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第61話 誰かに

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シャルロットはアーノルドに迷惑をかけなくないと思い、

婚約破棄を頑張ることにした。

ジョージアのときは、

シャルロットはリーゼロッテやジョージアや正妃や皆に好かれようと思って、

頑張って頑張って頑張って、

でも好きになってはもらえなくて、

辛くて辛くて、

結局努力は全部無駄になった。

しかしアーノルドに関しては皆に嫌われればいいのだと思ったら、

不思議と気が楽になった。

『どうせ既に嫌われているのだ。

嫌われてもいいのだ。』

シャルロットはそう思うと、

アーノルドとの会話も気が楽で、

次第に楽しくなってきた。

また、アーノルドはシャルロットを認めてくれた。

シャルロットが料理をすると言っても、

恥ずかしいと言うどころか、

すごいと誉めてくれた。

シャルロットが作ったお菓子も美味しいと言ってくれた。

シャルロットが無愛想で、

気の利いた話もできなくても、

変なやつだと笑ってくれた。

乗馬の際は華やかなものじゃなくて、

地味なものを着てこいと言ってくれた。

アーノルドの言い方はぶっきらぼうだったが、

随所に優しさが垣間見えた。



シャルロットはアーノルドと話しているうちに、

久々に家族以外の誰かに肯定された気がしたのだった。
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