ナディーリアは俺たちの大切な仲間だからな」
「うん!」
「それじゃコロシアムに行こうか。まだ座れるだろう」
「お弁当持っていこうね」
二人はベルを待たずにコロシアムに向かった。途中で観戦中に飲食できるものを買って、軽く露店を冷やかしながら。
コロシアムは太陽が頂点に昇る前から熱戦が繰り広げられていた。2つに分けられた会場で2次予選にに進んだ選手たちは戦っている。戦士・騎士・魔術師・弓士・盗賊(便宜上レンジャー)、人間・エルフ・ドワーフ・ハーフリング等など職・種族関係なく振り分けられて戦っている。
ラウル達は魔術師に注目して見ているが、何人か優れた術者を見つけることができた。
老人2人に青年が1人、女性が1人。
「目ぼしいのは4人。若いのに優れた術者がいる。勿論それ以外にもいい感じの選手がいるな」
「うんうん。里の術師より凄いんじゃないかなぁ。世界は広いね」
「そうだな。しかし・・・ベル遅いな」
「アイシャに絡んでるのかしら。ふふっ」
「手紙にしておけばよかったかな・・・変な事言ってなければいいが」
この日は2次予選だけで、翌日決勝が行われるようだ。32人がトーナメントで戦い、優勝を目指す。ラウル達が目を付けた魔術師はちょうど半分、老人と女性が勝ち残っていた。
そこでラウルは敗北したが、実力を認めた2人に声を掛けてみたが、二人ともすでにどこかのパーティに所属していたため断念せざるを得なかった。
宿に戻ると間もなく、ベルが戻ってきた。
「ただいまー」
「遅かったな。どうしたんだ?」
「アイシャとずっといたのよ。彼女は旅立ちの日まで宝物庫管理に戻ったみたい」
「それも大事だからな。アイシャみたいな腕の立つ騎士がいないと困るだろう」
「ベルから甘い匂いがする」
「調理場でごちそうになってたのよ~」
「お前ご迷惑をかけるなと・・・」
「みんな邪魔じゃないっていってたもの!」
「アイシャのお陰だな。今度礼を言っておこう」
武闘大会は明日で終了となる。出場者は連戦になる過酷なスケジュールだが、楽しみだった。
「ねえ、ラウル。貴方が参加して目立てば仲間に入りたがる人もいるんじゃないの?」
「それはそうだろうけど、予選してないしな。まあ、地道に探すさ」
この日は早々に休むことにした。翌日いい席を取るためだ。弁当は宿の親父に用意してもらうことになった。
翌日、一行はコロシアムに向かった。しかし既に観客が多く詰めかけていて、思っているようないい席は取れそうになかった。
「こんな早い時間にこんなに来てるなんて」
「すごいな。みんな娯楽に飢えてるんだろう」
「ラウル、お貴族特権で特別席で見ようよー」
「あまりそういうのは使いたくないんだよ・・・なんだか申し訳なくて」
「ふーん。なかなか染みついたものは抜けないのね。でも、好感が持てるわよ~」
ベルが頭の上で上から目線で言ってくる。
座席を確保して暫く待っていると、暇でどこかに飛んで行ってたベルが戻ってきた。
「ラウル、大変よ!参加者が一人棄権したって。それで希望者を一斉に戦わせて一人を選ぶ敗者復活戦?みたいなことするんだって!参加してきなよっ」
「それは予選をやってなくてもいいんだな?」
「直接王様に訊いてきたから間違いないわよ」
「お、お前!王様に直接話に行ったのか!」
「王様見に来てたから、ご挨拶しに行ったのよ~。ラウルを出場させろって言ってたわよ」
「そうか・・・なら行くか」
ラウルはゆっくり立ち上がると、人々をかき分けて参加者の待機場に向かった。
場所は判らなかったが、所々に立っている警備兵に教えてもらいながら辿り着くと、そこには既に10名以上の腕に覚えありといった老若男女・各種族が待機していた。中にはパーティに勧誘して断られた魔術師二人もいた。
若い魔術師と目が合うと、彼は近づいてきてくれて挨拶を交わす。
「昨日は悪かったな。せっかく誘ってくれたのに」
「いや、いいんだよ。仲間がいたのに知らずに済まなかった」
「この予選は勝ち残りが一人だ。よろしく頼むぜ!」
「ああ、こちらこそ」
魔術師のイメージとはかけ離れた爽やかな感じの青年だった。
暫く待ってると、戦闘会場までの通路を塞いでいた降し戸が開き、全員促されるままに通路を進み会場に歩み出た。すると全周囲から大歓声が上がり、気分を高揚させてくれる。それに続き、地響きのような銅鑼とラッパの音が空気を劈く。
「これより決戦に先駆けて、棄権者が出た関係で再予選を行う!参加者全員で戦い、勝ち残った一名が本戦に進むことになる!」
参加者は護衛の兵士と共に、会場の中央に連れてこられた。
貴賓席には国王陛下、魔導士殿の姿が見える。そして最前列の貴族席にから身を乗り出すようにしてアイシャが何やら叫んで激しく手を振っていた。
ラウルは頭の中にベルの意識が流れ込んできて、アイシャが役目を他の者に押し付けて応援に駆けつけてきてくれたことを知ったので、手を振り返した。
そして、ナディーリアとベルのいる席の方にも手を振った。
「それではこれより、再予選を開始する!!始め!!」
開始の声の後、再び地鳴りのように銅鑼が激しく叩かれた。
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