ある雪の降る日に

喜市

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23話

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「そこ、もう少し魔力の出口を1点に集中させて見て。」

ニール先輩は的確な指示を出し、指導してくれる。
先程の説教は少し堪えたのか、大人しく教えてくれていた。

僕は先輩の指示に従い、氷塊を離れた的に撃ち込む術を繰り出し続けていく。

なんとあの後知ったのだが、4人の中で僕の次に若いのはニール先輩らしい。
あの2人、本当に何者なんだろうか…

「こっちに集中しな。さっきの氷塊、均一にできていなかったぞ。」

余計な考え事をしていたばかりに、魔力調整を間違えてしまったようだ。

「わっ、すいません…。」

ニール先輩、教える立場になると結構スパルタだな?
緊張感からか、中々先程の温度に均一さのある氷塊が作れなくなってきていた。

手にじわっと汗が滲む。伸ばした手の先に神経を集中させ、連弾を続けた。

「…そうか、一旦休憩するぞ。」

なにかに気づいたように急にそういった先輩。

「はい…すみません、教えて貰っているのに。」

僕の不出来で何かしてしまったのだろうか。逡巡する頭は疲労感からか、暗い考えしか思い浮かばない。

「いや、気にする事では無い。むしろ休憩をしなければ、魔力切れを起こすところだった。指導側が気をつけるべきだ。」

少し不器用ながらも優しさの伝わるその言葉に嬉しくなった。
言い方は少し冷たく感じるかもしれないけれど、さっきの敬語よりも先輩にあっている気がする。

「魔力切れ、ですか。」

気になった言葉を素直に口に出す。
今まで魔力が切れるほど魔法は使ってこなかったので、あまり注意していなかったものだ。

「そうだ。症状が軽いヤツは怠いくらいで済むが、もし重症だった場合は最悪失神だ。ドロップ状態になる前に休まなければ。」

気づかなくて済まない。そう言って先輩はまた少し話を続けた。
根はいい人だ。最初のファーストコンタクトを少しミスっただけの。

妙にそう納得してしまえば、僕の心はもう落ち着きを取り戻している。


まだ芽吹き初めの芝生に腰を下ろし、周りの生徒をぼんやりと眺めた。
確かに先輩に言われた通り、かなり魔力を使ったのだろう。ずん、とした質量のある疲労が体に降ってくる。

ただ、今までそんなに使っていなかった魔力がきちんと放出され、新陳代謝されたというか。清々しい気持ちもあった。

「なんだ、まだやれそうか?」

顔に出ていたのだろうか。僕の顔を見てニール先輩はそう言ってくる。

いや、流石に無理です…。

ブンブンと頭を横に振れば、口を尖らせた先輩は僕の前に立った。

日も真上。重なるようにして立つ先輩の顔には、ほんの少しだが暗く影が落ちている。

「じゃあ、使役魔法の1つ見てみるか。」

そう言って、僕の方を指さしつぅっと宙をなぞった。

僕が使役されてしまう!…てことでは無く。
ふわっと宙に空いた空間に亀裂が入り、魔獣が姿を見せた。

「…かっ、可愛い!」

ちょこんと出てきたその魔獣は、丸いフォルムにクリっとした目のある小人サイズだった。

「第2類魔獣だ。単語くらいなら話せるぞ。」

そう言って魔獣に何かを促すニール先輩。
ちょこちょことこちらに寄ってきた魔獣にそっと耳を貸す。

「ぼク、アルかナ。こオリ、スき。」

アルカナ…は名前かな?氷が好きって言うのはさっきの僕の魔法の事なのかな。

「前にかき氷を食べさせたんだ。多分君の氷塊がそれに見えたんだろう。」

アルカナの言葉に追記を付けるかのように、先輩は翻訳を続けた。

可愛さにうっとりとしていると、アルカナは小さな体を動かし近くに僕が落としてしまった氷塊に近づいて行った。

「あっ!その氷冷たくて危ないからこっちにっ…」

言うのが遅く、既に着いてしまったアルカナは氷に触れる。

バリィッッッ

「…え?」

目の前で起こる衝撃的な光景にめまいを覚えた。

「あぁ、そいつ。見た目は可愛くても中身は魔獣だ。そんな氷くらい食べるからな。」

むしゃむしゃと僕が魔力を最大限まで出したつもりの氷を食べ始めている。

少し呆気にとられたのと、僕の氷は魔獣の顎の力で簡単に砕けると知ったなんとも言えない虚無感で呆然とそちらを見つめる。

「まぁ、なんだ。練習頑張れば何とかなるよ。」

フォローにもならなそうなその台詞は、バリバリと氷を割る音に掻き消されていった。
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