ある雪の降る日に

喜市

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6話

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ーーーー数分後。

城下町から少し外れた石畳の橋の向こうに大きな門が見えた。

禍々しい雰囲気のある魔窟を想像していたけれど、どちらかと言うと神殿?のような校舎になっている。

それにしても…

「…でっかぁ……」

いやデカすぎデカすぎ、初めて見たわこのサイズ。
なんなら結構栄えてる国の王宮敷地くらいあるよね?

「まぁな、さすが世界最大級の魔法学園ってとこだ。魔法省の幹部だって臨時教諭として来てるくらいんなんだからな!」

なんだか自分の自慢のように語るシヴァン先輩。

は、さておき。
ガヤガヤとごった返している門を先輩と通り抜ける。


最近は儀式のようなキチッとしたものはやらなくなったものの、入学式だってひとつの行事だ。
親子で来ている人が殆どなのだろう。
門の前で写真を撮ったりしている家族もちらほらと見受けられる。


…先輩は、僕が1人で来ていることに対して何も言ってこない。
多分それを気遣って明るく振舞ってくれているんだと思う。

その気遣いが、今はちょっと嬉しく思う。

「先輩、ありがとうございます。」

「ん?あぁいいのいいの。道に迷ってる可愛い後輩を助けるのは先輩の役目だからな。」

そういうことじゃ無いんだけどな笑

まぁ今は先輩の好意に甘えさせてもらう。




また、ふわふわと雪が空から降ってきた。
ひらひらと舞う雪は花びらみたいで、僕は目で追うように上を向いた。

視界には真っ白な空が映る。
バチッとシヴァン先輩と目が合った。

「…何ニヤニヤしてるんだ?悪いこと考えてんだろー。」

「考えてませんよ!先輩こそニヤニヤしてんじゃないですか。」

先輩はその言葉を聞いて笑うと、僕のコートに着いているフードを被せてくれた。

「風邪ひくから、被っときな。」

頭を撫でられて、やっぱりちょっと落ち着きが無くなる頭の中と、さっき見た真っ白な空と先輩の姿に胸がぎゅっと締め付けられる感覚に僕は少し困惑していた。

少し俯き加減で先輩の隣を歩く。
先輩も何か察したのだろうか、何も言わず歩幅を合わせてくれた。





ーーー「はい、確認致しました。ではこちらの学生証をお受け取りください。ご入学おめでとうございます。」

玄関先には仮設テントのようなものが設置され、受付会場となっていた。
招待状を係の人に渡し、無事学生証を受け取った。

名前と学生番号が書かれている。意外と質素だな?

「先輩、これ何に使えるんですか?」

「あー、これな。めちゃくちゃ大事だから無くすなよ?まず寮の鍵、学食の食券を買う時、ステータスの確認、なんと言っても身分証になる。通行証代わりにもなる優れものだ。」

「これで、ですか?名前と番号しかないですよ?」

裏表をクルクル確認してみても、情報はやはり何も変わらない。

「これからだよ。入学した後に顔写真を撮ったりステータス測ったり、色々してそこに情報が追加されていく。今そこに入っているのは年齢とか性別みたいな個人情報だけだ。それでもまぁ十分身分証代わりなんだけどね。」

そんなにヤバいものなの!?これ、、

「盗まれたら情報全部知られちゃいませんか…?そうなったら色々大変なことになりますよ!」

僕が真剣に訴えると先輩は大爆笑し始めた。
人の心配をよそに腹を抱えて笑う先輩に少し殺意が湧く。だって結構大問題じゃない?

「ひぃーっ、あははっ…腹痛てぇ。大丈夫大丈夫。ほらそれ貸してみ?」

先輩はひょいっと僕の手からそのカードのような学生証を取る。

すると、先輩の手の中にある学生証は真っ黒に変化し、中にある情報どころか文字すら見えなくなった。

「ほらこれ、他人が持つと本人とは違うエネルギーを感知して自動的に認識阻害魔法がかかるんだ。便利だろ?」

「なっ、なるほど…。」

先輩の持つ学生証を見つめふんふんと頷く。
先輩は何かを思いついたようにまたニヤニヤしている。

「ちなみに~?俺が今このカードに情報開示の魔法をかけると俺に電流が流れる仕組みになってまーす。」

「はい、やりましょう先輩。ビリビリの刑です。」

「なっ、俺が何したって言うんだ!」

先輩はそっと学生証を僕に戻してくれた。
僕はこのやりとりが面白くなってふふっと笑ってしまった。
先輩もそれを見て優しく笑う。

「…さぁ、そろそろだな。もう道はわかるだろ?案内係に従って進めば会場だ。俺も教室に行かなくちゃ。」

もうそんな時間。
僕はバッと顔を上げ時計塔を見る。もう9時か、入学式まで後50分、そろそろ入場の時間だ。

「っ!先輩、ありがとうございました。僕1人でちょっと寂しかったんですけど、先輩が付き添ってくれて良かったです。」

その返事を聞いた先輩は良かった、と呟く。
先輩は満足そうに僕の肩を叩くと、じゃあな。と言って校舎に続く道を歩いていった。

先輩の背中が見えなくなるまで、ついその姿を目で追ってしまっていた。

「…ぁ、僕も行かなきゃ。」

人の流れに沿って、僕も今日の一大イベントである入学式の会場へ向かった。


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