猫目の伯爵令嬢は今日も今日とて労働に従事する(ФωФ)

てん

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第3話 借りたお金はきちんと返します(ФωФ)

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エヴァ・ランディールは一応歴とした伯爵令嬢である。

エヴァが子供の頃は、父親であるランディール伯爵と兄のアーノルドと共に王都から程近くの領地に静かに暮らしていた。

母親はエヴァが物心がつく前に流行り病で亡くなってしまっていたが、無口で生真面目な兄と、お人好しな父親と慎ましくも穏やかに暮らしていた。

元々ランディール伯爵家は裕福と言う訳ではなかったが、特に貧乏と言う訳でもなかった。

エヴァが15歳のとき、未曾有の豪雨によりランディール領地内にある河川が氾濫し、領内の農地は水浸しになり、多くの作物は駄目になってしまった。

ランディール伯爵は私財を投じ、護岸整備や領民たちの生活の補償にあてたがとても追い付かず、ついには借金をしてしまった。

ランディール伯爵が健康であればなんとか返せる金額であったが、領内が落ち着くと間もなくランディール伯爵は急な病でこの世を去ってしまった。

当時アーノルドはまだ17歳、王都の学園を卒業間近で、学園の寮に住んでいた。

エヴァは領地で父親を手伝っていたが、父親のランディール伯爵が亡くなると借金取達がいっせいにランディール伯爵家に押し掛けた。

まだ年端もいかないエヴァに借金取達は金を返せと攻め立てた。

アーノルドはできる限りエヴァを庇って自分が矢面にたったが、アーノルドもまだ何もできない若者だった。

そんな二人を見かねて助け船をだしてくれたのは隣の広大な領地を持つクリスハルト侯爵だった。

クリスハルト侯爵は父親のランディール伯爵と古くからの友人で、領地も隣り合っていた事から頻繁に交流を持っていた。

クリスハルト侯爵は借金取達から債権を買い取り、自分だけが債権者となった状態で、アーノルドとエヴァと話し合った。

クリスハルト侯爵は自分がアーノルドの後見になるからアーノルドに伯爵家と領地を継ぐようにと言ってくれたが、生真面目なアーノルドは頷かなかった。

「クリスハルト様、借金のことは感謝してもしきれません。

クリスハルト様がいなければ今頃私達兄妹はどうなっていたか。

これ以上クリスハルト様に御迷惑はおかけしたくありませんが、妹ひとりろくに守れない私に領民を守れるのか自信がありません。

それに逃げと謗られても何も言えませんが、私は人の上に立つより、宮仕えのほうが性格的に向いているのではないかと思います。

クリスハルト様からすれば、手間が増えるだけだと思いますが、領民のことを考えれば、領地はクリスハルト様に管理していただいた方がよいかと。」

アーノルドはそう言って、国に願いを出して、屋敷や領地を借金のカタとしてクリスハルト侯爵に渡したいと言った。

それでも借金の金額には足らないくらいだったので、残りは自分が王都で働いて返すと言った。

クリスハルト侯爵家は大変裕福で、王家とも繋がりがある家柄だったので、肩代わりした借金のことは気にするなとアーノルドに何回も言ったがアーノルドの意志はかわらなかった。

エヴァも兄の意見に同意し、自分も働きに出ると言った。







「やれやれ。

アーノルドもエヴァも父親に似て頑固だな。

ランディールも、借金をする前に私に相談してくれれば結果は違っただろうに。

まぁ、豪雨で河川が氾濫したときは私も自分の領内の対応で手一杯だったが。

君達の父親は昔から変なところで気を使うし、意地っ張りで頑固で。

よし。

とりあえず話は保留にしよう。

領地はしばらくは私がアーノルドの代理で管理しよう。

国には私からうまく報告するよ。

アーノルド、お前は確かにまだまだ経験不足だ。

しばらく王宮で経験を積めば自信がつくだろうし、王宮で人脈を作るのも悪くない。

エヴァも将来を考えれば、王宮に勤めてみるのも悪くはないだろう。

毎月私に顔を見せに来るんだよ?

しばらく働いてみて、領地や君たちの暮らしをどうするかは、またよく話し合おう。」






クリスハルト侯爵は苦笑しながらそう言って、不器用な兄妹の頭を代わる代わるくしゃくしゃと撫でた。
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