22 / 31
22話
しおりを挟む
「早速始めようか。」
1人に1人、先輩が付くようにして実習が始まった。
後ろで天鬼先輩とハルラスがわちゃわちゃしている間に、ニール先輩は僕に話しかけてきた。
「はい!お願いします。」
僕のその返事に、ニール先輩は満足そうに笑った。
スっと手を取られ、ほかのペアと間隔を取るように立ち位置に連れていかれる。
(…えっいや、めちゃくちゃスムーズだったから反応が遅れたけど、僕エスコートされてる?)
中々こんなに距離感が近い人と会う経験は…まぁ1人居るんだけど。その人を除けばかなり珍しいだろう。
ドキッとはしたが、高揚感は出てこない。
立ち位置につき、質問から始まる。
「大体の説明は聞きました。氷を使うそうだな。」
ふと、先程から感じていた違和感に気づく。
言葉の中に敬語とラフな言い方が混じっている。
状況だけ聞いてしまうと結構な違和感だが、実際聞く分にはあまり突っかからない。問題なく聞き流してしまう程度だ。
魔法が実際に使えるかどうかを聞かれ、大体は使えると返答した。
僕もこの前使ってみたけど、まさか初回で魔法が出せるとは思ってもみなかった。
「まぁこのクラス魔力高いからね。高火力楽しみにしてるよ。」
そう言ってニール先輩の手が僕の頭に降ってくる。
「え?」
ぎゅっと目を瞑った。
頭上から降ってくる疑問符の付いたその温度を伴わない声色に、生きた心地がしなかった。
(やばい、目を瞑ったのがいけなかったのかな、でも僕だって無意識だったし、やばい、何とかしなきゃ)
つらつらと言い訳を考えながら目を開ける。
その先輩の冷たく射抜く様な視線は僕を捉えてはおらず。
降りかかろうとしていた手は、天鬼先輩の手によって遮られていた。
「いやぁ、好きにしたら良いとは思うたんだが。一応、余の後輩のためにも言っておく。触らぬ神に祟りなし、だ。」
ニール先輩とは対象的にニコニコとした様子の天鬼先輩からは余裕が感じられた。
あまり聞いた事のないその言葉は何か、天鬼先輩の国の言葉なのだろうか。現実逃避かのようにつらつらと関係ない事まで考えてしまう。
急にガッと後ろの襟元を掴まれ、よろけたようにつま先立ちになった。
首筋が空き、本能でそれを隠そうとしたが間に合わない。
(喰われるっ……!)
なんて今時じゃ有り得ないことを思いながら、仲裁に入っていた天鬼先輩を見上げる。
「なっ…」
見上げればニタニタと笑ってこちらを見る天鬼先輩。いや笑い事じゃないから!助けてよ!
そんな事を悠長に考えている暇はなく、首筋に当たるニール先輩の鼻先に身震いする。
「…フーン、手付きか。そりゃ残念。でもこのくらいなら全然…」
そう言われ開放された僕は、戻って来ない天鬼先輩を心配してこちらに向かってきていたハルラスに泣きつく。
「うぅ、は、ハルラス…」
「ちょ、フレイ?先輩達何やったんですか!虐めなんて駄目ですよ!」
僕を背に隠し、堂々と先輩達に説教を始めるハルラス。
「…余は何も……」
「天鬼先輩も!僕の事置いてけぼりにして!ニール先輩はフレイと2人になるの禁止しますよ!」
しゅんと項垂れる先輩達におもわず同情してしまう。
この中で力のヒエラルキーの頂点にいるのは、先輩達ではなくハルラスだったのかもしれない。
1人に1人、先輩が付くようにして実習が始まった。
後ろで天鬼先輩とハルラスがわちゃわちゃしている間に、ニール先輩は僕に話しかけてきた。
「はい!お願いします。」
僕のその返事に、ニール先輩は満足そうに笑った。
スっと手を取られ、ほかのペアと間隔を取るように立ち位置に連れていかれる。
(…えっいや、めちゃくちゃスムーズだったから反応が遅れたけど、僕エスコートされてる?)
中々こんなに距離感が近い人と会う経験は…まぁ1人居るんだけど。その人を除けばかなり珍しいだろう。
ドキッとはしたが、高揚感は出てこない。
立ち位置につき、質問から始まる。
「大体の説明は聞きました。氷を使うそうだな。」
ふと、先程から感じていた違和感に気づく。
言葉の中に敬語とラフな言い方が混じっている。
状況だけ聞いてしまうと結構な違和感だが、実際聞く分にはあまり突っかからない。問題なく聞き流してしまう程度だ。
魔法が実際に使えるかどうかを聞かれ、大体は使えると返答した。
僕もこの前使ってみたけど、まさか初回で魔法が出せるとは思ってもみなかった。
「まぁこのクラス魔力高いからね。高火力楽しみにしてるよ。」
そう言ってニール先輩の手が僕の頭に降ってくる。
「え?」
ぎゅっと目を瞑った。
頭上から降ってくる疑問符の付いたその温度を伴わない声色に、生きた心地がしなかった。
(やばい、目を瞑ったのがいけなかったのかな、でも僕だって無意識だったし、やばい、何とかしなきゃ)
つらつらと言い訳を考えながら目を開ける。
その先輩の冷たく射抜く様な視線は僕を捉えてはおらず。
降りかかろうとしていた手は、天鬼先輩の手によって遮られていた。
「いやぁ、好きにしたら良いとは思うたんだが。一応、余の後輩のためにも言っておく。触らぬ神に祟りなし、だ。」
ニール先輩とは対象的にニコニコとした様子の天鬼先輩からは余裕が感じられた。
あまり聞いた事のないその言葉は何か、天鬼先輩の国の言葉なのだろうか。現実逃避かのようにつらつらと関係ない事まで考えてしまう。
急にガッと後ろの襟元を掴まれ、よろけたようにつま先立ちになった。
首筋が空き、本能でそれを隠そうとしたが間に合わない。
(喰われるっ……!)
なんて今時じゃ有り得ないことを思いながら、仲裁に入っていた天鬼先輩を見上げる。
「なっ…」
見上げればニタニタと笑ってこちらを見る天鬼先輩。いや笑い事じゃないから!助けてよ!
そんな事を悠長に考えている暇はなく、首筋に当たるニール先輩の鼻先に身震いする。
「…フーン、手付きか。そりゃ残念。でもこのくらいなら全然…」
そう言われ開放された僕は、戻って来ない天鬼先輩を心配してこちらに向かってきていたハルラスに泣きつく。
「うぅ、は、ハルラス…」
「ちょ、フレイ?先輩達何やったんですか!虐めなんて駄目ですよ!」
僕を背に隠し、堂々と先輩達に説教を始めるハルラス。
「…余は何も……」
「天鬼先輩も!僕の事置いてけぼりにして!ニール先輩はフレイと2人になるの禁止しますよ!」
しゅんと項垂れる先輩達におもわず同情してしまう。
この中で力のヒエラルキーの頂点にいるのは、先輩達ではなくハルラスだったのかもしれない。
11
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
鬼神と恐れられる呪われた銀狼当主の元へ生贄として送られた僕、前世知識と癒やしの力で旦那様と郷を救ったら、めちゃくちゃ過保護に溺愛されています
水凪しおん
BL
東の山々に抱かれた獣人たちの国、彩峰の郷。最強と謳われる銀狼一族の若き当主・涯狼(ガイロウ)は、古き呪いにより発情の度に理性を失う宿命を背負い、「鬼神」と恐れられ孤独の中に生きていた。
一方、都で没落した家の息子・陽向(ヒナタ)は、借金の形として涯狼の元へ「花嫁」として差し出される。死を覚悟して郷を訪れた陽向を待っていたのは、噂とはかけ離れた、不器用で優しい一匹の狼だった。
前世の知識と、植物の力を引き出す不思議な才能を持つ陽向。彼が作る温かな料理と癒やしの香りは、涯狼の頑なな心を少しずつ溶かしていく。しかし、二人の穏やかな日々は、古き慣習に囚われた者たちの思惑によって引き裂かれようとしていた。
これは、孤独な狼と心優しき花嫁が、運命を乗り越え、愛の力で奇跡を起こす、温かくも切ない和風ファンタジー・ラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる