ある雪の降る日に

5話

「そういえば…、ちょっと気になってたんですけど、シヴァン先輩は何種の獣人なんですか？シロクマかと思ったんですけど、しっぽが長かったので。」

僕はシヴァン先輩が歩く度に揺れるそのしっぽを目で追った。
ちょっと不思議なんだよなぁ。シロクマってしっぽ長くないよね。

え？僕が知らないだけっていうオチ？

「あぁこれね。俺、白熊と白虎のハーフなんだよね。特徴が白熊の方が出たみたいで。ほら、しっぽまで全部白いからよく聞かれるんだよ。あっ、でもな、ほらここ」

そう言ってシヴァン先輩はサイドの髪をかき上げる。
真っ白な髪の毛の下に刈り上げられた黒髪が見えた。

「わぁっ、先輩も黒髪あるんですね。」

「お揃いだな。フレイの黒髪は真っ黒で綺麗だ。」

お揃い、シヴァン先輩とお揃い…何か嬉しい！

今でさえ差別なんて無くなったが、一昔前は黒毛、黒目は不吉の象徴という雰囲気が人々の間で流れていた。
もっと昔は黒毛や黒目が生まれた時点で野に…置き去りにしたり、通り魔事件や襲われるなどで亡くなる人がかなりいたみたいだ。

そのせいもあるのか、今では結構黒毛黒目の人口が少なくなってきている。



「なんか…、嬉しいです。そう言って貰えるの。僕が産まれた時はおじいちゃんなんかが心配してましたから、この黒毛のことで。」

「そうだったのか。まぁでも今じゃ黒髪だって結構レアだ。でも今学生の世代なんて差別意識は無いに等しいよ。むしろ惹かれるくらいだ。」

またシヴァン先輩は僕の頭を撫でる。

この短時間で分かってきたけどこの先輩、スキンシップ多めだな？
まぁ慣れたものだ。テキトーに先輩をあしらって会話を続ける。


談笑しながら、新年を迎えてお祝いムードに包まれている街道を歩いていく。

「エルディアでは皆で新年をお祝いするのが習慣なんですか？店先も飾り付けでいっぱいで…綺麗ですね！」

自分がいた国とはまた違った文化を前に、やや興奮気味なフレイはキョロキョロと辺りを見て回る。

「うーん、どちらかと言うと《奮発》メインかな？新年は色んな店が開いて、皆が買い物をする。いいスタートを切るためにって感じかな。
フレイのいた国はどんな感じだったんだ？」

「僕は、ネピアから来ました。端っこの方でしたけどね。」

「…ネピアの端っこ。もしかして国境沿いか？」

「えっ！そうですそうです。先輩も知ってるんですね。今はもう無くなりましたが…、僕はそこで産まれました。ネピアでは毎年、親戚の中で1番年長者のお家に皆で集まって年を越します。」

「へぇ！皆が集まるなんて楽しい新年になりそうだな。新年はどこかに出かけるイメージだったからなぁ。」

「ふふっ、ですよね！でも小さい時に友達だったオポッサムの男の子がいるのですが、かなりの大家族だったので新年は家がギチギチになるくらい集まるみたいなんですよ。」

新年が明けて、学校が始まるとよくやつれた顔で登校してきた友達を思い出した。
今でもたまに思い出してはクスッと笑ってしまうくらい。

「…それはそれで困るな。そうだ、今日の入学式が終わったら、その…商店街でも見に行かないか？」

シヴァン先輩からの突然のお誘いにびっくりしたが、快く受け入れた。

「…あっ、はい！僕シヴァン先輩とお店見て周りたいです。色んな屋台とか見てみたいなぁ。先輩、今日は奮発しちゃいましょうよ！」

「…！あはは。敵わないなぁフレイには。そうだね、今日は奮発しちゃおうか。」 


僕はシヴァン先輩と出かける約束ができ、胸が踊るような気持ちだった。