ある雪の降る日に

喜市

文字の大きさ
21 / 31

21話

しおりを挟む
「じゃあ、また放課後でも。」

「はいっ!」

 学年ごとに棟が別れる学舎は少し離れた場所にあり、僕たちは別れて行く事になる。

 1人で1年棟に向かう僕は、寝不足気味でぼんやりと欠伸をした。
 冷たい空気と日に照らされた暖かい空気が肺に入りその感覚に新鮮さを感じる。

 エルディアの冬は短い。春はもうすぐそこまで来ていた。







「おはよ、今日も早いね。」

 教室にいたハルラスに声をかけ、適当な席に座る。

「おはよー!…なんか隈ない?まぁいいや。それより今日の実習に上級生が来るらしいよ。」

「上級生?凄いね、教えて貰えるのかな。」

今日は座学で習った魔法などを実際に競技場で使う授業がある。

もしかしたら、シヴァン先輩とか来てくれたりするのかな…?


なんだか昨日から浮き足立っている僕は、杖を片手に教室を出た。



ーーー「はい、じゃあペア組めよー。」

人によっては恐怖を感じる代表格とも言えるこのセリフ。幸い僕にはハルラスがいたので一緒に組むことにした。

広い競技場内にポツンと集まる僕たちのクラスは、それぞれで集まりペアを作っていった。

ソワソワと皆も授業開始の合図を待っている。上の学年と交流する機会がまだなく、この日会うのが初めての先輩が殆どだ。

先生が1度辺りを見回し、口を開く。

「今日の実習は、5、6年の教育実習も兼ねて先輩達に来てもらうことにした。皆ちゃんと教えて貰えよー!」

「「「はーい」」」

僕はと言うと、シヴァン先輩は4年生なので来ないという事実を知り…ちょっとだけ落ち込んでいる。

返事が合図になったかのように、競技場の扉が開き、先輩達が続々とこちらに向かってきた。

「なっ、なんか…」

オーラが凄い。1年からはぽわーんとした空気しか感じないけれど、あちらからは明らかに別のパワーを感じる。これが上級生の力…。

神妙な面持ちで考える僕をよそに、先生は1年に上級生を振り分けていく。
主に女子には女子、男子には男子を付けているみたいだ。

僕達の方にも2人の先輩が来た。

「初めまして。私は6年ニール・カムダールです。魔法は使役をメインで使っています。今日はよろしくね。」

最初に話しかけてきた先輩はラテン系の美丈夫…な先輩で、凄く丁寧な人だった。

僕たちもかしこまって、つい背筋が伸びる。

「よ、よろしくお願いします!」

僕たちは伸ばされた手を握り握手を交わした。
順番が変わるように、次の先輩が挨拶をする。

「あー…5年の天鬼だ。主に炎を使ってる。よろしく」

そういいかけた瞬間、ニール先輩の肘打ちが飛んだ。

無言だが、明らかにお腹を抱えてニール先輩に抗議の目を送る天鬼先輩。

「ちょっと君、教育実習中なんだから何とかならないのかその態度。」

呆れたように呟く先輩に、調子を取り戻した先輩は食い下がる。

「いやいや、ニールさんも態度が変わりすぎじゃあないですか?そのうちボロが出ますよ。…じゃあ、そういう事で。今日はよろしくな。」

一悶着は終わったようだ。
僕たちからも自己紹介をし、その場には和気あいあいとした空気が流れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

処理中です...