ボクの好きだった人

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第1章

救い

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ギリギリ間に合った入学式を無事終え

次の日、教室に向かうと

周りの人々はこう言った

「あの子病んでるのかな?眼帯に白マスクしてるよ…」

「遅刻して来た人ってあの子なの?」

「なんかやべぇやつきたな笑」

「女の子なのに髪の毛男みたいだよね」

「なんかちょっと関わりづらい系女子だな」

僕はヒソヒソ小声で話してる集団を
チラっと見てしまった

    あぁ。僕のことか…


耳にイヤホン付けて大音量でロックを聞いてるはずなのに、口の動きだけで何を言ってるか理解してしまった僕はきっと馬鹿だ。
そんなことを考えながら

聞いてないフリをして
群がっている廊下を素通りし

教室に入った。

ありがたいことに僕の席は左側で窓側だった

気を紛らわすのに外の景色を見れるのは

僕にとって救いだ。

外の景色を何も考えずただ眺めていたせいで

学校生活について延々と語っている
先生の話など耳に入ってこなかった。

気がついたらチャイムが鳴っていて
昼休みの時間が来た。
周りを見たら教室の席で仲良し同士と組んで
お弁当を開けている

そんな中僕は教室を出てある場所に向かった。

僕の昼食場所はずっと憧れていたあの場所で
食べると決めていたんだ。

漫画やアニメに出てくるあのシーン。

そう屋上だ。

カフェオレとメロンパン持って
走って向かった…

だが、現実はそういかないのが当たり前で…

ん…?ガチャガチャ(鍵が閉まっている)

あ…ですよね。やっぱ開きませんよね…

これが作った世界と現実世界の違いだと
最初から理解はしていたが
ほんの少し期待をしていた。

(よし帰ろう…)そう思って


屋上に向かっていた上り階段を

引き返そうとした時だった。

タッタッタッッ…と慌ててくる足音が聞こえた。

急いで来たのか少し息づかいを辛そうにしながら、僕に話しかけてきた。

「ねぇ!あなたも屋上で食べようとしてたの?」

「私もね!静かな場所で食べようと思って来たんだ!笑」

「あなたも一緒にどう?」

なぜか楽しそうに話す彼女を見て

僕は返す言葉のタイミングを逃してしまった

後ろから来た彼女は団子ヘアに付けていた

ヘアピンを取り出して

鍵穴にさしはじめた。

「…そ、そんなんで開くわけないだろ…」

「やめなよ髪の毛崩れるから…」

鍵を開けるのに必死になってる彼女は
ヘアピンを広げて試行錯誤していた。

すると…

ガチャ…(カチンッ)

「あ!!開いたぁ!!」

「ねぇ!!私すごくない!?笑」
そう言いながら彼女は

ドヤ顔をしながら嬉しそうにはしゃいでいた。

恐らくドアが開く音にかき消され

小声で喋った僕の言葉は

聞いてないだろう…

「うん、凄いね」

「まさか開くとは思わなかった」

「だよね~笑私も開けれるとは思わなかったもん!」

そういいながら

何もない屋上にスキップしながら入って柵に背中をつけて地べたに腰を下ろし

持っていた弁当を開けて食べはじめた。

その横でカフェオレを飲む僕。

そして彼女はずっと食べながら
質問攻めをし始める。

「ねぇあなたの名前は?」

「流川  笑涙」(るかわ   える)

「変わった名前だね笑」

「私は星  実愛ね!」(ほし     みなみ)

「覚えとくよ…」
コミュ障のせいで
脳内の中ではキミもなかなか変わってる名前だよなとか思っているのに

口からでる言葉はいつも
一言になってしまう…

「そういえば目悪いの?」

「いや、そこまで悪いわけじゃない…」

僕はその質問をされるとは思ってなかったし

ものもらいができて

腫れてるからなんだよ、なんて恥ずかしくて

答えることができなかった。

そして奇遇なことに彼女も眼帯をしていた。

けど聞いたらまずいかもしれないと

僕は思ったので理由は聞かなかった。

すると彼女からあっさりと

こう言った。

「私ね!笑コンタクトレンズしてるんだけど、ずっと付けたままにしてて、ものもらい出来ちゃったの笑」

彼女は面倒くさがり屋なのかな…

「あ…そうなんだ」
「実は僕も付けたままじゃないけど
傷ついて…」

「ふふふ笑気が合うねぇ~笑」

彼女は僕の返す言葉を

楽しそうに聞いてた。馬鹿にしたり

見た目で判断する人とは違う部類の人だと

僕は確信した。

笑って返してくれるキミを見て

僕は思わず自分から話した。

「僕といて気持ち悪いとか変人だとか思わないの?」

彼女はきょとんとしたまま

僕をじーと見る。

「なんで?この世界にいろんな人がいるのは当たり前だし、気にしないよ笑」

「それにあなたが僕って言っても違和感ないし、男の子の格好してても似合うと思う!」

僕はそれを聞いた瞬間、嬉しかった。

今まで否定されて生きてきたから。

親や僕を見る人は

みんな嫌な顔をしていた。

なのにキミは優しくて、僕を変人扱いを

しなかった…どこまでも僕を理解してくれる
んじゃないかと不意に思ってしまった。
色々考えているうちに込み上げてきて

涙目になった。

ぐっと感情を必死に止めようとしたけど
歯止めが効かず
僕の目から数滴の雫がこぼれ落ちた…


僕は白いマスクを少し上にあげて
前髪で顔を隠しながら言った。

「キミはまたここにくるの…?」

「あなたがいるなら私毎日ここに来る!笑」

「だから、明日もここで会おうね!」

「待ってるから!」

「うん。また明日…」

そして僕は初めて約束事をした。

高校生活の初日僕はどうせまた独りだと

思ってた。友達は要らない。

話し相手も要らない。あとで

悪口を言われるくらいなら

友情は要らないと思っていた。
けど、今は違う。

彼女になら心を開いてもいいかな…

不覚にもそう思ってしまったんだ。

僕は何も言わない景色と

ずっと微笑んでるキミに救われた。
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