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第六章
大会終わって
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人々は勝利者ラウルを称え、武闘大会は大盛況のうちに幕を閉じたのだった。
決勝でラウルが見せた組み技、逆エビ固めは「アルベルド」という名前を付けられて、一般の人たちに広まることになるが、そのおかげで何人かが不慮の死を遂げることになった。
「ラウル!おめでとう!!」
「本当に勝てるなんて思わなかったわ!」
「まさか組み技で勝負を決めるとはね~」
「みんなのお陰だよ。本当にありがとう」
ラウルはナディとアイシャを抱きしめた。ベルはそれを見て顔にくっついてきたので、頬ずりした。
「とにかく疲れた。今日はもう休みたい・・・」
「祝勝会は~?」
「すまん。立ってるのもやっとなんだ。早く寝たい」
「ラウル、宿はやめておいた方がいいですわ。城に泊まるといいと思います。私が手配しておきますから」
「私が王様にお願いしてこようか?」
「やめてくれ・・・こんなことで陛下を煩わせないでくれ」
「では、一足先に城に戻っていますね。あとで来てください」
「ありがとう。アイシャ」
ラウル達はその足で城に向かった。アイシャは馬で来ていたらしく、一足先に城に戻っている。
通りがかる人々は優勝者に惜しみない称賛の声をかけた。何故か声援に応えるベルを他所に、ラウルは疲労で倒れそうな身体を引きずって歩いて行った。
城ではアイシャが待っていてくれた。
「皆さんには客間が用意されましたので、そちらにお泊りくださいませ」
「お部屋は一人一部屋?」
「ええ」
「えー皆で一部屋でいいわよお」
「そう言う訳には・・・って、なんだか既視感があるやり取りですわ・・・」
「なんでもいいからもう寝かせてくれー」
「あ、ラウル。こっちですわ」
ラウル達はアイシャが用意してくれた客間に連れて行ってもらった。
そして各自(ベルはナディと一緒)の部屋に案内される。
ラウルは鎧を外すとベッドの上に倒れ伏し、気を失うように眠りについたのだった。
眠りについてからどれくらいの時間が経ったのか。
部屋は真っ暗になっていて、すでに日が沈んでいることが分かった。体の痛みは既に無く、スムーズに動けるようになっていた。
(さすがナディ。あれだけの消耗だったのに、もう大丈夫だ)
ラウルは窓を開け、吹き込む夜風を感じた。
「闘いの後の身体の火照りが取れていくようだ・・・」
「ラウル―」
「お、ベル」
「もう大丈夫そうね」
「ああ、ナディはすごいよ。ハリムの里のエルフたちは何で彼女を出来損ないだなんて言うんだろうな」
「きっとまだわかっていない弱点があるのよ。もっと仲良くならないとね」
「それはそうと、親父殿を探しに行こうと思う。もしくは兄上を」
「それって、カレルの事ね?」
「ああ、話そうと思ってな。全て正直に・・・と言うわけにはいかないが」
「いいんじゃない?ルパルナもいないし、いいタイミングだと思う」
ラウルはベルを伴って場内に父と兄を探しに出た。
闇雲に・・・等と愚かなことはしない。途中で出会った警備兵にアルベルド卿の居場所を教えてもらった。兄・ザカリアスの居場所も教えてもらったが、父と話す方が先だろうと言う事で、父の所に向かった。
父・アルベルド卿は軍務を取り仕切る軍務伯という位に就いている。
その居室にある扉は、金の装飾が散りばめられている。明らかに別格の人物がい居るという感じの部屋だった。扉前で警備をしている兵士に来たことを告げると、問題なく通された。
父は寝る前に酒を嗜んでいる所だった。
「ラウル、よく来たな。今日の活躍見事だったぞ」
「ありがとうございます。父上」
「飲むか?」
父は酒を勧めてきた。
「はい、いただきます」
親子で酌み交わす。しかし、いい報告ができないことをラウルは申し訳なく思っていた。
「父上、お聞きください」
「どうした?」
「ギルドから手紙が届きまして・・・カレルが・・・旅先で死んだと」
アルベルド伯はグラスを取り落とした。
先まで良い酒を飲んで仄かに赤くなっていた顔色が一気に冷めていた。
「カレルが・・・死んだ?」
「はい・・・カレルの最期を看取ったのは、フランクと言うラングリオ王国の農夫だったそうで、手紙によると、カレルは他愛のない依頼を仲間一人と共に受けて、問題なく遂行していたようです。
ところが、不測の事態が起こったと。フランクという者が言うには、ホブゴブリン数体を含んだ魔物の群れに不運にも遭遇してしまい、全てを片付けた後、力尽きたとの事でした・・・遺体はそのまま捨ておくわけにはいかず、現場の程近くに埋葬したとのことです。」
「・・・何ということだ・・・・。カレル・・・」
父は明らかに落胆していた。それもそうだろう・・・。
「私はこれから兄上にもお知らせしてまいります。母上には・・・」
「エステファニアとジルには俺から伝える。ラウル、ザカリアスと後から領地に戻ってこい」
アルベルド卿はそう言うとマントを羽織り、足早に部屋を出て行った。
ラウルはそのまま内務官の兄・ザカリアスの所に向かい、弟の訃報を伝え、父は故郷に発った事を伝えた。
ザカリアスはカレルの報告を聞くと、思わず立ち上がった。そしてずれた眼鏡を戻すと
「わかった。俺も急ぎ父上を追う。馬車を出すからお前も来るか?」
「ありがとうございます、兄上。ですが私は兄上の後を追います。仲間を連れて行かねばなりませんので」
「わかった。なるべく急げよ」
「はい」
ザカリアスは傍で控えていた副官に馬車の用意を命じ、自身は身支度を整える。
ラウルは部屋を辞し、自分の仲間たちの所に向かった。
決勝でラウルが見せた組み技、逆エビ固めは「アルベルド」という名前を付けられて、一般の人たちに広まることになるが、そのおかげで何人かが不慮の死を遂げることになった。
「ラウル!おめでとう!!」
「本当に勝てるなんて思わなかったわ!」
「まさか組み技で勝負を決めるとはね~」
「みんなのお陰だよ。本当にありがとう」
ラウルはナディとアイシャを抱きしめた。ベルはそれを見て顔にくっついてきたので、頬ずりした。
「とにかく疲れた。今日はもう休みたい・・・」
「祝勝会は~?」
「すまん。立ってるのもやっとなんだ。早く寝たい」
「ラウル、宿はやめておいた方がいいですわ。城に泊まるといいと思います。私が手配しておきますから」
「私が王様にお願いしてこようか?」
「やめてくれ・・・こんなことで陛下を煩わせないでくれ」
「では、一足先に城に戻っていますね。あとで来てください」
「ありがとう。アイシャ」
ラウル達はその足で城に向かった。アイシャは馬で来ていたらしく、一足先に城に戻っている。
通りがかる人々は優勝者に惜しみない称賛の声をかけた。何故か声援に応えるベルを他所に、ラウルは疲労で倒れそうな身体を引きずって歩いて行った。
城ではアイシャが待っていてくれた。
「皆さんには客間が用意されましたので、そちらにお泊りくださいませ」
「お部屋は一人一部屋?」
「ええ」
「えー皆で一部屋でいいわよお」
「そう言う訳には・・・って、なんだか既視感があるやり取りですわ・・・」
「なんでもいいからもう寝かせてくれー」
「あ、ラウル。こっちですわ」
ラウル達はアイシャが用意してくれた客間に連れて行ってもらった。
そして各自(ベルはナディと一緒)の部屋に案内される。
ラウルは鎧を外すとベッドの上に倒れ伏し、気を失うように眠りについたのだった。
眠りについてからどれくらいの時間が経ったのか。
部屋は真っ暗になっていて、すでに日が沈んでいることが分かった。体の痛みは既に無く、スムーズに動けるようになっていた。
(さすがナディ。あれだけの消耗だったのに、もう大丈夫だ)
ラウルは窓を開け、吹き込む夜風を感じた。
「闘いの後の身体の火照りが取れていくようだ・・・」
「ラウル―」
「お、ベル」
「もう大丈夫そうね」
「ああ、ナディはすごいよ。ハリムの里のエルフたちは何で彼女を出来損ないだなんて言うんだろうな」
「きっとまだわかっていない弱点があるのよ。もっと仲良くならないとね」
「それはそうと、親父殿を探しに行こうと思う。もしくは兄上を」
「それって、カレルの事ね?」
「ああ、話そうと思ってな。全て正直に・・・と言うわけにはいかないが」
「いいんじゃない?ルパルナもいないし、いいタイミングだと思う」
ラウルはベルを伴って場内に父と兄を探しに出た。
闇雲に・・・等と愚かなことはしない。途中で出会った警備兵にアルベルド卿の居場所を教えてもらった。兄・ザカリアスの居場所も教えてもらったが、父と話す方が先だろうと言う事で、父の所に向かった。
父・アルベルド卿は軍務を取り仕切る軍務伯という位に就いている。
その居室にある扉は、金の装飾が散りばめられている。明らかに別格の人物がい居るという感じの部屋だった。扉前で警備をしている兵士に来たことを告げると、問題なく通された。
父は寝る前に酒を嗜んでいる所だった。
「ラウル、よく来たな。今日の活躍見事だったぞ」
「ありがとうございます。父上」
「飲むか?」
父は酒を勧めてきた。
「はい、いただきます」
親子で酌み交わす。しかし、いい報告ができないことをラウルは申し訳なく思っていた。
「父上、お聞きください」
「どうした?」
「ギルドから手紙が届きまして・・・カレルが・・・旅先で死んだと」
アルベルド伯はグラスを取り落とした。
先まで良い酒を飲んで仄かに赤くなっていた顔色が一気に冷めていた。
「カレルが・・・死んだ?」
「はい・・・カレルの最期を看取ったのは、フランクと言うラングリオ王国の農夫だったそうで、手紙によると、カレルは他愛のない依頼を仲間一人と共に受けて、問題なく遂行していたようです。
ところが、不測の事態が起こったと。フランクという者が言うには、ホブゴブリン数体を含んだ魔物の群れに不運にも遭遇してしまい、全てを片付けた後、力尽きたとの事でした・・・遺体はそのまま捨ておくわけにはいかず、現場の程近くに埋葬したとのことです。」
「・・・何ということだ・・・・。カレル・・・」
父は明らかに落胆していた。それもそうだろう・・・。
「私はこれから兄上にもお知らせしてまいります。母上には・・・」
「エステファニアとジルには俺から伝える。ラウル、ザカリアスと後から領地に戻ってこい」
アルベルド卿はそう言うとマントを羽織り、足早に部屋を出て行った。
ラウルはそのまま内務官の兄・ザカリアスの所に向かい、弟の訃報を伝え、父は故郷に発った事を伝えた。
ザカリアスはカレルの報告を聞くと、思わず立ち上がった。そしてずれた眼鏡を戻すと
「わかった。俺も急ぎ父上を追う。馬車を出すからお前も来るか?」
「ありがとうございます、兄上。ですが私は兄上の後を追います。仲間を連れて行かねばなりませんので」
「わかった。なるべく急げよ」
「はい」
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ラウルは部屋を辞し、自分の仲間たちの所に向かった。
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