ある雪の降る日に

喜市

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22話

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「早速始めようか。」

1人に1人、先輩が付くようにして実習が始まった。
後ろで天鬼先輩とハルラスがわちゃわちゃしている間に、ニール先輩は僕に話しかけてきた。

「はい!お願いします。」

僕のその返事に、ニール先輩は満足そうに笑った。
スっと手を取られ、ほかのペアと間隔を取るように立ち位置に連れていかれる。

(…えっいや、めちゃくちゃスムーズだったから反応が遅れたけど、僕エスコートされてる?)
 
中々こんなに距離感が近い人と会う経験は…まぁ1人居るんだけど。その人を除けばかなり珍しいだろう。

ドキッとはしたが、高揚感は出てこない。
立ち位置につき、質問から始まる。

「大体の説明は聞きました。氷を使うそうだな。」

ふと、先程から感じていた違和感に気づく。
言葉の中に敬語とラフな言い方が混じっている。

状況だけ聞いてしまうと結構な違和感だが、実際聞く分にはあまり突っかからない。問題なく聞き流してしまう程度だ。

魔法が実際に使えるかどうかを聞かれ、大体は使えると返答した。

僕もこの前使ってみたけど、まさか初回で魔法が出せるとは思ってもみなかった。 

「まぁこのクラス魔力高いからね。高火力楽しみにしてるよ。」

そう言ってニール先輩の手が僕の頭に降ってくる。

「え?」

ぎゅっと目を瞑った。

頭上から降ってくる疑問符の付いたその温度を伴わない声色に、生きた心地がしなかった。

(やばい、目を瞑ったのがいけなかったのかな、でも僕だって無意識だったし、やばい、何とかしなきゃ)

つらつらと言い訳を考えながら目を開ける。

その先輩の冷たく射抜く様な視線は僕を捉えてはおらず。
降りかかろうとしていた手は、天鬼先輩の手によって遮られていた。

「いやぁ、好きにしたら良いとは思うたんだが。一応、余の後輩のためにも言っておく。触らぬ神に祟りなし、だ。」

ニール先輩とは対象的にニコニコとした様子の天鬼先輩からは余裕が感じられた。

あまり聞いた事のないその言葉は何か、天鬼先輩の国の言葉なのだろうか。現実逃避かのようにつらつらと関係ない事まで考えてしまう。


急にガッと後ろの襟元を掴まれ、よろけたようにつま先立ちになった。

首筋が空き、本能でそれを隠そうとしたが間に合わない。

(喰われるっ……!)

なんて今時じゃ有り得ないことを思いながら、仲裁に入っていた天鬼先輩を見上げる。

「なっ…」

見上げればニタニタと笑ってこちらを見る天鬼先輩。いや笑い事じゃないから!助けてよ!

そんな事を悠長に考えている暇はなく、首筋に当たるニール先輩の鼻先に身震いする。

「…フーン、か。そりゃ残念。でもこのくらいなら全然…」

そう言われ開放された僕は、戻って来ない天鬼先輩を心配してこちらに向かってきていたハルラスに泣きつく。

「うぅ、は、ハルラス…」

「ちょ、フレイ?先輩達何やったんですか!虐めなんて駄目ですよ!」

僕を背に隠し、堂々と先輩達に説教を始めるハルラス。

「…余は何も……」

「天鬼先輩も!僕の事置いてけぼりにして!ニール先輩はフレイと2人になるの禁止しますよ!」

しゅんと項垂れる先輩達におもわず同情してしまう。

この中で力のヒエラルキーの頂点にいるのは、先輩達ではなくハルラスだったのかもしれない。
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